引上げる(読み)ヒキアゲル

デジタル大辞泉 「引上げる」の意味・読み・例文・類語

ひき‐あ・げる【引(き)上げる/引(き)揚げる】

[動ガ下一][文]ひきあ・ぐ[ガ下二]
引っ張って上方へ上げる。「いかりを―・げる」
値段・比率・水準などを高くする。「公共料金を―・げる」「利子を―・げる」
選んでよい地位や役につける。登用する。「幹部に―・げられる」
差し向けた人や、先方へ出した物などを、自分の所へ戻す。「派遣軍を―・げる」「資金を―・げる」
その場所を去ってもとの所へ戻る。「外地から―・げる」「話もそこそこに―・げる」
日時を早める。時間を繰り上げる。
「暁の御ときを―・げて夕暮れに行はれし」〈弁内侍日記
[類語](1上げる持ち上げる押し上げる突き上げる差し上げる振り上げる吊り上げる打ち上げる放り上げる吹き上げる吸い上げる巻き上げる揺り上げるもたげる/(3引き立てる/(5下がる去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う辞去する退去する退散するせる退退立ち退く引き下がる引き取る引っ込むあとにする

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精選版 日本国語大辞典 「引上げる」の意味・読み・例文・類語

ひき‐あ・げる【引上・引揚】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ひきあ・ぐ 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙
    1. 引いて上に上げる。ひっぱって高いところに移す。
      1. [初出の実例]「塩許袁呂々々々邇〈此の七字は、音を以ゐる〉画鳴(かきなしし)〈鳴を訓みて那志々と云ふ〉て引上(ヒキアクル)時」(出典古事記(712)上(道祥本訓))
      2. 「もやの木丁の帷子ひきあげて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)空蝉)
    2. 日時をはやめる。時間を繰り上げる。
      1. [初出の実例]「引(ひキ)(アケ)て斉に当てしむ」(出典:大日経義釈延久承保点(1074)一〇)
    3. 選んで目をかけて用いる。登用する。
      1. [初出の実例]「世はなげくまじ又引あぐる神も有て」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)五)
    4. 取り上げる。没収する。他にまかせておいたものを取りもどす。
      1. [初出の実例]「僅かな事を云ひ立てに、娘を引揚げ、苦しまぎれに、遊女はしたにでも売る心か」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)序幕)
    5. 程度をはなはだしくする。
      1. [初出の実例]「釜屋の酒がまだ醒めねへところへ此処でやらかしたから酔を引上(ヒキア)げて」(出典:滑稽本・和合人(1823‐44)四)
    6. 価格や比率を高くする。
      1. [初出の実例]「洋糸は〈略〉総て一枚方も引上げ当分の内は下落の見込なし」(出典:朝野新聞‐明治一五年(1882)六月一日・附録)
    7. 検挙する。
      1. [初出の実例]「義平もつづいて引挙げられるらしい」(出典:正雪の二代目(1927)〈岡本綺堂〉二)
    8. 軍勢を退かせる。
      1. [初出の実例]「鎮兵を引揚げしむる等の事を管督せしむるに」(出典:経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ひきあ・ぐ 〘 自動詞 ガ下二段活用 〙
    1. その場所から退去して他に移動する。撤退する。立ちのく。
      1. [初出の実例]「出初を退挙(ヒキア)げて行く消防隊の長い木遣が」(出典:恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉二四)
    2. もとのところへ帰る。もどる。また、居住していた外国から故国に帰る。
      1. [初出の実例]「表門から落雲館へ引き上げる」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉八)

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