天皇の御願を修する寺の意で,平安時代に盛行した。奈良時代の官大寺と異なり,皇室を檀越(だんおつ)とする皇室の私寺で祈禱所,菩提所として営まれ,天皇譲位後の居所としての性格もそなえる。天皇御願のほか,上皇,皇后,親王等にも用いられ,貴族や僧侶の建立した寺を奏請する場合も多い。京都近辺に集中するが,平安中期以降地方寺院で御願寺となる例も増加する。代表的なものに,山陵に接して建立された仁和寺,醍醐寺,叡山定心院・妙香院,仁和寺に近く,円融天皇御願にはじまる四円寺(円融寺,円教寺,円乗寺,円宗寺),院政期の象徴ともいえる洛東白川の六勝寺(法勝寺,尊勝寺,最勝寺,円勝寺,成勝寺,延勝寺)がある。
執筆者:西口 順子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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天皇や皇族など貴人の発願によりたてられた寺院。古代の大寺や定額(じょうがく)寺に由来し,四円寺や六勝寺が代表例。勅令によって建立・指定された寺院を,とくに勅願寺・勅願所という。はじめ官寺的・公的性格が強かったが,貴族の氏寺の増加に対応して平安後期から天皇家の私寺的色彩を強め,鎮護国家よりも願主の個人的な祈願にこたえることに主眼をおく。その所領も,長講堂領のように事実上の皇室領と化した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…以上の官寺系寺院に対し,奈良・平安時代,政府は私寺乱造の弊害を是正し国家の統制をはかるため,皇族や貴族が建立した寺院のうち,寺額を与えて定額寺(じようがくじ)と定め,修理料などを施入して経営保護に当たり,半官半私の寺院制を設けた。定額寺は全盛期には数十ヵ寺を数えたが,律令制の衰退とともに政府からの実益が停止し,平安後期には院政期の六勝寺に象徴される御願寺(ごがんじ)の制にその位置をゆずった。御願寺は天皇,上皇,院宮などを本願に建立された寺院で,定額寺と同じく本願のための加持祈禱を主務とする密教系寺院で,施入された多くの荘園をもつ荘園領主でもあったが,13世紀にはいっていずれも衰微した。…
※「御願寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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