改訂新版 世界大百科事典 「教育の自由」の意味・わかりやすい解説
教育の自由 (きょういくのじゆう)
教育的価値の選択,決定,教育内容の編成,具体的教育活動など,教育の内的事項については,公権力の規制は限定的なものでなければならないとする近代憲法上の人権保障原理。権利主体の側からいえば,親の教育の自由(家庭教育の自由,学校選択の自由,教育内容選択の自由),一定条件のもとでの国民の私立学校設置の自由,国民の教育活動の自由(とりわけ社会教育),学校教師の教育の自由がそれである。権利内容としては,信教の自由,思想・良心の自由などの精神的自由権の重要な一部をなしている。国家は,特定の教説を支持,強制しえず,人間の内面に関する事項について中立性を保持しなくてはならないというこの原理は,公教育における政治的中立性(教育基本法8条)と宗教的中立性(9条)の確保として制度化されている。教師の教育の自由は,国民の精神的自由権を担保するためのものであり,教育の対象,内容,方法に関する科学と,人間の尊厳性の自覚に拘束される以外には規制されない職能的自由である。なお,国民と教師の教育の自由について,憲法26条の教育を受ける権利を根拠として理解する学説,憲法23条の学問の自由に根拠があるとする学説,精神的自由権の一つとして,憲法11条,13条から当然導き出される〈憲法的自由〉であるとする学説がある。
→学問の自由
執筆者:牧 柾名
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報