学侶(読み)ガクリョ

デジタル大辞泉 「学侶」の意味・読み・例文・類語

がく‐りょ【学侶】

学問上の友人学友
仏法を専修する僧。また、師匠資格のある僧。
高野三方こうやさんかたの一で、密教を専修する僧。学侶方。また、比叡山学匠をもいう。
合戦度々に及ぶ。毎度に―うちおとされて」〈平家・二〉

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精選版 日本国語大辞典 「学侶」の意味・読み・例文・類語

がく‐りょ【学侶】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 学問上の友。学びの友。学友。〔昭明太子‐謝勅参解講啓〕
  3. 学問をする僧。学僧。また、仏道を修めて師匠の資格ある僧。学匠。学生(がくしょう)
    1. [初出の実例]「慈心房尊恵と申しけるは、本は叡山の学侶」(出典:平家物語(13C前)六)
  4. 堂方、行人方などに対して、もっぱら学道につとめた僧衆。学僧方。
    1. [初出の実例]「南都北嶺の学侶の風儀、偏に名利を先途に思て、菩提をよそにする故に」(出典:梵舜本沙石集(1283)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「学侶」の意味・わかりやすい解説

学侶
がくりょ

高野山(こうやさん)、比叡山(ひえいざん)などの大寺で、仏教の学問を専修する僧侶を総称していう。学生(がくしょう)ともいう。平安時代後半から、貴族などの良家の子弟が出家して、大寺に入ると、僧侶としての高位を目ざせる学侶となっていった。高野山においては、1130年(大治5)覚鑁(かくばん)が学侶36人を置いて堂衆(どうしゅう)と区別した。堂衆はのち行人(ぎょうにん)とよばれ、もっぱら財務、法会雑務に従事した。また隠遁(いんとん)して念仏修行を行う聖(ひじり)という集団が現れ、一山に、学侶方(がた)、行人方、聖方の3階級(高野三方(さんかた))が明確化した。以来、学侶方は学問、信仰の指導的立場にたつが、一山運営の実際上の権力は堂衆が握り、15世紀なかばから両者は対立して紛争が絶えず、学侶は実権を失った。江戸時代には双方からしばしば幕府への公訴が行われている。1868年(明治1)、三方の名称を廃して、学侶方は全山統轄の中心に復した。比叡山においても、平安末から鎌倉時代にかけて、学侶と堂衆の対立は激しくなり、強訴(ごうそ)などで朝廷を脅かした僧兵は、堂衆たちであった。比叡山では、『法華経(ほけきょう)』専攻の止観業(しかんごう)と、密教専攻の遮那業(しゃなごう)を学ぶものが学生であり、回峰行(かいほうぎょう)の行者とともに衆徒とよばれる。ついで堂衆、公人(くにん)があり、順に上方(じょうほう)、中方(ちゅうほう)、山徒ともいわれる。学生である衆徒は、山坊に起居し、妻帯せず、学問修行に専注する清僧であり、この学生たちにのみ、阿闍梨(あじゃり)、内供奉(ないぐぶ)、僧正(そうじょう)などの僧界の公職や、探題(たんだい)、大行満(だいぎょうまん)などの行位や、座主(ざす)への道が開かれていた。

[木内堯央]

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改訂新版 世界大百科事典 「学侶」の意味・わかりやすい解説

学侶 (がくりょ)

学問僧,学僧,学生(がくしよう)ともいう。寺院の堂塔の管理や世俗的雑務に従事する堂衆や行人(ぎようにん)に対して,法会祈禱や学問修法に専念する僧侶を学侶と呼んだ。南都,北嶺,高野山のそれが有名で,高野山の場合広狭二義あり,広義には行人,(ひじり)に対して交衆(きようしゆう)入りした学僧一般を指すが,狭義には法談論義の学道諸階梯を履修するものを指した。学道には指導者としての領解衆(りようげしゆう)左右両学頭,十聴衆があり,被指導者には学道衆,伝法大会の会衆(えしゆう)等の所化(しよけ)がある。いずれも最高位の検校(けんぎよう)にまで昇進できる。学侶の位階は大法師,入寺,三昧,山籠,阿闍梨と進むが,﨟次(ろうじ)に従うのを原則とし,途中学道3年目から加入するのを横入(おうにゆう)と称した。﨟次に応じて年俸や供料がついた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「学侶」の解説

学侶
がくりょ

学生(がくしょう)・学匠とも。学業を本務とする僧で,諸寺を通じて最も基本的な身分の一つ。一山の頂点に立つ座主(ざす)・別当(べっとう)のほか,権門貴族出身の門跡(もんぜき)・院主,僧綱(そうごう)・已講(いこう)・阿闍梨(あじゃり)などが学侶身分といえる。大衆(だいしゅ)・衆徒も本来学侶身分の僧をさす語であった。学侶に対し,行を本務とする身分層に行人(ぎょうにん)・禅衆・堂衆など,また高野聖(こうやひじり)のように寺院大衆の体制から離脱した者に聖・上人(しょうにん)があった。

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普及版 字通 「学侶」の読み・字形・画数・意味

【学侶】がくりよ

学友。

字通「学」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の学侶の言及

【高野山】より

…以後中世を通じて,幕府や武士をはじめ,貴族,商人,庶民各階層の広い信仰に支えられて発展した(高野詣)。 教団を構成するものは学侶行人(ぎようにん)(惣分),聖(ひじり)の3派に分けられるが,聖を中心とする僧侶の唱導活動によって納骨(納髪)信仰が盛んとなり,摂関期以来天下の霊場としての地位を獲得した(高野聖)。そして特定の檀越(だんおつ)との信仰上の結びつきにより,いわゆる師檀関係から宿坊関係へと発展し,さらに中世末期の荘園の崩壊期には,荘園による収入に代わるものとして,諸国の守護大名や戦国大名との間の宿坊契約がより強固となり,大師信仰の普及と高野山の発展を支えた。…

【金剛峯寺】より

…75年(安元1)に建立された蓮花乗院が77年(治承1)壇上に移され,伝法大会が継続されることになった。 教団は,学侶(がくりよ),行人(ぎようにん),聖(ひじり)によって構成されていた。中世には学侶が一山の主導権をにぎり,大集会(しゆうえ),小集会の職業的な衆議機関によって教団が運営された。…

【僧】より

…すなわち,大寺院では組織の分化がすすみ,衆徒大衆(しゆとだいしゆう)と総称される堂衆(どうしゆう)や行人(ぎようにん)などの下級の僧侶集団が形成され,彼らは妻子を養い,武力をもち,ときには荘園の経営や物資の輸送や商行為まで営むようになり,寺院の周辺や山麓の里は彼らの集住する拠点となって繁栄した。寺院の経営にかかわる別当クラスの僧も妻帯してその職(しき)を継承し,また学侶(がくりよ)とよばれた上級の僧も例外ではなく,天台密教の一部の流派では,息子を真弟子(しんでし)とよんで自分の血族に秘法を伝えていた。僧の恋愛や妻帯や女犯は《今昔物語集》《古事談》《沙石集(しやせきしゆう)》などの説話文学にしばしば登場し,公然の秘密だった。…

【僧兵】より

… さて寺内のいかなる階層の僧徒が僧兵を構成したかが,かつて論争の対象となった。そして出自の身分が高く修学を事とする学侶(がくりよ)(学生(がくしよう))に対し,寺内の雑務にあたる堂衆に加えて寺領荘園から召し出された兵士を僧兵の主力とするのが通説とされた。しかし寺内では,学侶が俗事に交わる一方で,堂衆が学侶とともに法会を勤修する事例が少なからず見いだされる以上,出自・修行方法に差異はあれ,学侶は学問,堂衆は雑務,という認識は正されねばならず,僧兵の階層を一概に規定することは困難である。…

※「学侶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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