普賢(読み)フゲン

デジタル大辞泉 「普賢」の意味・読み・例文・類語

ふげん【普賢】[書名]

石川淳中編小説。中世フランスの女流詩人クリスチーヌ=ド=ピザン伝記を構想する「わたし」を主人公とする観念小説。昭和11年(1936)発表同年、第4回芥川賞受賞。

ふげん【普賢】

普賢菩薩」の略。
[補説]書名別項。→普賢

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精選版 日本国語大辞典 「普賢」の意味・読み・例文・類語

ふげん【普賢】

  1. ( [梵語] Samanta-bhadra の訳語 ) 「ふげんぼさつ(普賢菩薩)」の略。
    1. [初出の実例]「恒受妙楽、終遇舎那之法莚、将普賢而宣遊、共文珠而展化」(出典:正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳)

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改訂新版 世界大百科事典 「普賢」の意味・わかりやすい解説

普賢 (ふげん)

菩薩の一。サンスクリットのサマンタバドラSamantabhadraの訳。あまねく一切処に現れて賢者の功徳を示すことからこの名がある。《華厳経》には十大願(諸仏を敬わん,など)をたてたこと(普賢行願品),善財童子に自らの過去の修行を述べて彼を激励したこと(入法界品)が述べられ,《法華経》では六牙の白象に乗って法華経の信仰者を守護しにやってくること(普賢勧発品)が述べられている。十大願はいっさいの菩薩の行願を代表するとされ,この意味で行徳の本体とされる彼は,仏の知恵をつかさどる文殊と行動をともにすることが多く,ともに釈迦の脇侍となる。また密教経典には延命の徳も説かれている。中国のクムトゥラ石窟敦煌莫高窟にも白象に乗る普賢の図が描かれている。
執筆者:

《法華経》に普賢菩薩が《法華経》を誦持する行者を守護すると説かれ,また《法華経》が女人往生を説くことから,日本では平安時代にことに女性の信仰を集め,すぐれた美術作品を残した。絵画としては東京国立博物館本,鳥取豊乗寺本などがある。白象に乗って出現した幻想的な情景を描いた図で,12世紀の耽美的な仏画として著名である。さらに十羅刹女と組み合わせて普賢十羅刹女図として描いた作例も多い。彫刻では大倉文化財団所蔵の像が平安時代騎象普賢像としてよく知られている。密教では金剛薩埵(こんごうさつた)と同体とされ,胎蔵曼荼羅中台八葉院・文殊院,さらに金剛界曼荼羅中に見いだされる。またさまざまな図像の変化がある。しかし密教像として単独に作られた例は少なく,むしろ普賢延命法の本尊である普賢延命像が多い。増益・長寿のために修される。胎蔵曼荼羅遍知院の二十臂像があり,五仏宝冠をつけ,蓮華座に結跏趺坐する。異形像として蓮華座を四白象が支え,各象の頭に四天王を載せる図像がある。この例としては広島持光寺本がある。他方,二臂像として五仏宝冠をつけ,金剛杵・金剛鈴を執(と)って白象の背に座し,さらにこの白象を下で千体の白象が支える図像がある。この作例に京都松尾寺本がある。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「普賢」の意味・わかりやすい解説

普賢【ふげん】

仏教の菩薩。文殊(もんじゅ)とともに釈迦の脇士。仏の理・定・行の徳を表す。智慧の文殊に対し,慈悲の普賢。《華厳(けごん)経》で重要な役割を果たすので,華厳三聖の一人ともされる。《法華経》では行者を守るため白象に乗るとされ,仏像も六牙の白象に乗ったものが多い。特に延命の功徳のある本尊を普賢延命菩薩という。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「普賢」の意味・わかりやすい解説

普賢
ふげん

石川淳(じゅん)の中編小説。1936年(昭和11)『作品』に発表。以後諸種の作品集に収録。芥川賞受賞作。普賢行につながりたいという念願を秘めた主人公「わたし」は、心裡(しんり)に把持するこの理想のために、現実との競り合いにおいて後れをとり、自己の生活喪失にまで立ち至らされる。ところで、この理想がもはや理想でなくなるという事件が起こる。かくて、理想の消失とともにつかみあてた絶望という極から、改めて普賢行への新生を踏み出す。この作者の初期の諸作品にみられ、またその生涯の主題でもある、絶望よりの転生が主題である。作品世界の緊密さ、包含する劇、構想の大きさなどにおいて、初期の大作であり代表作である。

[井沢義雄]

『『普賢』(集英社文庫)』

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世界大百科事典(旧版)内の普賢の言及

【善財童子】より

…母の胎に宿ったとき,財宝が家中に満ちたことから名づけられたという。福城(ダーニヤーカラ)の豪商の子で,福城の東,荘厳幢娑羅林(しようごんどうさらりん)で文珠(マンジュシュリー)菩薩の説法を聞いて仏道を求める心を発し,その指導によって南方に53人(数え方によって54人とも55人ともされる)の善知識(よい指導者)を訪ねて遍歴し,再び文珠のもとに戻り,最後に普賢(サマンタバドラ)菩薩の教えによって修行を完成する。善知識は菩薩,比丘,比丘尼,優婆塞(うばそく)(在家男子),優婆夷(うばい)(在家女子),神,婆羅門,王,童子,遊女などあらゆる階層にわたり,あらゆるものが求道の師であることを教えている。…

【文殊】より

…般若思想に関係が深く,大乗諸経典に菩薩の上位者として登場する。普賢(ふげん)と組み合わされ,普賢が行(ぎよう)を象徴し,白象に乗るのに対し,文殊は知を象徴し,獅子に乗る。《華厳経》に文殊の住処は東北方にあるという文句があり,中国の五台山にあてる説が生まれた。…

※「普賢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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