弥次郎兵衛(読み)ヤジロベエ

デジタル大辞泉 「弥次郎兵衛」の意味・読み・例文・類語

やじろべえ〔やジロベヱ〕【弥次郎兵衛】

東海道中膝栗毛」中の人物江戸住人で、喜多八とともに失敗やこっけいを演じながら東海道・京・大坂を旅する。
荷物を振り分けにした姿のをかたどったところから》玩具の一。短い棒に人形をつけ、その両手を長くして端に重りをつけ、中心の棒を支えるだけでうまく釣り合いがとれて倒れないようにこしらえたもの。釣り合い人形。与次郎人形与次郎兵衛

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弥次郎兵衛」の意味・わかりやすい解説

弥次郎兵衛
やじろべえ

物理学の重心安定の理を応用した科学玩具(がんぐ)。横棒の両端に重りを取り付けて左右を平均させ、棒の中心に人形をつけて、指で揺らしても倒れないようにつくったもの。江戸時代から与次郎人形、与次郎兵衛、つり合い人形、弥次郎兵衛、笠(かさ)人形、水くみ人形、豆蔵などさまざまな名でよばれ、享保(きょうほう)年間(1716~1736)のころの浮世絵にもすでに登場している。名称の語源は、与次郎という非人が、門付(かどづけ)に笠の上でこれを舞わしたことがおこりという。また、直立しようとしている姿から「正直正兵衛」ともよばれた。1810年(文化7)刊の『飛鳥(あすか)川』(柴村盛方(しばむらもりかた)著)には、「昔与次郎兵衛とて、人形を竹の先に付(つけ)くるくると廻(まは)し、与次郎こいやれたゝきこいやれとて、物貰(ものもらひ)たるが今は見へず」と、門付に用いられたことを記している。また1853年(嘉永6)刊の『近世商売尽(づくし)狂歌合(うたあわせ)』(瀬川如皐(せがわじょこう)著)には、「是(これ)は旧来よりの与次郎兵衛といふ人形なり、指の先へ此(この)人形を立て『としはとつてもマダマダ大丈夫シャントコイシャントコイシャントコイ』」と、その振売り行商風景を伝えていて、当時子供の玩具として親しまれていたことを示している。ときには、大人が酒席の遊びにも用いた。横棒を両手に見立て、人形の上部でT字形にしたものと、下部の裾(すそ)あたりにさしたものとがある。現在もさまざまに応用され、高松の運動人形(香川県)などの郷土玩具もある。

[斎藤良輔]


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改訂新版 世界大百科事典 「弥次郎兵衛」の意味・わかりやすい解説

弥次郎兵衛 (やじろべえ)

物理学の重心安定の理を応用した玩具。人形の左右に長い横棒をつけて,その棒の両端におもりをつけ左右の釣合いを平均させる。指などで軽く押し動かすと,棒の中心の人形は揺れながら釣合いをとって落ちない。これは,弥次郎兵衛全体の重心が,弥次郎兵衛を支えている支点より下にあるため,傾いたときに元に戻そうとするモーメントが作用するからである。そのおもしろさから江戸時代以来親しまれてきた。享保(1716-36)ころの浮世絵にもすでに登場しているが,名称の語源は与二郎という門付(かどづけ)が,笠の上でこれを舞わして見せて銭をもらい歩いたのが始まりという。与二郎兵衛,与二郎人形からさらに弥次郎兵衛,弥次郎人形,釣合い人形,水汲み人形,豆蔵などさまざまな名がつけられた。また正直正兵衛とも呼ばれたが,これはユラユラ揺れ動きながらも,つねに直立に立とうとする姿に由来する。子どもの玩具のほか,ときには酒席の遊びにもした。横棒を両手に見たて,人形の上部で丁字形にしたものと,下部の裾あたりに差したものとがあり,現在も応用されたものがみられる。
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百科事典マイペディア 「弥次郎兵衛」の意味・わかりやすい解説

弥次郎兵衛【やじろべえ】

玩具(がんぐ)の一つ。与二郎という門付が笠の上でこれを舞わして見せて銭をもらっていたことが名称の由来とされ,与二郎兵衛から弥次郎兵衛に変化していった。また釣合い人形,水汲み人形などとも呼ばれた。短い立棒に弧状の長い横棒をつけ,その両端におもりをつけたもの。ふつう人形の形に作り,指先などにのせ,振動させて遊ぶ。一種の実体振子で,重心が支点より下にあるため釣合は安定,また重心と支点の距離が短いため振動周期が大きい。アジア起源といわれ,日本では近世に流行した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「弥次郎兵衛」の解説

弥次郎兵衛 やじろべえ

弥次・喜多(やじ・きた)

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