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尿道炎 にょうどうえんurethritis

翻訳|urethritis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

尿道炎
にょうどうえん
urethritis

通常は男性の尿道炎症をいうが,女性にもある。淋菌感染による淋菌性尿道炎と,その他の原因による単純性尿道炎に分けられる。淋菌性尿道炎は性病の一つで,5日前後の潜伏期間を経て尿道にかゆみを覚え,外尿道口から膿汁が排出される。初めは前部尿道のみの炎症であるが,ときに後部尿道や前立腺にも波及し,放置すると慢性化して,尿道狭窄の原因になる。女性では子宮頸管炎に併発し,排尿痛を起すが,無症状のことのほうが多い。単純性尿道炎は,大腸菌などの雑菌のほか,トリコモナス,ウイルス,真菌などによって起る。性行為と関係なく発症するものもある。症状は淋菌性に似ているが,軽い。しかし,なおりにくいものが多い。

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デジタル大辞泉の解説

にょうどう‐えん〔ネウダウ‐〕【尿道炎】

尿道の炎症。淋菌(りんきん)などの感染によって起こる。

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百科事典マイペディアの解説

尿道炎【にょうどうえん】

急性または慢性の尿道の炎症。原因によって淋(りん)菌性と非淋菌性に大別する。急性症では尿道口からの排膿,排尿時の灼熱(しゃくねつ)感,尿道口部のかゆみ,尿意頻(ひん)数などの症状がある。
→関連項目クラミジア感染症トリコモナス腟炎淋糸淋病

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家庭医学館の解説

にょうどうえん【尿道炎 Urethritis】

[どんな病気か]
 膀胱(ぼうこう)にためられた尿は、尿道を通ってからだの外に排泄(はいせつ)されます。尿道に炎症がおこって赤くなったり、痛んだり、膿(うみ)が出たりするのが尿道炎です。尿道炎は薬物などによる刺激やアレルギーによってもおこりますが、大部分は細菌の増殖によっておこります。その代表が淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん)とクラミジア尿道炎です。
 尿道は細菌がいないからだの中と、細菌が数多くいるからだの表面との境にあり、尿は多くの細菌にとって栄養物になります。膀胱の中には細菌はいませんが、尿道の出口付近の内側には、ブドウ球菌(きゅうきん)、レンサ球菌(きゅうきん)など、ふつうにみられる菌(常在菌(じょうざいきん))がいつでも、誰にでも存在しています。
 これらの細菌は、通常は人の細菌に対する抵抗力とバランスが保たれていて、炎症はおこしません。しかし、たとえば尿道にカテーテルを入れると、異物であるカテーテルの表面には人の抵抗力がおよびにくく、常在菌が増殖して尿道炎がおこります。
 異物がない場合でも、外から尿道に入って増殖し、炎症をおこす特別な細菌がいます。淋菌(りんきん)とクラミジアです。
 淋菌とクラミジアは、健康な人の尿道にはいません。尿道にいれば、症状が自覚されなくても、必ず炎症をおこします。淋菌、クラミジアは尿道以外に、女性の子宮頸管(しきゅうけいかん)、目の結膜(けつまく)、咽頭(いんとう)、直腸などでも増殖しますが、人のからだ以外では生存できません。
 尿道、頸管、咽頭、直腸に感染している淋菌やクラミジアは、人がこれらの部位を直接接触させる際に別の人に感染します。つまり性行為によって感染する性感染症(STD(「性感染症(STD)とは」))です。
 淋菌やクラミジアは、女性では感染部位が尿路とは独立した子宮頸管なので、排尿痛(はいにょうつう)などの自覚症状がなく、受診する機会を得られず、そのため現在でも患者さんが多いSTDです。女性では母子間で感染をおこすほか、卵管閉塞(らんかんへいそく)による不妊(ふにん)、子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)(「子宮外妊娠」)など重い病気の原因になるので、すみやかな診断、治療が必要です。尿道炎などSTDに感染している人では、エイズウイルスに接触した際の感染率も増加することが知られています。
[症状]
 尿道炎の症状は、排尿痛と尿道からの分泌物(ぶんぴつぶつ)です。細菌が尿道に入り込んでから、増殖によって炎症がおこるまでの期間を潜伏期(せんぷくき)といいます。淋菌性尿道炎の潜伏期は短く、2~7日間です。分泌物は多量、膿様(のうよう)で、尿道口(にょうどうこう)に付着しても白色か黄色に見えます。排尿して流れ去っても、1時間以内に外尿道口に再び現われます。尿道を尿が通る間とその直後だけ、尿道にヒリヒリした疼痛(とうつう)を感じます。
 クラミジア尿道炎は排尿痛、分泌物の自覚症状が、淋菌性尿道炎に比べてはるかに軽く、潜伏期は2~3週間です。尿道分泌物は少量、透明で、それ自体は膿(うみ)とは見えず、排尿後に外尿道口に尿がついているのと区別できません。排尿痛も軽くて、疼痛というよりくすぐったいような感じなど、いつもとちがう感じが自覚される程度で、気づかない場合もあります。症状が自覚されなくても白い下着であれば、外尿道口が接触する下着の部分に分泌物による汚点が、必ずみられます。分泌物自体は透明でも、下着に付着して乾くと、白い下着では黄色い汚点となります。濃い柄の下着では見逃されることが多くなります。
 淋菌性尿道炎でははっきりした自覚症状がありますが、クラミジア尿道炎では自覚症状の有無で尿道炎のあるなしを知ることはできません。治療せずに放置すると、淋菌、クラミジアは精液(せいえき)の通路を前立腺(ぜんりつせん)、精嚢腺(せいのうせん)、精巣上体(せいそうじょうたい)とさかのぼり、精巣上体炎をおこし、男性不妊の原因になります。
[検査と診断]
 若い人の尿道炎は大部分がSTDで、淋菌かクラミジア、またはその両方が発見されますが、どちらも発見できない尿道炎があります。この原因不明の尿道炎にも抗菌薬が効きます。
 治療しなければ、感染者はパートナーに感染を広げてしまうので、初診時に起因菌(きいんきん)を決めることが治療にもっとも重要です。医師は自覚症状ではなく、客観症状で尿道炎の診断をします。尿道炎があれば、尿沈渣(にょうちんさ)には必ず白血球(はっけっきゅう)がみられ、客観的証拠になります。
 尿道炎の場合、白血球がもっとも多く存在するのは、1回の排尿のうち最初に出てくる初尿(しょにょう)といわれる部分です。検尿のため採尿する場合、初尿の部分を捨ててしまい、後の尿を採取すると、尿道炎なのに白血球がみられず、尿道炎が見逃されることがあります。
[治療]
 原因菌が正確に確定されれば、治療は1~2週間の服薬で治ります。淋菌は薬剤耐性を獲得しやすい細菌です。ペニシリンなどの抗菌薬に対する淋菌の耐性は、50年間で約100倍の薬剤量を治療に要するほどになっています。実際には100倍の薬剤は服用できないので、新しい薬剤を用いることになります。抗菌薬が不十分に使用された場合、生き残った細菌が耐性をもった菌になります。ですから、抗菌薬の服用で症状がなくなっても医師の指示どおり服薬を続け、その後に原因菌がなくなっていることを医師に確認してもらう必要があります。
 淋菌、クラミジアの感染は、必ず感染源があります。また感染源以外に自分が感染させたパートナーが別にいる場合もあります。淋菌、クラミジアはいったん治っても機会があれば感染をくり返します。パートナーを放置すれば再感染の危険があるので互いの診断内容がわかる同一医療機関でいっしょに診断、治療を受けることが必要です。
 尿道炎の起因菌はすべて明らかにされているわけではなく、淋菌、クラミジアが原因でない尿道炎もありますが、その大部分にも抗菌薬が有効で、服薬が正確に行なわれれば、医師は多種類の抗菌薬のなかから選択して、原因が不明のままでも治すことができます。
●一般的注意
 STDは一度の感染機会で、多種類の原因菌に感染する場合があります。潜伏期間がちがうため、淋病の治癒後にクラミジアが発症するように、1つの病気の後に他の病気がおこることがあります。症状がなくなれば病気が治ったというわけではないので、医師の指示にしたがってください。

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大辞林 第三版の解説

にょうどうえん【尿道炎】

尿道の炎症。ブドウ球菌・大腸菌・淋菌などの細菌感染によるものが多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

尿道炎
にょうどうえん

微生物の感染によって生じる尿道の炎症で、男性の尿道炎は淋菌(りんきん)性尿道炎(淋疾)と非淋菌性尿道炎に大別される。非淋菌性尿道炎の原因としては、近年ウレアプラスマとクラミジアが重要視されているが、大腸菌やブドウ球菌、またトリコモナスによる尿道炎もあり、一般に性交により感染する場合が多い。
 経過により急性と慢性に分けられる。急性尿道炎では排尿時(とくに排尿初期)の痛みと外尿道口からの排膿(はいのう)を主症状とし、尿道分泌物の顕微鏡検査では多数の白血球を認めるが、通常の染色法では細菌は認められない場合が多い。慢性尿道炎では排尿痛または排尿時の不快感、尿道の不快感などがみられるが、症状の程度は一般に軽く、また尿道分泌物も少量で、早朝起床時にのみ認める場合が多い。しばしば前立腺(せん)炎、ときには精巣上体炎を合併する。
 治療としては、おもにウレアプラスマやクラミジアに有効なテトラサイクリン系の抗生物質が用いられるが、同時にアルコール類や刺激性食品を制限する。慢性症では比較的長期間の治療を要し、しばしば再発も認められる。トリコモナスによる尿道炎には抗原虫剤が用いられるが、同時に性交の相手方である女性に対しても治療が必要である。
 このほか、淋疾の治療後、淋菌が消失したにもかかわらず尿道炎の症状や所見を呈するものを淋疾後尿道炎というが、その所見や治療法は慢性尿道炎と同様である。
 女性の尿道炎は膀胱(ぼうこう)炎に合併しておこり、膀胱炎の治療後に尿道炎のみが残存する場合があり、尿所見が正常であるのに膀胱炎類似の症状が持続し、しばしば膀胱炎再発の原因となる。尿道分泌物中に白血球を証明することによって診断されるが、治療は膀胱炎に準じて行われる。[河田幸道]

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