恩領ともいう。主従関係において主人が従者に新たに恩給として与えた地。もともと持っていた私領が自由に売買,譲渡できるのに対して,恩地は主人から処分について強い規制をうけるばかりか,主人の一方的意志によって没収されることもあった。そこには恩地とは仮に従者に与えたものであるという観念がひそんでいた。こうした恩地は平安時代末から武家社会を中心に広くみられるが,鎌倉幕府はこれについて詳しい規定を定めている。とくに恩地を奉公義務の負担能力(これを器量とか,器用とかいった)のない者に売ったり譲渡したりしてはならないと規定した部分は恩地の性格をよく示している。また有名な永仁の徳政令が御家人から凡下に売られた土地は無償で御家人にもどされると規定したのも,恩地の性格に起因していると言えよう。
→充行(あておこない)
執筆者:五味 文彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中世において主従関係を結んだ主君が、従者の戦功や仕官忠勤の奉公に対し、恩賞として給与した所領。恩領とも呼ばれ所領・所職の給与として、土地そのものよりも土地に関する職務的用益権として与えられた。恩地はとくに保護されたが反面規制も多く、鎌倉幕府法では私有地である私領は売却できるが恩地の売買は許されず、違反者は罰せられた(『御成敗式目』48条)。同追加法においても流質したり贈与などで由緒ない第三者に渡ることを警戒して細かく規制している。室町幕府も売却を禁じたが、年紀を限った売地と入質だけは許した。戦国時代にも私領と恩地は区別され、恩地はより大きな課役と売買制限が加えられていた。
[木内正広]
『石井進・石母田正他校注『日本思想大系21 中世政治社会思想 上』(新装版、1994・岩波書店)』
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