サリチル酸(読み)サリチルサン(その他表記)salicylic acid

デジタル大辞泉 「サリチル酸」の意味・読み・例文・類語

サリチル‐さん【サリチル酸】

salicylic acidカルボン酸の一。無色針状の結晶染料医薬品の製造原料、酒類などの防腐剤とする。化学式C6H4OH)COOH

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精選版 日本国語大辞典 「サリチル酸」の意味・読み・例文・類語

サリチル‐さん【サリチル酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( サリチルは[オランダ語] salicyl )[ 異表記 ] サルチルさん カルボン酸の一つ。化学式 C6H4(OH)COOH 無色で昇華性の単斜晶系針状結晶。媒染アゾ染料、直接染料の中間体として重要であるほか、防腐剤、外用皮膚薬などに用いられる。O‐ヒドロキシ安息香酸。サリシル酸。〔時事新報‐明治二〇年(1887)一一月八日〕

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改訂新版 世界大百科事典 「サリチル酸」の意味・わかりやすい解説

サリチル酸 (サリチルさん)
salicylic acid


芳香族有機酸の一つ。o-ヒドロキシ安息香酸にあたる。天然にはエステルの形で,ウィンターグリーン油(冬緑油)やシラカバ皮油など植物精油中に存在する。無色の針状結晶で,融点159℃,沸点211℃(20mmHg)。減圧下で昇華する。急熱するとフェノールと二酸化炭素とに分解する。エチルアルコールエーテルなどに易溶,水,ベンゼンに可溶。塩化鉄(Ⅲ)で紫色を呈する。1861年にA.W.H.コルベが初めて合成に成功したもので,工業的には,ナトリウムフェノキシドを加熱融解し,加圧下に二酸化炭素を反応させるコルベ=シュミット反応により製造する。染料の中間体や,皮膚の角質溶解の目的で魚の目などに対する外用皮膚薬の主成分として医薬に用いられる。また,かつては酒類や酢などに添加される食品防腐剤として用いられたが,現在では食品衛生法で使用が禁止されている。誘導体には医薬品や香料とされるものが多い。たとえば,メチルエステルであるサリチル酸メチルmethyl salicylate(融点-8.3℃,沸点223.3℃)は,歯磨きやガム,アイスクリームなど食品用フレーバーとしてのほか,皮膚を刺激することにより逆に深部組織の炎症を和らげる目的で,消炎剤(サロメチールはこの商品名)として用いられる。また,無水酢酸を用いてアセチル化して得られるアセチルサリチル酸acetylsalicylic acid(白色の結晶,融点135℃)は,解熱鎮痛剤アスピリンはこのドイツのバイエル社の商品名)として著名である。


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サリチル酸」の意味・わかりやすい解説

サリチル酸
さりちるさん
salicylic acid

化学式はC6H4(OH)COOHで、o(オルト)-ヒドロキシ安息香酸の別名。


 加熱・加圧下でナトリウムフェノキシドと二酸化炭素を反応させて製造する。この反応をコルベ‐シュミットKolbe-Schmitt反応という。分子量138.1、融点159℃。無色の固体で昇華性をもつ。カルボン酸の一種で酸性(解離定数K1=1.55×10-3)を示し、フェノールのヒドロキシ基をもつので塩化鉄(Ⅲ)溶液により紫色を呈する。医薬品のほか香料や染料の合成原料として用いる。

[廣田 穰]

薬用

殺菌剤、角質軟化剤として用いる。解熱鎮痛消炎作用をもつが、内服や注射にはサリチル酸ナトリウムが用いられ、サリチル酸そのものは消化器障害が著しいため内服には用いられず、外用のみである。うおのめ、いぼとりに用いられるサリチル酸絆創膏(ばんそうこう)には50%含有され、白癬(はくせん)(水虫)や乾癬など皮膚糸状菌症には2~10%の軟膏や塗布液が用いられる。また脱毛症や腋臭(えきしゅう)症(わきが)、汗疹(かんしん)(あせも)などの治療剤にも配合されている。

[幸保文治]

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化学辞典 第2版 「サリチル酸」の解説

サリチル酸
サリチルサン
salicylic acid

o-hydroxybenzoic acid.C7H6O3(138.12).種々の植物中にこのまま,または誘導体の形で存在し,とくに冬緑油中にはメチルエステルとして含まれている.工業的には,フェノールと二酸化炭素からのコルベ-シュミット反応により合成される.無色の結晶.融点159 ℃,沸点約211 ℃(2.6 kPa).減圧下に昇華し,また水蒸気蒸留される.エタノール,エーテル,アセトンに易溶,水,ベンゼンに可溶.Ka 1.06×10-3(25 ℃).塩化鉄(Ⅲ)で紫色を呈する.清酒,果実酒,酢などの食品の防腐剤として用いられ,また染料,とくに媒染アゾ染料の中間物としても用途がある.また,サリチル酸の誘導体はアスピリンをはじめとして医薬品に供されるものが多い.LD50 1.3 g/kg(ウサギ,経口).[CAS 69-72-7]

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百科事典マイペディア 「サリチル酸」の意味・わかりやすい解説

サリチル酸【サリチルさん】

オルトヒドロキシ安息香酸の別名。無色の結晶。融点159℃,沸点211℃(20mmHg)。水に可溶,エチルアルコール,エーテルに易溶。塩化第二鉄塩水溶液で紫色を呈する。フェノールのナトリウム塩に二酸化炭素を加圧下で反応させてつくる。防腐剤,染料中間体,医薬原料などとして重要。たとえば,アセチル化すればアセチルサリチル酸(商品名アスピリン)。清酒,酢などの食品防腐剤として使用されていたが,現在は食品添加物としての使用は禁止。(図)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サリチル酸」の意味・わかりやすい解説

サリチル酸
サリチルさん
salicylic acid

C7H6O3 。天然にはエステルとして植物精油 (冬緑油や白樺皮油など) 中に存在し,フェノールと炭酸ガスから工業的につくられる。無色針状結晶。融点 159℃。水に溶けて酸性を示す。サリチル酸の誘導体にはアセチルサリチル酸 (アスピリン) や,サリチル酸メチルのように解熱剤,鎮痛剤になるものがある。また,魚の目などに用いるスピール膏に添加されている。

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栄養・生化学辞典 「サリチル酸」の解説

サリチル酸

 C7H6O3 (mw138.12).

 保存料として使われたことがある.

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