引立てる(読み)ヒキタテル

デジタル大辞泉 「引立てる」の意味・読み・例文・類語

ひき‐た・てる【引(き)立てる】

[動タ下一][文]ひきた・つ[タ下二]
無理に連れて行く。ひったてる。「容疑者を―・てる」
元気が出るようにする。はげます。「酒を飲んで気分を―・てる」
ひいきにして力添えする。特に目をかける。「後輩を―・てる」
一段とよく見えるようにする。よさが際立つようにする。「花が部屋を―・てる」
戸などを、引いて閉じる。「雨戸を―・てる」
引き起こす。引っ張って立てる。
「やがてこの人を―・て推しはかりに入り給ふ」〈夕霧
[類語](2力付ける励ます激励声援元気付ける螺子ねじを巻く発破をかける活を入れる鼓舞督励鞭撻/(3引き上げる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「引立てる」の意味・読み・例文・類語

ひき‐た・てる【引立】

  1. 〘 他動詞 タ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ひきた・つ 〘 他動詞 タ行下二段活用 〙
  2. 横になっている物や人を引っ張って立つようにする。引き起こす。
    1. [初出の実例]「生糸(すずし)のいとを長うむすびて、一つむすびては、ゆひゆひして、ひきたてたれば」(出典蜻蛉日記(974頃)上)
  3. 戸、障子などを、引き出してたてる。引いて閉じる。
    1. [初出の実例]「やり戸あけたりとておとどさいなむとて、ひきたてて、錠(ぢゃう)ささんとすれば」(出典:落窪物語(10C後)二)
  4. 引いてきた車などを、とめる。車をとどめる。
    1. [初出の実例]「車ひきたててみる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  5. 馬などを、引いて連れ出す。引いて連れて行く。
    1. [初出の実例]「高天の原に耳(みみ)振立(ふりたて)て聞く物と、馬牽立(ひきたて)て」(出典:延喜式(927)祝詞)
  6. いっしょに連れて行く。いっしょに行くようにせきたてる。また、無理に連れて行く。連行する。
    1. [初出の実例]「やがてこの人をひきたてて、推し量りに入り給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)
  7. 人や、ある方面の事柄を、重んじて特に挙げ用いる。特に目をかける。ひいきにする。
    1. [初出の実例]「重代稽古のものなりけれども、引たつる人もなかりけるに」(出典:古今著聞集(1254)一)
  8. 勢いがよくなるようにする。気分・気力の勢いをよくする。気を奮い立たせる。
    1. [初出の実例]「杣山のあさ木の柱ふし繁みひきたつべくもなき我が身哉〈藤原家良〉」(出典:新撰六帖題和歌(1244頃)六)
  9. 一段とみごとに見えるようにする。特に目立つようにする。きわだたせる。
    1. [初出の実例]「夕顔に引立らるる後架哉」(出典:俳諧・七番日記‐文化七年(1810)九月)
  10. 注意を集中する。特に、聞き耳を立てる。
    1. [初出の実例]「引(ヒ)き立(タ)つる耳に一と言二た言、怪しや夢か意外の事ども」(出典:うもれ木(1892)〈樋口一葉〉八)

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