弾詞(読み)だんし

精選版 日本国語大辞典 「弾詞」の意味・読み・例文・類語

だん‐し【弾詞】

〘名〙 中国の明の頃に起こった語り物一種。盲人が小さな太鼓や拍板伴奏でうたい、清の頃になると琵琶・三弦・月琴などに合わせてうたうようになった。江蘇・浙江中心とする江南に行なわれる。南詞(なんし)。〔西遊補‐第一二回〕

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デジタル大辞泉 「弾詞」の意味・読み・例文・類語

だん‐し【弾詞】

中国の語り物の一。明から清にかけて流行、現在でも南方で行われ、琵琶三弦洋琴などを伴奏にする。

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百科事典マイペディア 「弾詞」の意味・わかりやすい解説

弾詞【だんし】

中国の語り物音楽。中国語ではタンツー。明代には盲人が太鼓や拍板を弾じて口演,清代には琵琶三弦月琴で弾唱し,兪秀山(ゆしゅうざん)・馬如飛の名人が出て盛行,南方の江蘇・浙江省方面が中心。特に有名な蘇州弾詞は評弾(ピンタン)とも呼ばれ,評話(語りのみの講話)と弾詞(歌と語り)の二つの形式を合わせもつ。内容は才子佳人,英雄と美女の義理人情因果応報に基づく,波瀾(はらん)万丈のロマンスが多い。女性の作者もかなりいた。《珍珠塔》《玉蜻【てい】(ぎょくせいてい)》等が代表作。→鼓詞

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改訂新版 世界大百科事典 「弾詞」の意味・わかりやすい解説

弾詞 (だんし)
tán cí

中国の明代から現代にまで流行する語り物の形式。主に江蘇・浙江を中心とする南方に行われ,琵琶・三弦・月琴などの伴奏による歌とせりふを交互にくりかえし,1人から3~4人の演者によって長編の物語が語られる。内容は才子佳人が波乱の末に結ばれるラブ・ロマンスが多く,聴衆ばかりでなく作者のなかにも女性がかなりいる。代表作は《珍珠塔》《玉蜻蜓》などで,北方鼓詞とならぶ中国の代表的な語り物である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弾詞」の意味・わかりやすい解説

弾詞
だんし

中国の民間俗曲芸能の一類で、南詞(なんし)ともいう。その前身は宋(そう)代の語り物の陶真(とうしん)、あるいは明(みん)代の詞話(しわ)とされ、遅くとも明代中葉には杭州(こうしゅう)など江南の諸都市に広まって演芸としての形を整え、明末清(しん)初からは弾詞とよばれるようになった。現在、蘇州(そしゅう)、揚州(ようしゅう)、長沙(ちょうさ)、桂林(けいりん)の各弾詞、四明(しめい)南詞などがあり、1人から3、4人による三絃(さんげん)、琵琶(びわ)あるいは月琴を主とした弾き語りで、語りのない歌だけのものもある。通例は七字句を重ねる長編の歌詞で、男女の愛の葛藤(かっとう)などを語り、下層市民や婦女をおもな聴衆として、それぞれの地方の曲調と方言で歌われてきた。1950年代からは現代物の創作も進み、中編、短編もつくられている。

[傳田 章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弾詞」の意味・わかりやすい解説

弾詞
だんし
Tan-ci

中国の語り物文芸の一種。唐の変文の系譜に属し,元末~明初に成立したと考えられる。江南地方を中心に各地で広く行われた。初期には小太鼓や拍板を伴奏として1人で演じられ,清代に入ると琵琶や三弦を用い,2~3人のチームによって演じられた。最古の作品としては明の楊慎の『二十一史弾詞』があるが,現存するほとんどは清代の作品で,作者名も不明なものが多い。題材も才子佳人,英雄好漢を主人公とした,ありきたりの筋立てのものがほとんどで,広く民衆に好まれた。趙樹理の作品などにも影響を与えている。

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普及版 字通 「弾詞」の読み・字形・画数・意味

【弾詞】だんし

物語歌。

字通「弾」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の弾詞の言及

【琵琶】より

…中国では宋代以後,古い形にとらわれずに新しい琵琶様式をつくりあげていった。ことに南部では声楽曲の伴奏用に広く愛用され,語り物としての〈弾詞(だんし)〉になくてはならないものとなり,また明代以後は他の楽器と組み合わされて新しい合奏音楽をつくるのに役立てられた(この合奏形態は日本にも伝えられ〈明清楽(みんしんがく)〉と呼ばれた)。一方,北部ではむしろ独奏楽器として発達し,純器楽的表現のみならず,自然現象を模倣する写実技法を織り交ぜながらフラメンコ風の華麗な技巧をこらした指爪弾法を応用するようになった。…

※「弾詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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