aを1でない正の定数とするとき,任意の正数xに対してay=xとなる実数yがただ一つ定まる。このyを,aを底(てい)とするxの対数と呼んでy=logaxと書き,xにlogaxを対応させる関数をaを底とする対数関数という。対数関数y=logaxはaを底とする指数関数y=axの逆関数である。
対数関数の導関数を求めるため,
と変形する。ここでx/h=tとおくと,上の式は,となり,x>0だからh→±0のときt→±∞(複号同順)となるが,はt→+∞としてもt→-∞としても同じ定数に近づくことが示される。その値をeで表す。eは無理数であって,
e=2.718281828459……
である。eを用いると上の計算から,であるから,対数の底としてeを採用すれば,
となってつごうがよい。eを底とする対数を自然対数と呼ぶ。数学の理論においては,単に対数関数といえばeを底とするものを指し,底eを省略してlogxと書く。このとき,一般の正数a≠1を底とする対数関数はlogax=logx/logaとなる。以下,すべてeを底とする対数関数について述べる。
実変数の関数としての対数関数は,によって定義してもよい。これはx>0を定義域とし,xの狭義単調増加関数であって,となる。また(1)により不定積分の公式,
(積分定数は省略,以下同様)
が得られるが,このほか,初等的な不定積分の公式で対数関数が現れる例として,
をあげておこう。また一般に関数f(x)が連続な導関数f′(x)をもてば,
例えば,だから,
(2)とlog1=0とから次のlogxの積分表示を得る。
そこで,複素変数zの対数関数logzを,
によって定義する。(4)においてzが正の実数の場合には,積分路を複素平面上で1からzまで0をまわらないで到達するように選べば,右辺の積分の値は(3)の右辺と同じになるから,このlogzの定義は実変数x>0の関数logxの拡張になっている。(4)において,積分路が0のまわりを正の向きに一周するごとに,積分の値が2πi(iは虚数単位)だけ変化し,負の向きに一周すれば-2πiだけ変化する。だから複素変数の関数logzは無限多価関数である。z=1において0になるその分枝は次のように|z-1|<1において収束する,べき級数に展開される。
複素数の極形式を用いると,
z=reiθ=r(cosθ+isinθ) (r>0)
に対して,
logz=logr+iθ ……(5)
となる。θをθ+2nπ(n=±1,±2,……)としてもzは変わらないが,(5)の右辺は2nπiだけ変化する。このこともlogzの多価性の反映である。また対数関数については,2πiの整数倍の差を無視することにより,等式,
log(z1z2)=logz1+logz2
が成り立つ。これは指数関数の満たす等式に対応するものである。
対数関数は,代数関数や指数関数とともに初等関数を構成する要素である。三角関数が指数関数を用いて表されるのと同様に,逆三角関数は累乗根(代数関数の一種)と対数関数とを用いて表される。
→指数関数 →対数
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
変数xにその対数の値を対応させる関数のこと。a(a>0,a≠1)を底とする対数関数をy=logaxで表す。y=logaxとはx=ayのことだから、対数関数は指数関数の逆関数である。y=logaxのグラフは、y=axのグラフを、直線y=xを軸として折り返せば得られる。logaxは、すべての正の実数xについて定義された関数で、loga1=0である。a>1のときは増加関数で、
0<a<1のときは減少関数で、
対数関数について、次の公式が成り立つ。
logaxy=logax+logay
logaxk=klogax
logab・logbc=logac
a=10、すなわち10を底とする対数を常用対数という。対数の底として10を使うのはわれわれが十進(じっしん)記数法を採用していることによる便宜的なものであり、数学的な根拠があるわけではない。数学では、数eを用いるのが普通である。とくに微分積分法との関連においては、諸公式を簡明にするので自然である。すなわち、
となる。eを底とする対数を自然対数といい、数学では、単にlogxと書けば、eを底とする対数を意味する。これを、自然対数をラテン語で書いたlogarithmus naturalisを略した形でlog nat、あるいはlnと書くこともある。たとえばln(1+x)はloge(1+x)を意味する。
対数関数の値を計算するとき、次の展開式を利用する。
たとえばlog2は第二の式でx=1/3とすれば求められる。
常用対数は、スコットランドのネーピアによって1615年ころにみいだされ、その後イングランドのブリッグズによって改良され、一般に用いられるようになった。ケプラーはネーピアからの知らせに驚喜してこれを活用し、有名なケプラーの法則の発見に至る計算をしたという。一方、
という関係は、1650年ころ、ベルギーのサン・バンサンGregorius Saint Vincent(1584―1667)によってその端緒が得られ、17世紀を通じて、だいたい確立された。
[竹之内脩]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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