実効為替レート(読み)ジッコウカワセレート(英語表記)effective exchange rates

デジタル大辞泉 「実効為替レート」の意味・読み・例文・類語

じっこう‐かわせレート〔ジツカウかはせ‐〕【実効為替レート】

多数の国の通貨が取引される外国為替市場における通貨の相対的な実力を図る指標。対象となるすべての通貨との2通貨間為替レートを、貿易額などに応じてウエート付けして算出したもの。国際決済銀行BIS)や各国中央銀行集計公表している。物価変動による影響を考慮して調整した数値実質実効為替レート、調整前の値を名目実効為替レートという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「実効為替レート」の意味・わかりやすい解説

実効為替レート
じっこうかわせれーと
effective exchange rates

特定の通貨の価値が、世界の主要な外貨に対して高いか低いかを示す総合的な指数。たとえば円に対してアメリカ・ドルユーロ、中国・人民元、韓国・ウォン、オーストラリア・ドルなど複数通貨との為替レートが存在することを踏まえ、二国間の為替レートだけではわからない、その通貨の国際的な実力を示す指標である。つまり、実効為替レートは多通貨に対する為替レートの合成値であり、おもに国際的な輸出競争力を示すとされている。実効為替レートの算出は、まず主要外貨との間の為替レートを、一定時点を100として指数化し、輸出入の多い外貨ほど影響力があるとの前提で、それぞれの外貨を発行する国・地域との貿易額に応じて指数を加重平均して計算する。実効為替レートは、数値が高いほどその通貨価値が高く、輸出競争力がそがれていることを示す。逆に、数値が低いほど通貨価値が低く、輸出競争力があることを示している。実効為替レートに、相手国・地域の物価水準を加味して算出した指数を実質実効為替レートとよび、物価水準を加味しない指数を名目実効為替レートという。国際決済銀行(BIS)や国際通貨基金IMF)は毎月、世界各国の実効為替レートを公表しており、これを参考に世界各国の中央銀行も自国の実効為替レートを公表している。

 日本では、日本銀行が1970年(昭和45)から実効為替レートの公表を始め、2022年(令和4)時点では約60か国・地域の通貨に対して算出した値を毎月公表している。また、名目実効為替レートについては毎日公表している。日本銀行の公表値(2010年を100とした指数)によると、円の実質実効為替レートは、1970年8月に57.1と最低となった後、1973年の変動相場制移行や1985年のプラザ合意を経て、ほぼ一貫して上昇。円が1ドル=80円を突破して、急激な円高になった1995年(平成7)4月には150.84と過去最高を記録した。その後、日本の物価が下がり続けるデフレーションや海外の物価上昇に加え、日本銀行が2013年(平成25)から実施した量的・質的金融緩和(異次元緩和)の影響もあり、低下傾向にある。2022年3月には65.26と1972年以来の低水準になった。

[矢野 武 2022年7月21日]

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知恵蔵 「実効為替レート」の解説

実効為替レート

ある国の通貨の価値が他の国々の多通貨に対して、どれだけ上昇しているのか、下落しているのかを示す指標。ドルが基軸通貨になっているため、例えば円がドルに対して上昇すれば、円高といわれるが、ユーロなどに対して下落していれば、必ずしも円高とはいえず、世界との貿易でも円高の影響を受けるとはいえない。 そこで、通貨の価値を総合的に把握するための指標として、実効為替レートが使われることになる。名目実効為替レートは、ある通貨の他の諸通貨に対する為替相場の変化率を貿易量などの比率を使って加重平均して算出する。そしてこの名目実効為替レートの変化率からインフレによる通貨価値の下落分を差し引いて加重平均したものを実質実効為替レートと呼ぶ。 円の実効為替レートは、日本銀行が米ドル、ユーロ、中国人民元、韓国ウォンなど主要15通貨を対象として、毎月公表している。2007年の為替相場は、世界的なドル安のなかで、円がドルに対して相対的に安い水準を推移したことから、6月には、実質実効為替レートが22年ぶりの円安になった。

(高成田享 朝日新聞記者 / 2008年)

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百科事典マイペディア 「実効為替レート」の意味・わかりやすい解説

実効為替レート【じっこうかわせレート】

変動為替相場制下では,自国通貨と他国のすべての通貨との間の関係全体を把握する必要があり,そのためにつくられた為替相場指数を実効為替レートと呼ぶ。2種類があり,2国間の為替レートの加重平均値を名目実効為替レートと呼び,物価上昇率の差を控除した実質為替レートを加重平均したものを実質実効為替レートと呼ぶ。加重平均のウェイトとしては,分析目的に応じて,輸出金額,貿易額,貿易収支等が用いられる。国際競争力を判断するには実質実効為替レートが必要になる。日本銀行は1997年から〈主要経済・金融データ〉の中で輸出ウェイトを用いて計算した指数を公表している。

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