弥次郎兵衛(読み)ヤジロベエ

デジタル大辞泉の解説

やじろべえ〔やジロベヱ〕【弥次郎兵衛】

東海道中膝栗毛」中の人物。江戸の住人で、喜多八とともに失敗やこっけいを演じながら東海道・京・大坂を旅する。
《荷物を振り分けにした姿のをかたどったところから》玩具の一。短い棒に人形をつけ、その両手を長くして端に重りをつけ、中心の棒を支えるだけでうまく釣り合いがとれて倒れないようにこしらえたもの。釣り合い人形。与次郎人形与次郎兵衛

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百科事典マイペディアの解説

弥次郎兵衛【やじろべえ】

玩具(がんぐ)の一つ。与二郎という門付が笠の上でこれを舞わして見せて銭をもらっていたことが名称の由来とされ,与二郎兵衛から弥次郎兵衛に変化していった。また釣合い人形,水汲み人形などとも呼ばれた。短い立棒に弧状の長い横棒をつけ,その両端におもりをつけたもの。ふつう人形の形に作り,指先などにのせ,振動させて遊ぶ。一種の実体振子で,重心が支点より下にあるため釣合は安定,また重心と支点の距離が短いため振動周期が大きい。アジア起源といわれ,日本では近世に流行した。

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世界大百科事典 第2版の解説

やじろべえ【弥次郎兵衛】

物理学の重心安定の理を応用した玩具。人形の左右に長い横棒をつけて,その棒の両端におもりをつけ左右の釣合いを平均させる。指などで軽く押し動かすと,棒の中心の人形は揺れながら釣合いをとって落ちない。これは,弥次郎兵衛全体の重心が,弥次郎兵衛を支えている支点より下にあるため,傾いたときに元に戻そうとするモーメントが作用するからである。そのおもしろさから江戸時代以来親しまれてきた。享保(1716‐36)ころの浮世絵にもすでに登場しているが,名称の語源は与二郎という門付(かどづけ)が,笠の上でこれを舞わして見せて銭をもらい歩いたのが始まりという。

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大辞林 第三版の解説

やじろべえ【弥次郎兵衛】

人形の一種。頭と胴に見たてた短い立棒に、腕に見たてた長い横棒をつけ、横棒の両端におもりをとりつけたもの。立棒の下端を指で支えると、大きくゆれながら、バランスを保つ。振り分け荷物を肩にしたの姿に作ったのでいう。与次郎人形。与次郎兵衛。釣り合い人形。
○ 「東海道中膝栗毛」の主人公。喜多八と滑稽な旅をする。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

弥次郎兵衛
やじろべえ

物理学の重心安定の理を応用した科学玩具(がんぐ)。横棒の両端に重りを取り付けて左右を平均させ、棒の中心に人形をつけて、指で揺らしても倒れないようにつくったもの。江戸時代から与次郎人形、与次郎兵衛、つり合い人形、弥次郎兵衛、笠(かさ)人形、水くみ人形、豆蔵などさまざまな名でよばれ、享保(きょうほう)年間(1716~36)のころの浮世絵にもすでに登場している。名称の語源は、与次郎という非人が、門付(かどづけ)に笠の上でこれを舞わしたことがおこりという。また、直立しようとしている姿から「正直正兵衛」ともよばれた。1810年(文化7)刊の『飛鳥(あすか)川』(柴村盛方(しばむらもりかた)著)には、「昔与次郎兵衛とて、人形を竹の先に付(つけ)くるくると廻(まは)し、与次郎こいやれたゝきこいやれとて、物貰(ものもらひ)たるが今は見へず」と、門付に用いられたことを記している。また1853年(嘉永6)刊の『近世商売尽(づくし)狂歌合(うたあわせ)』(瀬川如皐(せがわじょこう)著)には、「是(これ)は旧来よりの与次郎兵衛といふ人形なり、指の先へ此(この)人形を立て『としはとつてもマダマダ大丈夫シャントコイシャントコイシャントコイ』」と、その振売り行商風景を伝えていて、当時子供の玩具として親しまれていたことを示している。ときには、大人が酒席の遊びにも用いた。横棒を両手に見立て、人形の上部でT字形にしたものと、下部の裾(すそ)あたりにさしたものとがある。現在もさまざまに応用され、高松の運動人形(香川県)などの郷土玩具もある。[斎藤良輔]

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