舞楽の分類名。〈左方の舞〉を略した名称で,〈さのまい〉ともいい,〈右方の舞〉=右舞に対する。舞踊の様式を示す用語であるが,伝来系統などの歴史的背景,音楽や美術(装束や舞台)など古代の芸術観や美意識の集約された概念だといえる。古代の日本に伝来したアジア諸国の楽舞は,9世紀半ばころには徐々に日本化が進み,中国系統の左舞と朝鮮系統の右舞に二分割再編成された。当時の宮廷社会や寺社などで演奏される状況に適応した制度が生じたのである。一般には仁明朝の楽制改革と称されているが,この左右両部制の成立によって,今日に至る舞楽の祖型が確立されたといえる。舞楽の演目にはアジア諸国の芸能のおもかげがあり多彩である。伝承が絶えた曲も少なくないが,左舞現行曲は約30を数える。音楽は原則として左方が唐楽(とうがく),右方が高麗楽(こまがく)によっている。舞台芸術としての総合的な配慮が細部に及んでおり,登退場の作法に即した楽曲の構成などにも左舞の特質が示される。大規模な儀式の際には左舞と右舞を舞姿や曲柄の似通った特定の演目どうしを一対にして,それを数組重ねる番舞(つがいまい)の制度がある。曲柄としては,左右相方に平舞(ひらまい)(文(ぶん)ノ舞),武ノ舞(ぶのまい),童舞(どうぶ)/(わらべまい),走舞(はしりまい)などの種別があり,配列が吟味される。左舞の舞踊上の特質は,メロディに沿ってなめらかに進行する点に示される。右舞が打楽器のリズムパターンに即した直線的な動きであるのに対して,左舞は管楽器のメロディを口ずさみながら流線的に舞われる。装束は左方は赤・紫を基調とする(右方は反対色の緑・青を基調とする)。舞台への登場は,向かって左手から行う(右方は右手から)。舞楽舞台の左右には大(だ)太鼓を配するが,左方は三つどもえで日輪を頂き,台座には赤色布をめぐらす。楽器編成は笙,篳篥(ひちりき),竜笛の3種の管楽器と太鼓,鉦鼓,羯鼓(かつこ)の3種の打楽器で,舞楽の場合の唐楽には弦楽器を用いないのが特色である。
→右舞
執筆者:高橋 美都
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…舞踊の様式を示す用語であるが,伝来系統などの歴史的背景,音楽や美術(装束や舞台)など古代の芸術観や美意識の集約された概念だといえる。古代の日本に伝来したアジア諸国の楽舞は,9世紀半ばころには徐々に日本化が進み,中国系統の左舞と朝鮮系統の右舞に二分割再編成された。当時の宮廷社会や寺社などで演奏される状況に適応した制度が生じたのである。…
…舞楽の分類上の用語。右方の舞を略した名称で,〈うのまい〉ともいい,左舞に対する。古代の日本に伝来したアジア諸国の楽舞は,9世紀半ばごろには徐々に日本化が進み,中国系統の左舞と朝鮮系統の右舞に二分割再編成されて,宮廷社会になじむ制度となった。…
…一方,舞楽上演の際,唐楽と高麗楽とを対(つい)にして演じたり,これを左方(さほう),右方(うほう)の楽舞に分類して儀式に用いたり,勝負事の催しに,勝った側の楽舞を行ったりするようになった。現在,唐楽系のほとんどの舞楽曲が,いわゆる左舞(さまい)に属し,高麗楽系のすべての舞楽曲が右舞(うまい)に属している。これら左舞,右舞は,管弦の諸楽器の伝承とともに,それぞれ,そのどちらかを,各楽人が伝承することになっている。…
※「左舞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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