間接強制(読み)カンセツキョウセイ

デジタル大辞泉 「間接強制」の意味・読み・例文・類語

かんせつ‐きょうせい〔‐キヤウセイ〕【間接強制】

債務不履行に対し、裁判所債務者損害賠償を命じて心理的な圧迫を加え、債務を履行させること。強制執行の一方法として用いられる。→直接強制代替執行

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共同通信ニュース用語解説 「間接強制」の解説

間接強制

民事執行法に基づく強制執行の一つ。判決などで命じられた債務を履行しない相手方に、債権者の申し立てを受けた裁判所が一定の制裁金支払いを命じることで心理的に圧力をかけ、履行を促す。相手方がそれでも債務を履行しない場合、債権者は制裁金の増額を裁判所に求めることができる。地裁決定に不服があれば、抗告して高裁判断を仰げる。

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精選版 日本国語大辞典 「間接強制」の意味・読み・例文・類語

かんせつ‐きょうせい‥キャウセイ【間接強制】

  1. 〘 名詞 〙 裁判所が、債務を履行しない債務者に対して、一定期間内に履行しない場合には一定の賠償金を支払うことを命じ、債務者を心理的に強制して債務を履行させること。直接強制、代替執行のできない場合にだけ許される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「間接強制」の意味・わかりやすい解説

間接強制
かんせつきょうせい

債務者に違約金の支払いを命じて、経済的・心理的圧迫を加えて、給付の履行を強制すること。たとえば、ある建物につき暴力団事務所としての使用を禁止し、違反した場合には1日50万円の支払いを命じる場合などがこれにあたる。間接強制は、債権者が債務名義に基づき執行裁判所に間接強制の決定を申し立てると、裁判所は、遅延の期間に応じ、あるいは一定期間の経過後はただちに一定の額の金銭を債権者に支払うよう債務者に命じ、債権者はこれをもとに金銭執行の方法で取り立てる、という形で行われる。従来は、証券に署名すべき義務のような不代替的作為義務や、一定以上の騒音を出さない義務のような反覆的・継続的不作為義務の強制執行の方法として用いられてきた。しかし、2004年(平成16)の民事執行法の改正により、債権者の申立てがあるときは、広く不動産の引渡し等、動産の引渡し等についての、あるいは扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行は、間接強制によることとなった。

[本間義信]

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改訂新版 世界大百科事典 「間接強制」の意味・わかりやすい解説

間接強制 (かんせつきょうせい)

作為義務および不作為義務についての強制執行の方法の一つ。作為義務のうち,いわゆる代替性がある義務の場合には,だれがその行為を行っても結果は同一なので,代替執行の方法を使うことができる。これに対して,株式の名義書換えをなすべき会社の義務などは,代替性がないので,債務者である会社自身の義務履行を促すしかない。そのために裁判所が,債務者に違約金の支払を命じて,間接的に履行を強制するのが間接強制である(民事執行法172条1項)。ただし,肖像画の制作など芸術活動をなすべき義務や夫婦の同居義務などは,作為義務ではあるが,本来強制履行に適しないので,間接強制も認められない。

 そのほか,不作為義務,たとえば飛行機の離着陸をさせない義務については,間接強制が本来の強制執行の方法になる。ただし,不作為義務の違反がなんらかの物的状態を残す場合には,代替執行が許される可能性がある。
強制執行
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百科事典マイペディア 「間接強制」の意味・わかりやすい解説

間接強制【かんせつきょうせい】

強制執行の一方法。債務者が債務を履行しない場合に,債務者の行為(不作為も含む)が非代替的なときには(例,絵のモデルになる場合),債権者から申し立てて裁判所から,一定期間内に履行しないときは直ちに,債務の履行を確保するために一定額の金銭を債権者に支払う旨を命じ,債務者を心理的に強制して履行を図るが,これを間接強制という(民事執行法172条)。ただし,性質上そもそも強制になじまないような債務に関しては,間接強制は許されず,損害賠償によるしかない。なお,従来は直接強制代替執行の認められる債務については間接強制は適用されないとするのが通説であったが,近年この〈間接強制の補充性〉論に対して有力な批判が出現している。
→関連項目金銭執行

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「間接強制」の意味・わかりやすい解説

間接強制
かんせつきょうせい
indirekter Zwang

民事債務についての強制履行の一種。債務者が債務を履行しない場合,裁判所が一定の期間内に履行しないときは,債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭 (制裁金) を支払うよう命じることによって,債務者を心理的に強制し履行させる強制執行の方法 (民事執行法 172) 。債務者の意思の抑圧を伴い,その人格に干渉する性質が強い点で人的執行の名残りをとどめており,執行の例外的方法である。そのため,これを許す場合は限定され,他の執行方法である直接強制代替執行のできない不代替的作為債務 (たとえば財産管理の清算をなすべき義務) についてだけ認められる (民法 414) 。しかも不代替的作為債務であっても,(1) 間接強制をすることが公序良俗に反し,義務者の人格を無視するような場合 (たとえば妻の同居義務) ,(2) 第三者の協力を必要とする場合 (たとえば会社から焼失した株券の再発行を求め,これを質権者に引渡すべき株主の義務) ,(3) 特殊な学識,技術を要する創作的な作為義務 (たとえば著名な画家に会心の絵を描かせること) については許されない。これらの場合には,債権者としては不履行による損害賠償の請求によって満足するほかはない。

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世界大百科事典(旧版)内の間接強制の言及

【強制執行】より

…物の引渡執行では,執行官が強制的に占有を移転させることが可能であるが(168条,169条),作為義務の執行では,債務者の人身の自由という視点から,直接強制は不適当とされる。そこで,代替性のある作為義務については,代替執行の方法がとられるし,非代替義務の場合には,債務者に金銭の支払いを命じることによって間接的に履行を強制するという,間接強制の方法が適している。また,不作為義務の執行については,原則として間接強制の方法がとられる。…

※「間接強制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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