改訂新版 世界大百科事典 「寄せ物」の意味・わかりやすい解説
寄せ物 (よせもの)
日本料理の一種。現在では寒天,葛粉(くずこ),ゼラチンなどを用いて材料を寄せ固めるものをいう。流し箱や型に流し入れて固めるので,流し物と呼ぶこともある。魚などでつくる煮こごり,豆腐をすりつぶして寒天液と合わせて固める滝川豆腐,ゴマと葛粉を練り合わせてつくるゴマ豆腐なども含まれるが,ふつうは甘みをつけた寒天液でヤマノイモ,ユリ根,白インゲンなどのこし(漉)粉を練って流し固めたようかんに近いものを指すことが多い。食紅,黒ゴマ,挽茶,卵黄などを用いて,赤・黒・緑・黄などに染めて無色のものと重ねたり,食紅で着色した寒天液で模様を描くなどし,口取りにしたり,重詰,折詰に用いたりする。江戸後期には魚のすり身などを主材料として,同様の外観をもつようにつくった蒸物をもこの名で呼んだようで,《料理花船集》(1801)は図入りで多くの種類のつくり方を載せている。なお,西洋料理ではアスピックなどのゼリー寄せはオードブルやサラダに,ババロアやブラマンジェはデザートに使われ,中国料理でも前菜や点心にいろいろのものが用いられる。
執筆者:松本 仲子+鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報