川渡温泉(読み)かわたびおんせん

日本歴史地名大系 「川渡温泉」の解説

川渡温泉
かわたびおんせん

[現在地名]鳴子町大口 川渡

江合えあい右岸べり、中森なかもり(三〇六・五メートル)山裾にある温泉で、古くから「脚気川渡、カサ鳴子」と称されるように、脚気に効能が著しいとして多くの湯治客を集めた。また玉造温泉狭義では川渡のことをさすともいわれる。川渡の名の起りは、対岸鍛冶谷沢かじやさわ宿と川渡しによって結ばれていたためとされ、川度とも記した。温泉の発見は古代にさかのぼると考えられ、「続日本後紀」承和四年(八三七)四月一六日条にみえる「玉造塞温泉石神」は当温泉を祀ったものと思われ、現在温泉街の東南に同社に比定される温泉石ゆのいし神社がある。「八雲御抄」に「玉造の湯」とあり、鎌倉時代には都人にも知られていた。しかし湯宿が整備され、一般湯治客が広く訪れるようになったのは江戸時代以降のことと思われる。元文三年(一七三八)に京都で出版された「一本堂薬選続編」温泉の部では仙台藩領五湯のなかに「玉造」(川渡)の名がみえ、文化一四年(一八一七)に江戸で出版された「諸国温泉功能鑑」では東前頭二四枚目に「仙台川たびの湯、諸病吉」とあり、近世中期以降、当湯は全国的に知られていた。

元禄一二年(一六九九)の湯守弥蔵言上書(「鳴子町史」所収)によると湯役本代五〇文が納められている。明和五年(一七六八)の湯守治左衛門の願書(同書所収)によれば年間約二千人の湯治客が訪れ、湯銭・木賃ともに一五文(米一升相場一八文)ずつであった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「川渡温泉」の意味・わかりやすい解説

川渡温泉
かわたびおんせん

宮城県北西部、大崎市(おおさきし)鳴子温泉(なるこおんせん)にある温泉。鳴子温泉郷の一つ。荒雄(あらお)川の右岸に位置し、玉造(たまつくり)温泉郷の東の入口にあたる。古くから「脚気(かっけ)川渡、かさ鳴子」といわれ、脚気のほか胃腸病、リウマチ、皮膚病の湯治場として知られた。泉質硫黄泉。奥鳴子・川渡温泉郷として国民保養温泉地に指定されている。近くに大崎市営鳴子放牧場や東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターがある。JR陸羽東線川渡温泉駅があり、国道47号が通じる。

[長谷川典夫]

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デジタル大辞泉プラス 「川渡温泉」の解説

川渡温泉

宮城県大崎市、県北西部、荒雄川の右岸にある温泉。“川渡”は「かわたび」と読む。鳴子温泉郷の温泉のひとつ。脚気に効くとされ、「脚気川渡」の名で親しまれた。国民保養温泉地「奥鳴子・川渡温泉郷」の温泉のひとつ。

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