「思想の科学」(読み)しそうのかがく

共同通信ニュース用語解説 「「思想の科学」」の解説

「思想の科学」

鶴見俊輔つるみ・しゅんすけさんが政治学者の丸山真男まるやま・まさおさん、経済学者の都留重人つる・しげとさんら創刊した雑誌。世界の思潮を紹介し、その外国思想を日本社会の分析に生かすことを狙いに掲げ、読者と執筆者が活発に議論を交わすことも期待した。鶴見さんらが交代で執筆した連載「日本の地下水」は1981年まで続いた。「思想の科学」は96年に終刊。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「「思想の科学」」の意味・わかりやすい解説

思想の科学
しそうのかがく

思想の科学研究会の機関誌。1946年(昭和21)5月、鶴見俊輔(つるみしゅんすけ)、武谷三男(たけたにみつお)、都留重人(つるしげと)、丸山真男(まさお)、武田清子(1917―2018)、渡辺慧(さとし)(1910―1993)、鶴見和子(かずこ)(1918―2006)ら研究会のメンバーによって創刊され、1996年3月、通巻536号の50周年記念号を区切りとして休刊従来アカデミズムによっては扱われなかった民衆レベルの思考様式をも学問研究の対象とし、のちには南博(ひろし)(1914―2001)、市井三郎(いちいさぶろう)(1922―1989)、久野収(くのおさむ)、竹内好(よしみ)らも参加した。全体はほぼ4期に分かれる。創刊から1950年4月まで鶴見俊輔の設立した先駆社より発売の第1期、1954年5月から1955年4月まで講談社より発売の第2期、1959年1月より1961年12月まで中央公論社発売の第3期、中央公論社が『風流夢譚(むたん)』事件(1961年2月1日)後の諸般情勢を配慮して、同誌の天皇制特集号の発売を中止したことから起こった『思想の科学』事件を機に中央公論社を離れ、思想の科学社を設立、自力刊行して休刊に至る第4期である。研究会は『転向』『明治維新』『日本占領軍』などの共同研究を発表している。

[京谷秀夫 2018年5月21日]

『思想の科学研究会・索引の会編『思想の科学総索引 1946―1996』(1999・思想の科学社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「「思想の科学」」の意味・わかりやすい解説

思想の科学 (しそうのかがく)

1946年5月,武谷三男,武田清子,都留重人,鶴見和子,鶴見俊輔,丸山真男,南博,宮城音弥,渡辺慧らによって先駆社より刊行された思想雑誌。その趣旨は,思索と実践の分野に論理実験的方法を用いること,英米思想の紹介には批評的態度を維持し,日本社会の分析,批判に使用可能かどうかを考えることにあった。当初は季刊,後に月刊,再び季刊となった。哲学・思想史研究,言語論,コミュニケーション論とともに大衆の思想に着目し,大衆文学,流行歌,映画,芸能など広く大衆文化の研究にもすぐれた先駆的業績を示した。50年4月発行の最終号において〈思想の科学研究会〉の設立が宣言され,前記の人々が理事に,川島武宜が会長に就任し,学際的研究会が組織され,後に竹内好,久野収らも加わった。共同研究が積極的に行われ,昭和20年代に《アメリカ思想史》,30年代には《転向》があり,多くの研究者,評論家を育成,《思想の科学》はその機関誌として講談社(1954-55),中央公論社(1959-61)と発行所を変えて刊行された。61年2月中央公論社に風流夢譚事件が起こり,これに関連して《思想の科学》は62年1月号に〈天皇制〉を特集,中央公論社は周囲の事情を考慮して発売を中止し,破棄断裁を行った。いわゆる《思想の科学》事件である。このため研究会は中央公論社からの発行を断念し,思想の科学社を設立。62年4月,この特集号を復刊して世に問い,以後《思想の科学》は同社から刊行されている。
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デジタル大辞泉プラス 「「思想の科学」」の解説

思想の科学

日本の思想・哲学系雑誌のひとつ。1946年5月創刊。月刊。鶴見俊輔、丸山眞男ら7人の同人が先駆社を創立して刊行開始。以後、出版元を建民社、講談社、中央公論社と変更しながら出版を続ける。1961年12月、当時の出版元であった中央公論社が、天皇制を特集した62年1月号を編集担当の思想の科学研究会に無断で断裁、発売中止とする。以後、中央公論社を離れ、1962年3月設立の思想の科学社からの自主出版となる。1996年3月発売の5月号(通算536号)をもって休刊。

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世界大百科事典(旧版)内の「思想の科学」の言及

【風流夢譚事件】より

…当初,中央公論社は《風流夢譚》掲載について,実名小説の取扱いに配慮を欠いていたことを認め,世間を騒がせたことに遺憾の意を表し,殺傷事件発生後は,この種の暴力に対し,〈社業をとおして言論の自由を守る〉ことを社告によって誓ったが,その直後,この社告を否定し,全面的に謝罪する〈おわび〉を発表して右翼の攻撃を回避した。この事件の中央公論社に対する衝撃は大きく,61年12月,当時同社が発売を引き受けていた《思想の科学》天皇制特集号(1962年1月号)を自主的に発売中止,断裁した,いわゆる《思想の科学》事件を発生させた。またこの殺傷事件は,社会的には1960年10月12日の浅沼稲次郎社会党委員長刺殺事件とともに,60年安保闘争中からみられた右翼の台頭とそのテロリズムの復活を示すものとされた。…

※「「思想の科学」」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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