翻訳|moment
能率ともいう。図のように軽い棒の両端に重さがW1,W2の物体をつるし,中間で支えてつりあわせるには,l1W1=l2W2となる点を支えることが必要である。このとき重力W1が棒を左へまわそうとする働きと,W2が棒を右へまわそうとする働きがつりあうからと考えられる。このことは,力Fが物体を回転させようとする働きが,力の大きさFだけでなく,支点と力の作用線(力が働いている点をとおり力の方向にひいた直線)の間の距離にも比例することを示す。そこで,物体に力Fが作用しているとき,点OからFの作用線に下ろした垂線の長さhと力の大きさFの積hFのことを,O点のまわりの力Fのモーメント(の大きさ)と定める。これは回転させようとする働きの大小を示す。さらに,その回転軸の方向(力FおよびOと作用点Pを結ぶベクトルの両方に垂直)および向き(右ねじの進む向きと約束する)をこれに付与してベクトルで表すと便利なので,そのようなベクトルをOに関するFのモーメントと呼ぶ。ベクトル積の記号を使うとN=r×Fと表される。同様に,点Pでベクトル量Aが定められるとき,r×Aのことを,Oに関するAのモーメントという。例えば質点がPで運動量pをもっているとき,運動量のモーメントl=r×pというものを考えることができるが,これを角運動量と名づけている。またモーメントはスカラー量にも用いることがある。例えば位置r1,r2,……に点電荷q1,q2,……が存在するとき,P=q1r1+q2r2+……のことをその系の電気双極子モーメントという。とくに等量の正負の電荷q,-qがdだけ隔たって存在する電気双極子では,P=qr1+(-q)r2=qdとなる。磁気(双極子)モーメントは,±qmの磁気量をもった磁極が dだけ離れて存在するときにm=qmdによって定義される。 また慣性モーメントのように,回転軸からの距離riの2乗と質量mi(慣性の大小)の積の和で定義されるような量もある。
執筆者:小出 昭一郎
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原点Oから点Pに至る位置ベクトルrと,Pにおけるベクトル量Gのベクトル積r × Gを,原点Oのまわりのモーメントという.Gが力ならば力のモーメントであり,運動量ならば角運動量である.また,原点からの二つの位置ベクトル r1 と r2 の位置に異なる符号で同じ電荷qと-qがあるとき,
q(r1 - r2)
を電気双極子モーメントあるいは電気双極子能率という.電荷のかわりに磁気量が入れば磁気モーメントである.もし,電荷の位置に反対方向の力Fが入れば
(r1 - r2) × F
はトルク,すなわち,偶力のモーメントになる.
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能率、力のモーメント、またはトルクともいい、ある点または軸の周りに運動を引き起こす能力のことである。てこの原理でよく知られているように、力のモーメントは、力の大きさだけでなく、支点からの距離にも依存する。正確には、回転中心から力の作用点へ引いた位置ベクトルrと力Fとのベクトル積r×Fで与えられる。一般に、力に限らず物理量Xに対して、Xのモーメントをr×Xで定義することもある。より一般的には、ある点からの距離に応じて、たとえば、距離の1乗または2乗などの重みをつけた量を、その点の周りのモーメントとよぶことがある。広がりのある固い物体(物理学では剛体という)の回転運動の記述に現れる慣性モーメントなどはその例である。
[阿部恭久]
…モーメントともいう。統計学で度数分布や確率分布の散布の大きさを測り,分布を特徴づけるのに役だつ。…
※「モーメント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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