悪太郎(読み)アクタロウ

デジタル大辞泉 「悪太郎」の意味・読み・例文・類語

あく‐たろう〔‐タラウ〕【悪太郎】

いたずらな子供をののしっていう語。悪たれ小僧
「八字ひげ主人すら七八歳の―同様にしかり飛ばすくらいで」〈蘆花思出の記
荒々しい男、乱暴者を人名めかしていう語。
「私は―と申して、日来大酒をこのみ悪逆を致いて御ざるが」〈虎寛狂・悪太郎
[補説]狂言曲名別項。→悪太郎
[類語]悪童暴れん坊利かん坊いたずらっ子いたずら坊主悪たれ餓鬼大将苛めっ子腕白やんちゃ

あくたろう【悪太郎】[狂言]

狂言。無頼者の悪太郎が伯父に酒をふるまわせ、泥酔するが、その間に伯父に頭の毛をそられ、非行を悔いて仏道に入る。

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精選版 日本国語大辞典 「悪太郎」の意味・読み・例文・類語

あく‐たろう ‥タラウ【悪太郎】

[1] 〘名〙
① 荒々しい男。乱暴者。
※虎明本狂言・悪太郎(室町末‐近世初)「いにしへの名は悪太郎と申て、さけにようては、あくぎゃく仕たるが」
② いたずらをする男の子をののしっていう語。悪童。
※俳諧・瀬とり舟(1704)「折檻梯子引かるる悪太郎」
[2] 狂言。各流。乱暴者の悪太郎が、酔って寝ているうちに伯父(おじ)坊主にされ、出家覚悟をきめて、来あわせた僧と念仏をとなえる。類曲に「悪坊」がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「悪太郎」の意味・わかりやすい解説

悪太郎 (あくたろう)

(1)狂言の曲名。出家狂言。乱暴者の悪太郎が長刀を携えて伯父を訪問し,伯父に禁酒を勧められると,それではせめて今夜かぎりと酒をねだり,盃を重ねる。酔って帰る悪太郎のあとをつけた伯父は,路傍に寝こんだ姿を見て,刀・長刀・小袖を取りあげ僧形に変え,南無阿弥陀仏と命名すると言いわたして去る。目をさました悪太郎は,夢心地に聞いた伯父の言葉を仏の告げと思い,仏道修行の決意をする。そこへ出家が南無阿弥陀仏の名号を唱えて通りかかるので,悪太郎は自分の名を呼ばれたと思い返事をするが,出家に名号の由来を聞かされ,わが身の上を語り,弟子となって諸国修行に旅立つ。前半は荒々しいふるまいと酔態による豪快なおかしみ,後半はリズミカル踊念仏の掛合を経て謡留めで静かにしめくくられる。〈悪〉は,悪たれ,乱暴者の意。類曲に《悪坊》がある。
執筆者:(2)狂言《悪太郎》に取材した歌舞伎舞踊,長唄。1924年6月東京市村座初演。悪太郎=2世市川猿之助(猿翁),作詞岡村柿紅,作曲4世杵屋佐吉,振付2世花柳寿輔。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「悪太郎」の意味・わかりやすい解説

悪太郎
あくたろう

狂言の曲名。出家狂言。長刀(なぎなた)を携えて伯父を訪ね、大酒を飲んだ悪太郎(シテ)は帰途道端で寝込んでしまう。心配して跡をつけてきた伯父は、このようすをみて、長刀や小袖(こそで)などを取り上げて僧衣を枕元(まくらもと)に置き、今後は名を南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)とつけると言い渡して去る。目覚めた悪太郎が、夢心地に聞いたことばを仏のお告げと思い、出家の覚悟を決めたところへ、僧侶(そうりょ)が「南無阿弥陀仏」と名号を唱えながら通る。悪太郎はわが名をよばれたと思って返事をし、僧は盛んに名号を唱えてからかうが、やがて名号の尊い由来を話し、今後はともにただ一心に弥陀を頼もうと謡い終曲する。「悪太郎」とは荒々しい男やいたずらっ子をいう普通名詞でもあるが、本曲は固有名詞とし、乱暴者の心に潜む純真な求道心を描く。類曲に『悪坊(あくぼう)』がある。歌舞伎(かぶき)舞踊『悪太郎』は岡村柿紅(しこう)脚色で、1924年(大正13)2世市川猿之助が市村座で初演。

[小林 責]

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デジタル大辞泉プラス 「悪太郎」の解説

悪太郎

1963年公開の日本映画。監督:鈴木清順、原作:今東光による同名小説、脚色:笠原良三、撮影:峰重義。出演:山内賢、和泉雅子、田代みどり、久里千春、杉山元、野呂圭介、小島和夫ほか。

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