幻化(読み)ゲンカ

デジタル大辞泉 「幻化」の意味・読み・例文・類語

げんか〔ゲンクワ〕【幻化】

梅崎春生長編小説。昭和40年(1965)「新潮」誌に発表された著者遺作同年、第19回毎日出版文化賞受賞。雑誌掲載時の題名は、小説前半が「幻化」、後半が「火」とされていたが、単行本化の際にまとめられた。自ら過去記憶を求め、南九州を旅する精神疾患の男を描く。

げん‐け【幻化】

仏語。幻と化。幻はまぼろし、化は仏・菩薩ぼさつ神通力による変化へんげ実体のない事物、また、すべての事物には実体のないことのたとえ。

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精選版 日本国語大辞典 「幻化」の意味・読み・例文・類語

げん‐け【幻化】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。幻と化。幻はまぼろし、化は神通力による変化(へんげ)のこと。空(くう)のたとえ。
    1. [初出の実例]「狗曇(くどん)王宮の門に有、諸の幻化を成しつるを見つ」(出典今昔物語集(1120頃か)三)

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普及版 字通 「幻化」の読み・字形・画数・意味

【幻化】げんか(くわ)

まぼろしのように変化する。〔列子、周穆王〕數を窮め變にし、形に因りて移易する、之れをと謂ひ、之れを幻と謂ふ。~固(もと)より窮めく、し。~幻生死に異ならざるを知りて、始めて與(とも)に幻を學ぶべし。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「幻化」の意味・わかりやすい解説

幻化
げんか

梅崎春生(はるお)の中編小説。1965年(昭和40)6月号の『新潮』に前半を「幻化」、8月号の同誌に後半を「火」の標題で発表、絶筆となった。同年、単行本として新潮社より刊行。毎日出版文化賞を受ける。東京の精神病院を抜け出した五郎が、戦争中に海軍生活を送った九州まで記憶を確かめにやってくるが、その旅の途中、五郎の分身ともいうべき予期せざる同伴者(映画会社のセールスマン)につきまとわれ、とうとう阿蘇(あそ)山の火口で自殺の賭(か)けをする。五郎がよろめき歩く男に心の中で「しっかり歩け」と声援を送る結末は、ついに自作自演の追悼の辞となった。

[古林 尚]

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世界大百科事典(旧版)内の幻化の言及

【梅崎春生】より

…日常生活の危機を軽妙にえがく作風を通して《ボロ家の春秋》(1954,翌年直木賞受賞),《砂時計》(1955)などが書かれた。その後,広い作家活動をつづけたが,健康の不調で63年には吐血し,65年にいたって,戦中から戦後にまたがる自身の歩みを定着した《幻化(げんか)》を遺作として,同年7月19日に死去。【磯田 光一】。…

※「幻化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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