鳴子温泉郷(読み)なるこおんせんきよう

日本歴史地名大系 「鳴子温泉郷」の解説

鳴子温泉郷
なるこおんせんきよう

現在の鳴子町域にある温泉総称。かつては玉造温泉郷ともよばれた。鳴子・東鳴子・川渡かわたび中山平なかやまだいら鬼首おにこうべの五つの地区に大きく分けられる。湧出はいずれも鳴子火山群の影響によるもので、鬼首地区では荒雄あらお岳の南・西辺に、他地区では江合えあい川と大谷おおや川の右岸に集中する。鳴子温泉事業所によると源泉総数は三九九あり、そのうち二二九の源泉が利用されている(昭和六〇年調べ)泉質は多種多様であり、放射能泉と単純炭酸泉を除いて、日本の温泉分類のすべてがそろっている。昭和二二年(一九四七)温泉郷を含む現鳴子町全域が玉造温泉郷の呼称で県立公園の指定をうけ、同三五年川渡・鬼首・中山平の三地区は国民保養温泉(奥鳴子・川渡温泉郷)となる。同三七年には宍道しんじ湖南方の島根県八束やつか玉湯たまゆ町にある同名の玉造温泉と区別するため、鳴子温泉郷と改称、同四三年栗駒くりこま国定公園に編入され、県下の代表的な観光地となっている。昭和六一年末現在、旅館数九七・保養所二三・民宿四、年間に訪れる利用客数は一〇〇万人を超える。

「続日本後紀」承和四年(八三七)四月一六日条に「玉造塞温泉石神、雷響振動、昼夜不止、温泉流河、其色如漿、加以山焼谷塞、石崩折木、更作新沼、沸声如雷」とみえ、この頃火山の活動が活発になり、温泉が河に流れ、その色は漿(米のとぎ汁)のようで、加えて谷はふさがり、新しい沼(現在の潟沼)が誕生したと記す。またすでに温泉があって、そこには「温泉石神」が祀られていた。「延喜式」神名帳に記載される玉造郡三座のうち温泉神社は鳴子湯元の温泉ゆもとのおんせん神社に、温泉石ゆいし神社は川渡の温泉石ゆのいし神社に比定され、いずれも源泉のそばに祀られている。「八雲御抄」に「陸奥にては名取の御湯、飯坂佐波古湯、玉造の湯」とみえ、一三世紀にはすでに都人にも聞えており、古来奥州三名湯の一つに数えられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳴子温泉郷」の意味・わかりやすい解説

鳴子温泉郷
なるこおんせんきょう

宮城県北西部、大崎市(おおさきし)の荒雄川に沿う鳴子、東鳴子、川渡(かわたび)、鬼首(おにこうべ)温泉と、大谷(おおや)川沿いの中山平(なかやまだいら)温泉の総称。玉造温泉郷とも。鬼首温泉地区を除いた地域は、かつては鳴子、川渡、田中、赤湯、元車湯、新車湯、河原湯、中山平からなり、玉造八湯(たまつくりはっとう)と称した。中心の鳴子温泉は837年(承和4)鳥谷ヶ森(とやがもり)が爆発して熱湯を噴出し「鳴声の湯」と名づけられたのに始まるという。湯元、元車湯、新車湯、多賀湯、河原湯、赤湯、田中湯の7泉源があり、湯量も豊富で別府温泉に次ぐ。泉質は硫黄(いおう)泉、アルカリ性の単純温泉塩化物泉、二酸化炭素泉など。近代的ホテルから湯治場まで施設も多様である。

[境田清隆]

『『鳴子町史』(1974・鳴子町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳴子温泉郷」の意味・わかりやすい解説

鳴子温泉郷
なるこおんせんきょう

宮城県北西部,江合川上流にある温泉群。大崎市に属し,玉造温泉郷ともいう。古くから東北地方第一級の湯治場として全国的に有名鳴子温泉東鳴子温泉,川渡温泉,中山平温泉など JR陸羽東線および国道 47号線 (北羽前街道) に沿う温泉を含む。中心の鳴子は観光地化が著しい。川渡温泉,中山平温泉は国民保養温泉地に指定。そのほか療養温泉地の性格の強い温泉も多い。

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デジタル大辞泉プラス 「鳴子温泉郷」の解説

鳴子温泉郷

宮城県大崎市、県北西部山形県と秋田県に接する山間にある温泉郷。鳴子温泉、東鳴子温泉、川渡(かわたび)温泉、中山平温泉、鬼首温泉の総称。「奥鳴子・川渡温泉郷」として国民保養温泉地に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の鳴子温泉郷の言及

【鳴子[町]】より

…近世には最上街道(羽前街道)の尿前(しとまえ)の関(番所)が置かれ,芭蕉が〈蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと〉(《おくのほそ道》)の句を残している。豊富な温泉群は鳴子温泉郷と鬼首(おにこうべ)温泉郷に大別され,前者は古くから玉造八湯と呼ばれる鳴子(単純泉,含ボウ硝食塩泉など9種,35~100℃),東鳴子(単純泉,重曹泉,50~80℃),川渡(かわたび)(重曹硫化水素泉,52~60℃),中山平(単純泉,68~100℃)の諸温泉を含み,湯量が多く,効能も多様であり,東鳴子を除いて国民温泉に指定されている。鬼首の雌釜・雄釜間欠泉(特天),酸性度の高いことで著名なカルデラの潟沼,中山平の熱帯植物園,鳴子峡など観光資源に富んでおり,アーチ式の鳴子ダムもある。…

※「鳴子温泉郷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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