敵と離れ口径20ミリ以上の火砲(砲身砲,ロケット砲)を使用し,その殺傷破壊力で戦う兵科をいう。なお,同種の任務をもつものでも,軍制上砲兵と称さないものもある。地上目標を射撃する(一般)砲兵と空中目標を射撃する高射砲兵に大別される。また野戦で任意に移動して使用するのを野戦砲兵という。かつては,要塞(海岸)守備専門の砲兵を要塞(海岸)砲兵,その攻撃に当たるものを攻城砲兵と称し,また装備火砲により,野砲兵,山砲兵,迫撃砲兵,重砲兵等に区分したときもあったが,現在は一括して砲兵と称している国が多い。自衛隊では砲兵に当たるものを特科といい,野戦特科と高射特科に分けている。
砲兵隊が弩砲(どほう)隊より独立したのは15世紀のフランスのシャルル7世のときといわれるが,その後シャルル8世が砲架に車輪をつけ馬で牽引する火砲を採用し,1494年イタリアに攻め入り実体弾で都市の城壁をたちまち破壊して占領したのが,野戦砲兵進歩のきっかけになった。その後1631年スウェーデンのグスタブ・アドルフが,散弾を使用した軽砲や簡単な榴弾を使用した重砲を巧みに運用し,神聖ローマ帝国軍の歩騎兵を圧倒して勝利を得てから,砲兵の殺傷威力も大きく認められ,相つぐ火砲,弾丸や火薬の改良で砲兵の戦勝に与える影響は決定的になった。
主兵が歩兵であったときには遮蔽陣地より敵の歩兵を圧倒することが砲兵の主たる任務であったが,陸軍の主力が戦車に移った現在では,友軍の戦車の行動を妨害する敵の対戦車火器等を破壊制圧し,友軍のそれを射撃する敵の砲兵を制圧するなど間接的な戦車支援が砲兵のおもな役割となった。敵の戦車をも射撃するが,それは妨害的効果を期待する程度が通常である。また高射砲兵は軍用機が大規模に使用された第1次大戦ごろに出現した。現在では低空用の高射機関砲を除きほとんどが対空ミサイルを装備している。長射程のものは空軍に,短射程のそれは陸軍に所属させている国もある。
→兵器 →歩兵
執筆者:金子 常規
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陸軍の兵科の一種。各種の火砲により敵を撃滅・制圧することで戦場での優位性を確立し、戦勝の条件を得ることを任務とした。砲兵は野戦砲兵と重砲兵に大別され、前者は野砲兵、山砲兵、騎砲兵、野戦重砲兵、後者は攻城重砲兵、要塞(ようさい)重砲兵に種別された。このほかにも高射砲兵、列車砲兵、自動車砲兵などがあった。現在自衛隊では砲兵に相当する部隊を特科と称し、野戦特科と高射特科から構成されている。
[纐纈 厚]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これは巨大化によって威力を増幅できると単純に考えられたほかに,砲は何よりも攻城機械の一種として利用されたからである。砲や砲隊を指すアーティラリartilleryという語も,13世紀以前にあっては攻城器具一式を意味した。15世紀前半は巨砲の黄金時代で,重さ1万ポンドを越えるものすら鋳造されたという。…
※「砲兵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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