山室静(読み)ヤマムロシズカ

デジタル大辞泉 「山室静」の意味・読み・例文・類語

やまむろ‐しずか〔‐しづか〕【山室静】

[1906~2000]文芸評論家。鳥取の生まれ。はじめプロレタリア文学に傾倒するが、のち転向雑誌近代文学創刊参加北欧文学に深い関心をもち、ヤンソン童話ムーミン」シリーズなど、多数翻訳書を残した。著「北欧文学の世界」「アンデルセンの生涯」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山室静」の意味・わかりやすい解説

山室静
やまむろしずか

[生]1906.12.15. 鳥取,鳥取
[没]2000.3.23. 長野,佐久
文芸評論家。長野県佐久市で育ち,旧制野沢中学校を卒業後,小学校教員,編集者など各種の職業についたのち,1941年東北帝国大学美学科を卒業。若い頃からレフ・N.トルストイ,ピョートル・A.クロポトキン小川未明有島武郎などを読み,ヒューマニズムに基づいた社会主義思想に感化された。J.P.ヤコブセンやアーダルベルト・シュティフター翻訳し,ラビーンドラナート・タゴール詩集を紹介するなど,個人の内面に目を向けた独自の思想を深めた。第2次世界戦後小諸市青少年教育のための高原学舎を興した。1946年埴谷雄高平野謙らの『近代文学』の創刊に参加,上京後は文芸評論家として活躍し,日本女子大学教授を務めた。北欧文学やトーベ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズなどの童話,アイスランド民話(→アイスランド文学)などを翻訳,紹介してヨーロッパ理解のかたよりを正した。『山室静著作集』(全 6巻,1972~73,平林たい子文学賞)や『アンデルセン生涯』(1975,毎日出版文化賞)など多数の著書がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山室静」の意味・わかりやすい解説

山室静
やまむろしずか
(1906―2000)

文芸評論家。鳥取市に生まれ、長野県佐久で育ち、野沢中学(現野沢北高校)を卒業。山室家は信州岩村田藩家臣。父は大沼枕山(ちんざん)の系統を引く漢詩人。初め郷里で代用教員、上京後岩波書店などに勤め、ついでプロレタリア科学研究所に入り本多秋五(しゅうご)、平野謙(けん)を知る。彼らを誘い『批評』(1936)を創刊。30歳を過ぎて東北帝大法文学部に入り阿部次郎や岡崎義恵(よしえ)に学ぶ。公式的なマルクス主義を脱し評論集『現在の文学の立場』(1939)を刊行。『構想』『現代文学』同人を経て、第二次世界大戦後は『近代文学』同人。同時に信州の農村の青少年を対象にユニークな「高原学舎」の建設に力を入れ、さらに季刊文芸誌『高原』をも発行。北欧の童話・民話にも深い関心をもち、『北欧文学の世界』(1969)などを刊行。現場の文芸評論家というよりも、それと一歩の距離をつねに保持、後衛としての内部の声を表現した。詩人、エッセイストでもあり、『アンデルセンの生涯』(1975)で毎日出版文化賞を受賞した。

[紅野敏郎]

『『山室静著作集』全6巻(1972~73・冬樹社)』『『山室静自選著作集』全10巻(1992~93・郷土出版社)』『『アンデルセンの生涯』(社会思想社・現代教養文庫)』『『北欧文学の世界』(1987・東海大学出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「山室静」の意味・わかりやすい解説

山室静【やまむろしずか】

評論家。鳥取県生れ。東北大美学科卒。プロレタリア科学研究所で本多秋五らを知り,神崎清らと《クオタリイ日本文学》創刊,マルクス主義文学観に立脚した評論活動を行うが,やがて離れる。当時の仕事は評論集《現在の文学の立場》(1939年)にまとめられている。戦後は《近代文学》創刊に参画,《文学と倫理の境で》などに収められた評論活動を展開。また文学の源泉として童話や民話,神話の研究に向かい,《北欧童話集人魚姫》《北欧文学の世界》《アンデルセンの生涯》などで北欧文学を翻訳・紹介。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山室静」の解説

山室静 やまむろ-しずか

1906-2000 昭和-平成時代の文芸評論家。
明治39年12月15日生まれ。昭和11年本多秋五らと「批評」を,21年平野謙,埴谷雄高(はにや-ゆたか)らと「近代文学」を創刊し,ヒューマニズムの視点から内面的な価値を追求する文芸批評を展開。北欧文学,ヤンソンの童話シリーズ「ムーミン物語」の翻訳・紹介で知られる。50年「アンデルセンの生涯」で毎日出版文化賞を受賞。日本女子大教授もつとめた。平成12年3月23日死去。93歳。鳥取県出身。東北帝大卒。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android