債務者がその債務を任意に履行しない場合に、強制的に行われる履行。履行の強制といっても、債権者に自力救済を認めることは社会秩序を乱すことになるので、近代社会においては自力救済は認められず、結局、執行権を独占する国家による強制執行の方法によらざるをえない。
強制履行の方法としては、直接強制、代替執行、間接強制がある。直接強制は、金銭債務、物の引渡し債務の実現のために、代替執行は、家屋収去義務のような他の者がかわって実現できる代替的作為債務の実現のために、間接強制は、証券への署名義務のような不代替的作為義務、および騒音を出さない義務のような不作為債務の実現のために行われる。間接強制は、債務者の個人的な意思の自由を経済的な圧迫を加えて抑圧するものであるから、これによらざるをえない場合にのみ認められるべきである、とされてきたが、現在では、債権者の申立てがあれば、一般的に利用される。不動産の買主が売主に対し所有権移転登記を求めるような場合には、意思表示を求める給付の訴えを提起する必要がある。すなわち、買主は売主に対し移転登記を要求する権利を有し(登記権利者)、売主はこれに協力する義務を有する(登記義務者)。登記の申請は、原則として、登記権利者と義務者が共同して行わなければならない(共同申請。不動産登記法60条)。義務者がこれに協力しない場合には、権利者は、登記手続をするよう命ずる確定判決を得て、単独で申請することになる(同法63条)。このように登記義務の履行を求める訴えは、申請(意思表示)を求めるものであるから、意思表示を求める訴えといえる。この場合、登記手続をするよう命ずる確定判決を得た登記権利者は、その判決をもって単独で登記手続をすることができるので、それ以上の強制的行為(強制執行)は必要ない。債務のうち、夫婦の同居義務や俳優の出演義務のように債務者の意思を尊重しなければならない義務の場合には強制履行は許されず、単に損害賠償が認められるにすぎない。なお、民法第414条で用いられている「強制履行」の語は、直接強制を意味している。
[本間義信]
直接強制,間接強制,および代替執行という,三つの強制執行の方法のうち,債務者自身に義務の履行を強制するという意味で,前2者を指すと理解される。民法414条1項および2項は,まず間接強制を含む強制履行の可能性を検討し,その可能性がない場合に,代替執行を考えるという趣旨に読める。しかし,これに対しては,間接強制が債務者の自由意思を抑圧する性格を持つため,代替執行が可能であれば,代替執行を間接強制に優先させるべきであるという批判があった。1979年改正前の旧民事訴訟法734条も,この強制履行の概念を用いていたが,民事執行法は,上記のような批判を前提として,強制履行の概念を廃止し,かつ,間接強制は,代替執行が不可能な,非代替的作為義務および不作為義務に限ることとした(民事執行法172条1項)。したがって,強制履行という概念は,現在では,それほど大きな意味を持っていない。
執筆者:伊藤 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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