引き摺る(読み)ヒキズル

デジタル大辞泉 「引き摺る」の意味・読み・例文・類語

ひき‐ず・る【引き×摺る】

[動ラ五(四)]
地面などをすって引いて行く。「下駄を―・って歩く」
長い物を垂らして地面などに触れさせる。「裾を―・る」
無理に連れて行く。「交番に―・って行く」
故意に長引かせる。「回答月末まで―・る」
捨てきれずに今なおもちつづける。いつまでも忘れないでいる。「失恋痛手を―・る」
(普通「ひきずられる」の形で用いる)他人行動や考えを引っ張る。影響を与える。「雰囲気に―・られてつい承諾してしまった」
[類語](1引く手繰る引っ張る吸い寄せる手繰り寄せる引き寄せる引き付ける引き絞る手繰り込む/(5抜き難い止み難い

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精選版 日本国語大辞典 「引き摺る」の意味・読み・例文・類語

ひき‐ず・る【引摺】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 物を垂らして床面や地面などに触れさせる。
      1. [初出の実例]「日本には裳のひの袴のなんどと云てひきずるは」(出典:史記抄(1477)八)
    2. 地面をすってひっぱっていく。
      1. [初出の実例]「足のつまさきを挙てきびすの方をばあげずして、ひきづりて閑に歩を云」(出典:応永本論語抄(1420)郷党第一〇)
      2. 「跡より竹杖を引ずるは」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)三)
    3. ひっぱっていく。
      1. [初出の実例]「クルマ ニ ノッテ ウシ ニ fiqizzurareta(ヒキヅラレタ)コト」(出典:天草本平家(1592)三)
    4. 音声を長く延ばす。
      1. [初出の実例]「とかやと、とを引て云を、うら山しがりて、とうかやなどひきずる也」(出典:申楽談儀(1430)音曲の心根)
    5. 長びかせる。だらだら続ける。
      1. [初出の実例]「ひきずる裾と引ずるお客」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三)
    6. 望んでいないものを不本意ながら持ち続ける。また、望んでいないものを伴って来る。
      1. [初出の実例]「涜(けが)らはしい聯想を引きずった金なんか真平だ」(出典:普賢(1936)〈石川淳〉一二)
    7. 状況や人の心に影響を与える。力を及ぼして思い通りにする。
      1. [初出の実例]「そのつまらぬことこそ、自分をここまでずるずると引きずって来た正体なのだと気づいた」(出典:いのちの初夜(1936)〈北条民雄〉)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 地面の上などに垂れて引かれる。
    1. [初出の実例]「其(その)異人が巨大(おほきい)んでげして、馬鹿に巨大から背広の服が引摺(ヒキズル)んで」(出典:落語・金の味(1892)〈三代目三遊亭円遊〉)

引き摺るの補助注記

中世後期から例が見え、抄物やキリシタン資料には「ひきづる」と「ひきずる」の両形があり、歴史的仮名遣いとしてどちらが正しいかは未詳

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