舞楽の分類上の用語。右方の舞を略した名称で,〈うのまい〉ともいい,左舞に対する。古代の日本に伝来したアジア諸国の楽舞は,9世紀半ばごろには徐々に日本化が進み,中国系統の左舞と朝鮮系統の右舞に二分割再編成されて,宮廷社会になじむ制度となった。一般には仁明朝の〈楽制改革〉と称されているが,この左右両部制の成立によって,今日に至る舞楽伝承の基礎が完成された。左舞は唐楽を伴奏とし,右舞は高麗(こま)楽を伴奏とするが,例外については後述する。舞台芸術としての舞楽の演出には左右の対比とバランスが重視されており,王朝の美学の反映がうかがえる。右方の楽の特質は〈高麗楽〉の項に記したが,管楽器に笙(しよう)を含まず,三ノ鼓が素朴でリズミカルなパターンを通奏するので,笛と篳篥(ひちりき)による旋律線の骨格が浮きでた直線的な印象を与える。舞は打楽器のパターンに基づいており,足の運びと打音が対応している。手や頭もアクセントのはっきりした直線的な動きをする。舞楽公演のプログラム立てでは左舞と右舞を一対にするが,大規模な儀式の場合は伝統的な原則に従って演目が配列される。古くは曲の性質や舞姿の似通った曲(たとえば左舞の《陵王》と右舞の《納曾利》)を一番(ひとつがい)として緩やかな対応で結びつける番舞(つがいまい)制度があった。また,左舞と右舞に共通する舞姿別の曲柄(平舞(ひらまい),武ノ舞(ぶのまい),童舞(どうぶ)/(わらべまい),走舞(はしりまい))があり,それらを考慮して演目が立てられる。装束は,左方が赤・紫を基調とするのに対して,右方は緑・青を基調とする。また,舞台への登場は,むかって右手からが作法である。舞楽舞台の左右には〈大太鼓(だだいこ)〉を配するが,右方は二ッ巴で月輪をいただき,台座に緑色布をめぐらす。前述のように,右舞に属する曲は原則的には高麗楽を伴奏とするが,唐楽を伴奏とする右方の舞が若干ある。三方楽所(さんぽうがくそ)の舞の分担制などの事情によって,この例外が生じた。唐楽による右舞は,羯鼓(かつこ)の代りに三ノ鼓を打ち,右方大太鼓を用いる。その他の楽器編成や奏法は唐楽のとおりである。
執筆者:高橋 美都
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…右方の舞を略した名称で,〈うのまい〉ともいい,左舞に対する。古代の日本に伝来したアジア諸国の楽舞は,9世紀半ばごろには徐々に日本化が進み,中国系統の左舞と朝鮮系統の右舞に二分割再編成されて,宮廷社会になじむ制度となった。一般には仁明朝の〈楽制改革〉と称されているが,この左右両部制の成立によって,今日に至る舞楽伝承の基礎が完成された。…
…舞楽の分類名。〈左方の舞〉を略した名称で,〈さのまい〉ともいい,〈右方の舞〉=右舞に対する。舞踊の様式を示す用語であるが,伝来系統などの歴史的背景,音楽や美術(装束や舞台)など古代の芸術観や美意識の集約された概念だといえる。…
…一方,舞楽上演の際,唐楽と高麗楽とを対(つい)にして演じたり,これを左方(さほう),右方(うほう)の楽舞に分類して儀式に用いたり,勝負事の催しに,勝った側の楽舞を行ったりするようになった。現在,唐楽系のほとんどの舞楽曲が,いわゆる左舞(さまい)に属し,高麗楽系のすべての舞楽曲が右舞(うまい)に属している。これら左舞,右舞は,管弦の諸楽器の伝承とともに,それぞれ,そのどちらかを,各楽人が伝承することになっている。…
※「右舞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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