中世の市に設けられた販売座席(店舗)をいう。市場に定住する商人のほか,各地を移動する商人もこの市座を確保していた。14世紀初頭の奈良西大寺古図には,鋳物師座,魚座などの市座を持つ門前市が描かれており,15世紀初頭の奈良南市も塩座,米座など30余の市座から構成されていた。このほか大坂四天王寺門前の浜市や備中国新見荘の市も多くの市座から成っている。領主の管理を受ける市では,原則として市座を持たぬ者は営業することができなかった。したがって市座を持つ者は領主から営業を保障され,その代償として市座役を納めることになっていた。それに対して,伊勢桑名のように,在地の慣行として市座が設けられていない市(楽市)も存在した。しかし16世紀後半になると,従来からの楽市はしだいに制限されてくる。同時に城下町建設にともなって,戦国大名は城下の繁栄を目的として市座を撤廃する楽市令を施行した。その結果,市座はしだいに消滅することになった。
→市 →楽市・楽座
執筆者:馬田 綾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
中世,市日に特定の地所に販売座席(露店)を掛ける権利をもった座。本来販売座席は先着順であったとみられるが,やがて占有権が成立し,個々の座席を特定の商人が占めるようになった。市座の占有権は商人の慣習法によって保障される場合と,領主への納税によって保障される場合があった。備前国西大寺門前市・摂津国天王寺門前浜市などには,魚座・鋳物師(いもじ)座など職種別に市座があった。戦国大名は楽市令によって市座の解体をはかったが,近世まで残存した例もある。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…領家方を加えると,その倍の規模をもつ市であり,定住化が進んでいたと考えられる。室町初期には,奈良では,南市,北市,高天市が毎日交替に開かれ,南市には30余の市座があった。1433年(永享5),安芸国沼田(ぬた)荘の安直(あじか)郷の市は,在家300宇,小坂郷新市(塩入市庭)は在家150宇を数えるほどの繁栄ぶりであった。…
…しかし現在では,これらの権力の発布した楽市・楽座令の以前に,各地に〈縁切り〉を基本的性格とする楽市場なるものがすでに成立していたことが想定され,この法令は城下町の繁栄を目的とした楽市場の機能の利用と位置づけられるに至っている。そして,この楽市と楽座の関係は,楽市(場)はすべて市場の座(市座)がない楽座であり,楽座は楽市のひとつの属性にすぎないとされている。その意味で楽市・楽座令という呼称より,楽市令のほうがふさわしい呼称といえる。…
※「市座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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