(読み)ザ

デジタル大辞泉 「座」の意味・読み・例文・類語

ざ【座】

[名]
座る場所。座席。「を占める」「に着く」
地位。「妻の」「権力の
多くの人が集まっている席。集会の席。また、その雰囲気。「に連なる」「がさめる」
座る場所に敷く畳・円座・しとねなど。昔は、部屋の中は板敷きで、座る所にだけそれらを敷いた。
物を据えておく場所。台座。「仏の
金具の下につける飾り。座金ざがね
神仏の教えなどを講義する所。「談義の
中世、朝廷・貴族・寺社などの保護を受け、座役を納める代わりに種々の特権を有した商工業者や芸能者の同業組合
江戸時代、幕府によって設けられ、貨幣や度量衡など特定の免許品を製造した機関。「金」「銀」「ます」「はかり
10 江戸時代、歌舞伎人形浄瑠璃などで、官許された興行権の表象。また、その興行を行う場所。劇場。→座元
11 近世以降、演劇・演芸などの芸能に従事する人々が興行を行うために結成した団体・集団。
[接尾]
名詞に付く。
㋐劇場・映画館・劇団などの名に添える。「歌舞伎」「スカラ」「文学
㋑星座の名に添える。「さそり」「オリオン
助数詞。
㋐劇場などの数を数えるのに用いる。「江戸三
㋑祭神・仏像などの数を数えるのに用いる。「弥陀三
里神楽の曲の数を数えるのに用いる。「一二神楽」
㋓高い山の数を数えるのに用いる。「一四ある八〇〇〇メートル峰の一つ」
[類語]座席シート居所場席ばせき空席客席定席じょうせき身分

ざ【座】[漢字項目]

[音](呉) [訓]すわる います
学習漢字]6年
すわる所。また、会合の席。「座興座席座右ざゆう王座講座首座上座即座中座当座末座満座
すわる。「座業座高座禅正座静座
物を置く台。「台座砲座
星の集まり。「星座天秤座てんびんざ
神体を置く所。「遷座鎮座
中世の商工業組合。「材木座
近世、貨幣を鋳造した所。「金座銀座
興行場所。興行団体。「座員一座前座
[名のり]おき・くら
[難読]狩座かりくら高御座たかみくら

くら【座】

座る場所、また、物をのせる所。他の語の下に付いて、複合語として用いられる。「天磐あまのいわくら」「高御たかみくら

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精選版 日本国語大辞典 「座」の意味・読み・例文・類語

ざ【座・坐】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. すわる場所。居どころ。また、そのものの占める位置。
      1. (イ) 席。座席。
        1. [初出の実例]「五位已上始座始設榻焉」(出典:続日本紀‐大宝四年(704)正月丁亥)
        2. 「下(くだ)りたるざに帰りつき給へる程心ぐるしきまでそみえける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
        3. [その他の文献]〔論語‐郷党〕
      2. (ロ) 宴席、歌会、連歌の会などの集会の席。また、その集会。
        1. [初出の実例]「『けふ、ざにたてまつれ。たうとをさにさかりつきたる日なり』といはす」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
        2. 「少将をはじめ奉て、母上めうとの女房、其座になみゐたる人々、心あるも心なきも、皆袖をぞぬらしける」(出典:平家物語(13C前)二)
        3. [その他の文献]〔韓翃‐送万巨詩〕
      3. (ハ) 物を据えて置く場所。
      4. (ニ) くらい。地位。「政権の座」 〔常‐授路嗣恭洪州観察使制〕
      5. (ホ) 染色体上における遺伝子の位置。遺伝子座。
      6. (ヘ) 落語家が座って話す所。高座。
        1. [初出の実例]「一楼数楹、奥に当って座を設く」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)三)
    2. 人がすわる場所や物を据える場所に置くもの。
      1. (イ) すわるべき所に敷く敷物。しとね、畳、円座などの称。
        1. [初出の実例]「おはします殿の東の廂(ひさし)、東むきに倚子(いし)立てて、冠者(くゎんざ)の御座、引入(ひきいれ)の大臣の御ざ、御前にあり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      2. (ロ) 物をとりつける台。据えておく台。
        1. [初出の実例]「蓮花の座の、土をあがりたる高さ三四尺、仏の御丈六尺ばかりにて」(出典:更級日記(1059頃))
      3. (ハ) 金具の下に装飾としてつけるもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    3. 仏事や神事を修行し、また、教理を講義する集会、また、それを行なう所。
      1. [初出の実例]「此御寺の三宝、今日の座の戒和尚に請ぜられ給仏・菩薩を証としたてまつらむ」(出典:大鏡(12C前)六)
    4. 星座。星の宿。〔後漢書‐逸民伝〕
    5. 中世、近世において、特権的な意味も含みもった同業者の集団。
      1. (イ) 中世、商工業者の組合。朝廷、貴族、寺社などの保護を受け、特定の商品の生産、販売の独占権をもっていた。
        1. [初出の実例]「壱所四条町切革坐棚、自南二番三番也」(出典:大徳寺文書‐久安六年(1150)四月八日・藤原氏女家地券紛失状案)
        2. 「某ぎおんのゑの茶やの座をもってござるに依て」(出典:虎明本狂言・煎物(室町末‐近世初))
      2. (ロ) 田楽(でんがく)、猿楽など、中世の芸能で、仕手方(してかた)・囃子(はやし)方などの出演者によって作られた集団。
        1. [初出の実例]「新座(しんザ)・本座の田楽を呼下して。日夜朝暮に弄(もてあそぶ)事他事無し」(出典:太平記(14C後)五)
        2. 「秦(はだの)氏安より光太郎・金春まで、廿九代の遠孫なり。これ、大和国円満井(ゑんまんゐ)の座也」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)四)
      3. (ハ) 近世、徳川幕府により設けられ、貨幣や度量衡など特定の免許品を製造した公設の機関。金座、銀座、枡座、秤座、朱座など。
        1. [初出の実例]「すべて上にまゐらする所の金銀共に、おのおの其座といふものの許にして」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)中)
      4. (ニ) 近世以後、浄瑠璃、歌舞伎などの芸能に従事する人々の団体。また、その芝居を興行する場所。劇場。
        1. [初出の実例]「このごろは吉郎兵衛座、すでにつぶれなんとしけるに、〈略〉あまた金銀を出して、座をすくはれたるといへば」(出典:評判記・野郎虫(1660)花井浅之丞)
      5. (ホ) 主として中世、神社の氏子(うじこ)が祭を行なう特定の組織・集団。宮座(みやざ)
    6. 栗・椎などの実が、いがなどに付着する部分。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 祭神、仏像などの数を数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「祈年祭神三千一百卅二座」(出典:延喜式(927)一)
      2. 「彼此(をちこち)を見かへれば、前面(むかひ)に一坐(いちザ)の古廟ありけり」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)残)
    2. 仏教で、連続して行なわれる教理などの講義の回数や護摩を焚いて祈祷する回数などを数えるのに用いる。「百座法談」
      1. [初出の実例]「けふより太けん准大法におこなはるる〈略〉二座ありつれとも、一座御ちゃうもんにてくゎん御なる」(出典:御湯殿上日記‐天文三年(1534)正月八日)
    3. 神道で、祓(はらえ)の回数を数えるのに用いる。「七座の祓」「百座の祓」など。
    4. 里神楽などで、曲の数を数えるのに用いる。
    5. 劇団、劇場などを数えたり、名に添えたりするのに用いる。「江戸三座」「中村座」など。
    6. 遊里で、客を迎えるための、定まった時間の一区切りを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「『是は二座に付ておきゃ』と。欲に目玉の蜻蛉返り」(出典:浮世草子・新色五巻書(1698)一)
    7. 星座の名に添える。「琴座」「オリオン座」など。
    8. 山などを数えるのに用いる。「八千メートル峰七座」

くら【座】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「蔵」と同語源か ) 多く造語要素として用い、すわる所、また、物を置く場所、野菜などを植える場所などの意を表わす。「天磐座(あまのいわくら)」「高御座(たかみくら)」「御手座(みてぐら)」など。〔日葡辞書(1603‐04)〕

とど【座】

  1. 〘 名詞 〙 すわること。かがむこと。→とどす(座)
    1. [初出の実例]「元日〈略〉不死の薬の酒くむやうにゆるりくはんすとととをして、おほぶくいはふていたらく」(出典:俳諧・山の井(1648)春)

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改訂新版 世界大百科事典 「座」の意味・わかりやすい解説

座 (ざ)

平安末~鎌倉・室町期に商工業者,芸能者,農漁民,遊女にいたるまで,あらゆる職業,階層にわたって編成された共同組織。地主神・産土(うぶすな)神など集落の神仏に対する祭祀のための座(宮座)から,朝廷,寺社,権門貴族を本所とし,その奉仕のための座や,同一職業のものがその営業特権のために組織した座など,多種にわたっている。

座は地主神などの祭祀の宮座から始まるといってよかろう。1150年(久安6)の勝尾寺(かつおじ)文書に〈さ(座)につくはかりの人々〉といわれるような一定の家格を有する村の人々が,平等構成をもって共同の神仏をまつる座を結成した。その古態を残し,かつそれが自治組織にまで発達した例は,山城大山崎の天王八王子社の宮座に見ることができる。この宮座は中世後期にも拡大・変質しつつ,村落共同体として存続し,大座,本座を中心とし,新座,子座などを付属させて存在した。

しかし一般に中世で座という場合には,かかる村落の宮座以外を指す場合が多い。まず奉仕者集団としての座であるが,朝廷,寺社,権門貴族が本所として供御人,寄人(よりうど),神人(じにん),散所雑色(ぞうしき)などの身分を編成し,支配・従属関係を結んだもので,本所は特産物の貢進や芸能,労役の奉仕を義務づけ,必要物を充足したのである。一方,供御人,寄人,神人なども,その奉仕の代償として給免田を付与されたり課役免除の特権を得,裁判権も本所に属した。その奉仕と特権擁護の連帯のために結成されたのが座である。したがって,座の語源は,宮座の祭祀の座や,奉仕者集団の儀式などの奉仕の座席に求めてよいであろう。座の初見としては,1092年(寛治6)の山門青蓮院を本所とする八瀬里座がある。これは杣伐夫役を奉仕し,のちには駕輿丁奉仕を任務とするかたわら,洛中への薪商売をしている。1153年(仁平3)の宇治白川の田楽法師の座,東大寺や興福寺に所属する建築業者,手工業者の座など,平安後期にはすでに多数の座をあげることができる。京都の四府駕輿丁(しふのかよちよう)座も,朝廷の駕輿丁が一方で種々の商売を営んだものである。このように奉仕者の集団という性格を基本としながらも,その特権によって一方で営利行為を行うのが,この時期の座の特色である。

鎌倉期を通じての商品経済の発達は,商工業者,芸能者などを奉仕者としてよりも,営業者としての性格を濃厚にさせ,ここに同一職種のものが集まり,領主に営業税を出して,その営業上の特権を獲得するという座が成立するにいたった。朝廷官衙や各地域の領主も,商工業者から営業税をとることによって収益を得た。この営業税を納入した人々が集まって座を結成する場合や,古い奉仕の座が発展して,性格変化する場合もあった。南北朝期から室町期にかけて,これらの座の大きいものは営業権を拡大させて,独占権を行使する。石清水八幡宮を本所とする大山崎油座は,西日本諸国にその営業独占権を行使し,諸国の油商人を新座として,その支配下においた。京都に独占権を行使したおもな座に,北野麴座,祇園綿座,堀川材木座,四府駕輿丁座の米座,三条釜座,絹織物の大舎人座,練貫座などがある。これらは営業独占権を行使することによって,職種別結合を強固ならしめたといえる。農村にも,南北朝ごろから〈田舎座〉といわれる商工業座が,農間副業の農民によって結成された。近江湖東の保内や小幡商人などの座,大和国の乙木萱簾(おとぎかやすだれ)座や矢木胡麻仲買座など,枚挙にいとまがない。この田舎座も,市の販売座席の独占や,商品流通路の独占を行っている。芸能の座も,曲舞(くせまい)座や声聞師(しようもんじ)の座などがあり,なかでも,猿楽能の大和四座(大和猿楽)は著名である。

 これらの座のうちには,成文の座法をもち,平等な成員構成や,本所の恣意的な賦課の制限などを定めたものもある。長坂口紺灰座の座中法度は条文も残っており,廻船業者や港町を背景として成立した廻船式目も座組織の連合を前提としたものといえよう。条文は残されていないが,京都の塩座や博労座なども座中法度をもっていたし,近江の保内商人座も条文構成をとっていないが,個別の座法をもっていた。大和四座のうちの観世座も,1430年(永享2)以前から配分その他の詳細な規定の座法をもっていた。その他の座も慣習法的な座法をもっていたものが多い。

 大名領国の城下町には,越前府中(現,越前市)の橘座や駿河今宿の友野座などがあった。これは徴税請負人的な御用商人の性格をもち,大名はこの座を通じて商業統制を行った。戦国大名織田信長楽市・楽座はおおむね建設都市を主とし,その他の場所では座は存続した。座が解体したのは豊臣秀吉の1585年(天正13)の楽座令によってであって,ここにおいてはじめて,本所の座課役と座の営業独占権が停止されたのである。
執筆者:

江戸時代の座は江戸幕府の管掌下に独占を認められて製作や販売などに当たった組織で,多くは特権的商人によって経営されていた。幕府の貨幣鋳造に当たった後藤氏の経営する金座銀座大判座,大黒氏の銭座や,計量の統一的掌握のために設けられた福井家の京都枡座と樽屋家の江戸枡座,さらに神(じん)家の京都秤座と守随家の江戸秤座が設置され,京都の両座は西国33ヵ国,江戸の両座は東国33ヵ国と独占販売の地域市場を分けていた。そのほか朱座,人参座,箔座,竜脳座などは,特権を与えられた人々によって専売されていた。幕府直轄の座として銅座鉄座,真鍮座があった。このほか,瞽女(ごぜ)を保護するための瞽女座,日雇人足たちを監督掌握するための日用(ひよう)座などがあった。中世いらいの呼称を残存する塗物座,莨(たばこ)座,瀬戸物座などの同業者の団体が地方にはみられた。
執筆者:

芸能を専業とした芸人が集まって,寺社からの独占権をうけて組織した芸団として,平安中期には,田楽法師の座がみられ,同末期には近江の3座,大和の4座(のちに観世座となる結崎(ゆうざき)座が著名)などが,猿楽の有力な座であった。江戸期に人形浄瑠璃や歌舞伎がさかんになるにつれ,その興行には幕府の許可が必要となった。興行権を得た名代(なだい)は劇場を建て劇場名にも座を付した。やがて江戸の歌舞伎では3座に限って興行が官許され,座元は,その興行権と劇場の所有権を世襲した。今日でも座名が劇場名として,歌舞伎座,南座などのように残っている。
座元
執筆者:


座 (ざ)

連歌,俳諧用語。連句制作のための集会または会席をいう。その構成要員は,一座をさばく師範格の宗匠と,宗匠を補佐しつつ句を懐紙に記録する書記役の執筆(しゆひつ)と,一般の作者である複数の連衆(れんじゆ)から成る。彼らが参集して連句一巻を共同制作することを,一座を張行する,または興行するという。一巻は〈百韻〉が定式であるが,元禄期(1688-1704)以降の俳諧では〈歌仙〉がもっぱらになった。一座を興行するには,主人役か当番の世話役があらかじめ日時,場所,連衆の人数を選定するが,百韻なら4~5人から7~8人で10時間前後をかけるのが理想とされた。会席の設け方,運営の仕方にも,それぞれの作法がある(図参照)。座は生活共同体を母体にした精神共同体によって成り立っている。そこでは連衆のひとりひとりが作者と読者を兼ね,個の発想はつねに衆に支えられ,衆に向かって開かれていた。広義の挨拶性と当座の即興性が,座の文学である連句の特質である。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「座」の意味・わかりやすい解説


平安時代末期から戦国時代にかけ、朝廷・公家(くげ)・寺社を本所(ほんじょ)として、商人・手工業者・芸能者などが結成した特権的な同業者団体。多くの手工業座は、製品の生産から販売に至るまで一貫して携わり、商業座としての機能ももっていた。このような日本中世の座は、西欧中世の都市に成立した特権的な商人ギルドとは異なり、都市(都市座)のみならず、村落内でも結成された(村落座・田舎座(いなかざ))。これらの座は4世紀半にわたって存続したが、時代とともに本座(ほんざ)から新座(しんざ)、孫座(まござ)などと組織を拡大し、その性格も変質させていった。

[鈴木敦子]

成立

座は、朝廷・権門寺社の儀式や祭礼の際に特定の座席を占めた奉仕者の集団から発生した。これは古代国家における部民(べみん)の系譜を引くものといわれている。彼らは、公家では供御人(くごにん)・雑色(ぞうしき)・駕輿丁(かよちょう)、神社では神人(じにん)、寺院では寄人(よりゅうど)などとよばれていたが、所属する本所に対して、公的・私的な奉仕・貢納を任務としており、また給付としての俸禄(ほうろく)のほかに国家的諸課役などの免除の特権を受けていた。このような座を、後の営業を目的とする座(「営業の座」)と区別して「奉仕の座」とよんでいる。

 平安末期になると、生産力の向上に伴い、供御人らは貢納物の余剰を商品化するようになった。一方、律令(りつりょう)政府の財政逼迫(ひっぱく)から、本所では彼らに支払うべき俸禄が不足したために、その商業活動を認め、さらに種々の特権を与えることによって本所への貢納を確保しようとした。四府(しふ)(左・右近衛府(このえふ)、左・右兵衛府(ひょうえふ))に所属し、行幸(ぎょうこう)の際に輿(こし)を担いだ駕輿丁は、営業課税免除の特権を与えられ、紙折敷(かみおしき)、白布(しらぬの)、酒麹(さけこうじ)、索麺(そうめん)など18業種の商業活動に従事し、さらに錦(にしき)並(ならびに)組、鳥、古鉄、鋤柄(すきえ)、赤染町帷売(あかぞめまちかたびらうり)、絹売、呉服、米については、座としての専売権を与えられていた。また諸寮・諸司に属する座は、その長官が課役徴収の権利を得ており、これが世襲化、私物化されて本所となった。装束司の長官であった三条西(さんじょうにし)家と青苧座(あおそざ)の関係は、つとに著名である。

 このようにして、中世後期になると、座は営業課税免除の特権などを求めて、本所と一定の公事銭貢納契約を結び、いわゆる座商人が出現してくる。このような新しいタイプの座を「営業の座」とよぶ。

[鈴木敦子]

都市座と村落座

南北朝期以降の流通経済の発展は著しく、座は京都・奈良などの都市や、畿内(きない)の村落を中心に数多くの業種で結成された。とくに京都では、商業地区である三条・四条に座が集中し、四府駕輿丁の諸座をはじめとして、祇園社(ぎおんしゃ)神人の綿本座・練絹座などの座商人が店舗を構えていた。京都の南西の入口にあたる大山崎には、離宮八幡宮(りきゅうはちまんぐう)を本所とする油神人が居住していた。彼らは、職種別結合としての油座を結成すると同時に、地縁結合である「マチ」共同体を結成して、町人としての自己の地位を確立し、自治組織をもち、都市自治を運営していた。また大和(やまと)では興福寺大乗院・一乗院、春日神社(かすがじんじゃ)を本所とする多種類の座が、奈良やその周辺村落内に成立した。その数は大乗院を本所とするものだけで60余に上り、塩、油、材木から菅笠(すげがさ)、心太(ところてん)に至るまでのあらゆる生活物資に及んだ。近江(おうみ)では蒲生(がもう)郡の延暦寺領(えんりゃくじりょう)得珍保(とくちんのほ)に、塩座、博労座(ばくろうざ)(伯楽座(はくらくざ))、紙座、呉服座(真綿を扱う)の4座が結成されていた。得珍保商人は、琵琶湖(びわこ)東岸地域内の市場での専売権・商圏、さらには若狭(わかさ)・伊勢(いせ)への流通路独占権をめぐって、周辺の村落座商人と激しい相論を展開した。その裁定には、本所の延暦寺のみならず、国人領主・守護(六角(ろっかく)氏)・幕府までがあたっており、中世後期に飛躍的に拡大した地域経済を、村落座商人が支えていたことを示している。

[鈴木敦子]

組織・機能

座の構成員である座衆の人数はさまざまで、大規模なものでは駕輿丁座のなかの米座の60余人を擁するものから、2~3人で組織されるものまで多様であった。大規模な座には、座衆を統率し、座役をまとめて本所に納入する「おとな」・「沙汰人(さたにん)」がいた。座衆は当初、本所に対して、労働奉仕や手工業製品(現物納)を座役として納入していたが、室町期に入ると、営業の座としての色彩を強め、金納が主流となった。とくに本座に対して新しく結成される新座は、営業座としての色彩が強く、祇園社の綿座の場合、新座は本座に座役銭を納入して、京中を行商する「振売(ふりう)り商売」の権利を得ていた。

 戦国期になると、戦国大名の御用商人が統制する座が成立する。越前(えちぜん)府中(ふちゅう)(朝倉氏)の橘座(たちばなざ)、駿府(すんぷ)今宿(いまじゅく)(今川氏)の友野座(とものざ)、周防(すおう)宮市(みやいち)(大内氏)の兄部座(このこうべざ)などがその例で、彼らは城下町商人の統制・徴税から物資調達までの流通経済全般を掌握した。

[鈴木敦子]

機能

座は営業団体として商業活動の円滑化と利益追求のために、以下のような特権を獲得していた。第一は課役免除の特権で、室町期以降所々に設けられた関・津の自由通行権(関銭・津料免除権、過所(かしょ))や、市場での市場税免除権などである。たとえば大山崎油神人は、1222年(貞応1)不破関(ふわのせき)の過所を得たのをはじめとして、「諸関津料」の免除権を得て、荏胡麻(えごま)の買付けから油の販売までの活発な営業活動を展開した。第二は、原料の仕入れから製品の販売に至るまでの種々の独占権である。大山崎油神人が、畿内(大和を除く)・中国・九州で荏胡麻の仕入れと油の販売をしたことは有名で、彼らは在地の油生産者の搾油器を破却してまでも、自己の独占権を守っている。近江の得珍保商人を中心とした四本商人(しほんしょうにん)(山越商人(やまごえしょうにん))は、輸送路を専有することによって伊勢・小浜(おばま)からの塩相物(しおあいもの)などの仕入れから販売までの独占を果たした。また製品販売には、営業圏の設定、さらには市場での独占販売権=市座権の確保が重要で、中世後期にはこれらをめぐっての相論が頻発している。

 座の諸権利は、初期には朝廷や本所によって保障されていたが、荘園(しょうえん)領主権力の衰退に伴い、幕府・守護・在地領主などに上納金を納めてその保障を求めるようになった。

[鈴木敦子]

衰退

座が自己の営業利益を守るために進めた独占化は、かえって経済発展の妨げとなっていった。そのため戦国大名は領国内の産業育成・経済発展を目的として、御用商人に新たな座を結成させ領国内商業の管理・統制を行わせた。さらに近江の六角氏が観音寺城下に楽市令(らくいちれい)を出したように、旧来からの座を否定する政策をとったのである。織田信長は、自領国内に楽市・楽座令を発布し、豊臣秀吉(とよとみひでよし)はそれを全国化していった。これによって中世特有の商業組織としての座は姿を消したのである。

[鈴木敦子]

『豊田武著『中世日本の商業』(1982・吉川弘文館)』『豊田武著『座の研究』(1982・吉川弘文館)』『豊田武著『中世の商人と交通』(1983・吉川弘文館)』『豊田武著『封建都市』(1983・吉川弘文館)』『豊田武他編『流通史』(1969・山川出版社)』『佐々木銀弥著『荘園の商業』(1965・吉川弘文館)』『佐々木銀弥著『中世商品流通史の研究』(1972・法政大学出版局)』『佐々木銀弥著『日本商人の源流』(教育社歴史新書)』『脇田晴子著『中世日本商業発達史の研究』(1965・御茶の水書房)』『脇田晴子著『日本中世都市論』(1981・東京大学出版会)』『仲村研著『中世惣村史の研究』(1984・法政大学出版局)』


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普及版 字通 「座」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音]
[字訓] ざしき

[字形] 形声
声符は坐(ざ)。〔玉〕に「牀座なり」とあって平生起居するところ、臥席の意とする。坐は土主(土)の前に両人が対坐し、獄訟を争うことを示す字で、座とは宗などでその獄訟が行われることをいう。それで本来は神の座を意味し、わが国でも神を一座二座と数える。〔史記、天官書〕に「五の坐」とあり、座と通用する。星には星座・御座といい、神の住むところとする観念があった。わが国では寺社に奉仕的関係をもつギルド的な結社があり、これを座といった。経済や技芸の関係に、座というものが多い。

[訓義]
1. 神くら、御座、聖なる場所、もと獄訟を行うところであった。すわるところ。
2. くらい、特定の者の位置するところ、星のやどり。
3. ざしき、しきもの、あつまりのひと、つどい。
4. や聖所、また山林などを数える助数詞。
5. 国語では神くら、社寺に属する職能的集団の名につけて用いる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕座 ヰモノヒキナリ 〔字鏡集〕座 トコロ・ヰモノヒキナリ

[語系]
座・坐dzuaiは同声。坐は獄訟を構成すること。裁判をする人と当事者をすべて含めて坐という。座はその裁判を行うところで、神位のあるところをいう。坐はのち坐臥の意に用い、その場所を座という。

[熟語]
座位・座下・座客・座隅・座師・座次・座主・座上・座人・座席・座船・座前・座禅・座側・座談・座中・座内・座弁・座末・座右・座論
[下接語]
幄座・安座・座・一座・円座・王座・環座・起座・座・虚座・御座・玉座・金座・銀座・下座・傾座・猊座・広座・高座・講座・斎座・四座・視座・侍座・首座・酒座・銃座・上座・神座・塵座・正座・星座・静座・遷座・前座・即座・対座・退座・台座・単座・端座・着座・中座・長座・鎮座・帝座・鼎座・典座・当座・同座・独座・半座・賓座・仏座・便座・法座・砲座・末座・満座・黙座・臨座・礼座・列座・蓮座・露座

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百科事典マイペディア 「座」の意味・わかりやすい解説

座【ざ】

中世,商工業者,交通運輸業者,芸人などが結成した特権的同業集団。朝廷・官衙(かんが)・公家・大社寺を本所(ほんじょ)とし,それに隷属し,座役を提供する代償として,販売の独占権,課税免除などの特権を保障された。京都,奈良,天王寺,堺,兵庫などの中央都市・重要港湾都市,中央と地方を結ぶ近江(おうみ),大和などの荘園・村落内に数多く成立し,なかでも石清水(いわしみず)八幡宮の神威を背景にした大山崎油座神人(じにん)は,全国的な原料エゴマの仕入,製品油の販売に強い独占を行使した。室町時代に入ると,座外の商工業者も多く現れ,新座を結成したり,あるいは営業の自由を求めて,旧来のいわゆる本座商人との争いが激化した。戦国大名は,領国経済発展のため,旧来の座の力を利用する一方,新興商工業者をも掌握し,統制するため,楽市楽座令を発布し,座の撤廃が進められた。
→関連項目大山崎離宮八幡宮株仲間ギルド宮座八幡惣町

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「座」の意味・わかりやすい解説


(1) もと座席の意味で,広く場所,集団の呼称に用いられたが,歴史的には同業組合その他の特称として知られる。平安時代末期から戦国時代にかけて興った特権的同業組織は,公家などを本所 (領主) として,本所に座役 (一種の税) を納めるかわりに商品販売の独占権を得ることを目的とし,ついでに課役免除や関税免除などの特権を得ようとした。東大寺の鍛冶 (かじ) 座,大山崎離宮八幡の油座 (→大山崎油座 ) ,京都の駕輿丁 (かよちょう) 座,北野社の麹座などが著名である。戦国大名は,領国経済の安定をはかり,座の特権を廃止して楽市・楽座を行なった。 (2) 芸能の座は,中世における田楽 (でんがく) ,猿楽 (さるがく) その他の芸能人の集団が座を組織したもので,興行の独占,諸役の免除などの特権を与えられると同時に,その属する寺社などに神事奉仕の義務を負った。近世初頭に興った人形浄瑠璃や歌舞伎の座は,本質的には中世のものとは異質で,興行権を得て芝居を興行し,一定の地に劇場を建て,その興行権の名称として「…座」と名づけた。さらにそれが劇場そのものをさすようになった。新劇における座名には,一定の主義,主張のもとに集った組織としての意味も多少ある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「座」の解説


中世,商人・職人・芸能民らが結成した同業者組織。平安後期に出現し,中世を通じて存在した。起源は荘園公領制成立期に供御人(くごにん)・神人(じにん)・寄人(よりうど)などの称号を獲得して朝廷や寺社の保護下に入った職能民の組織にあるとみられる。1092年(寛治6)頃山門青蓮院を本所とする山城の八瀬(やせ)座が初見。座には兄部(このこうべ)・座頭などとよばれる指導者が存在し,入座に制限を設けるなど対外的にはきびしい閉鎖性を示したが,構成員相互の関係は概して平等であった。貴族や寺社を本所とし,一定の奉仕や貢納の代償として課税の免除や営業独占権を認められたが,戦国期に入ると特定の本所をもたない,近世の仲間に似た自立的なものも出現した。独占権をもつ座の存在は価格の高騰や流通の停滞を招いたため,豊臣政権によって多くが撤廃された。京都の三条釜座など江戸時代まで続いたものもある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「座」の解説


中世,商工業者などの特権的同業組合
平安末期より畿内の貴族・寺社を本所とする手工業者が,課役を負う代わりに仕入れ・販売の独占,関銭の免除などの特権を得て結成。八坂神社の綿座,北野神社の麴 (こうじ) 座などが有名。鎌倉末期より一般商工業者も特権を求めて参加し,一方荘園減少に苦しむ本所も座役を財源とするため座を保護したので,室町時代の商工業・産業の発達に貢献した。しかしその特権を守るための閉鎖性が商工業の発達を妨げるようになると,富国強兵を目ざす戦国大名の楽市・楽座政策によって消滅させられた。

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防府市歴史用語集 「座」の解説

中世に商人や職人などの同業者が集まってできた団体で、製品の販売や製造について特別の権利を認められていました。最初は公家や寺社に保護され、そのかわりに奉仕する形でしたが、保護をうけるかわりに税をおさめる形にかわりました。座のメンバーは税をおさめることで、一定地域の中では独占して営業することができました。

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盆栽用語集 「座」の解説

樹の足元・根張りの芸の一つで、細かく岐れた根が横に薄く広がっている様子。盤根(四方に広がり癒着して盤状になった根)もしくは盤根になりかけている根の状態。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【住居】より

…身舎の西4間板張床の広い部屋で,中を屛風や几帳(きちよう)で適当に仕切って日常の生活を行った。座具としては置畳(おきだたみ)を敷き,寝所には,床を一段高くし,四本柱で天井を支えて四方に帳を垂らした帳台が使われていた。東三条殿は貴族住居では最大規模のものであるが,寝殿などの構成原理は他の貴族住居に共通していたものと考えられる。…

【寺事】より

…行事の規模の大小は,ほぼ法要の規模の大小に比例する。通常数人から20人前後の僧侶によって一座(座は法要の数を表現する数詞)の法要が勤修されるが,盛儀になると100人,200人,場合によっては300人前後が出仕することもある。古くは千僧供養,万僧供養と称して多数の僧侶が出仕し,数による功徳を願うこともあり,単に盛儀というにとどまらず,呪的な意味合いもこめられていた。…

【工房】より

…仏所の分立や諸画派の形成などがこのことを例証する。さらに,この工房はやがて権門寺社勢力と結びついて工匠の〈〉を結成し,一段と専業化をおしすすめていく。中世における商工業者・職人の成長は,また,手工業技術工匠の生産に対する作料給付体系の転換をも促した。…

【座法】より

のメンバーである座衆が,座の維持を目的に自主的に定めた規約。座中法度,衆中式目などともいう。…

【宮座】より

…神社の祭事に関係する村落内の特権的な集団をさす学術用語。宮座の語は中世の確実な史料のうちからは発見されていない。近世に吉田家,白川家の管下にあった神職の関係しない村人たちだけの祭祀集団をさす語として用いられた。…

【楽市・楽座】より

…戦国時代から安土桃山時代にかけての都市・市場政策。従来楽市・楽座令は,戦国大名および織豊政権が領国経済の統一,その中心としての城下町の繁栄を目的として発布したものであり,楽市は城下町を課税免除,自由交易の場とするために,楽座は独占的な商工業座の解体を目的とした政策であるとされてきた。しかし現在では,これらの権力の発布した楽市・楽座令の以前に,各地に〈縁切り〉を基本的性格とする楽市場なるものがすでに成立していたことが想定され,この法令は城下町の繁栄を目的とした楽市場の機能の利用と位置づけられるに至っている。…

※「座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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