寛ぐ(読み)クツログ

デジタル大辞泉 「寛ぐ」の意味・読み・例文・類語

くつろ・ぐ【寛ぐ】

[動ガ五(四)]
仕事や心配ごとなどを忘れて、伸び伸びとする。心身をゆったりと休める。気がねなくのんびりと振る舞う。「温泉につかって―・ぐ」「―・いだ雰囲気」
窮屈な服装・姿勢などをやめて、楽なかっこうになる。「浴衣に着替えて―・ぐ」
能楽で、演者演能途中観客に背を向けていることをいう語。一時的に、その登場人物が、場面から身を隠したことを意味する。
ゆるむ。ゆるくなる。
かうぶりの額すこし―・ぎたり」〈・若菜上〉
ゆとりがある。余地ができる。
「数定まりて、―・ぐ所もなかりければ」〈澪標
[可能]くつろげる
[動ガ下二]くつろげる」の文語形
[類語]憩うリラックス落ち着く休む休らう休息する休憩する一休みする小休止する少憩する一服する一息入れる・骨休めする休養する息をつく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「寛ぐ」の意味・読み・例文・類語

くつろ・ぐ【寛】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ガ五(四) 〙
    1. かたくしまっているものや、きっちりはまっているものなどが、ゆるむ。ゆるくなる。くずれる。
      1. [初出の実例]「上臈も乱れて、かうぶりの額、すこしくつろぎたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      2. 「揺(ゆるぐ)〈略〉つき山に立たる石も土龍(うごろもち)のほればくつろげり」(出典:俳諧・類船集(1676)由)
    2. 余地ができる。余裕がある。
      1. [初出の実例]「数さだまりて、くつろぐ所もなかりければ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
    3. ゆったりとした気分や状態になる。心が休まる。安心する。
      1. [初出の実例]「夜もやすくもねず、昼も心うちくつろぐ事なし」(出典:古今著聞集(1254)一二)
      2. 「鶯の声も寒き間は、渋て思ふほどは出ざるが、次第に暖になるに随て、くつろいで、笙歌のわき出るやうなぞ」(出典:中華若木詩抄(1520頃)中)
    4. 危篤状態から脱して小康状態になる。
      1. [初出の実例]「昨日より御みやくいささかくつろくよし申」(出典:御湯殿上日記‐延徳二年(1490)一二月三日)
    5. からだを楽にする。休息する。また、服装、姿勢、態度などを楽にする。
      1. [初出の実例]「『こちもちとゆさんをせうぞ』『おんでもなひ事、いづれくつろがずはなるまひ』」(出典:虎明本狂言・三本柱(室町末‐近世初))
      2. 「若し私が少しでもくつろいだ姿勢に変れたら」(出典:大津順吉(1912)〈志賀直哉〉四)
    6. うちとけて人に接する。
      1. [初出の実例]「入鹿はおもき人なれども、いもにははやくくつろぎ」(出典:幸若・いるか(室町末‐近世初))
    7. 演能の途中で、演者が一休みする。たとえば物着(ものぎ)をする場合、常座でうしろ向きになって装束をかえたりするのをいう。
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ガ四段活用 〙 余地を作る。席を空け、ゆるやかにする。緊張をといて楽にさせる。
    1. [初出の実例]「はじめゐたる人々もすこしうち身じろぎ、くつろい、高座のもとちかきはしらもとにすゑつれば」(出典:枕草子(10C終)三三)
    2. 「蒲団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない」(出典:病牀六尺(1902)〈正岡子規〉一)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙くつろげる(寛)

寛ぐの語誌

平安時代は、冠がゆるむ・居る場所がゆったりしているなど、物理的にものが密着していない状態をさして使用されている。そのゆるみを心の余裕に置き換えた、心が休まる・安心するなどの心理的用法中世から現われる。前者の用法は、ユルムなどの語にその意を譲り、心理的用法は緊張状態にない意から、緊張状態をとく意へと拡大し、意味用法を広げた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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