成尋(読み)ジョウジン

デジタル大辞泉 「成尋」の意味・読み・例文・類語

じょうじん〔ジヤウジン〕【成尋】

[1011~1081]平安後期の天台宗の僧。藤原貞叙ふじわらのさだのぶの子。62歳で入宋にっそうし各寺を巡礼。訳経場の監事となり、経典を日本へ送った。のち、宋で没。宋の神宗しんそうから善慧大師の号を受けた。→成尋阿闍梨母集

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精選版 日本国語大辞典 「成尋」の意味・読み・例文・類語

じょうじんジャウジン【成尋】

  1. 平安中期の天台宗の僧。延久四年(一〇七二入宋。神宗から善慧大師の号を受け、訳経場の監事となった。経典五二七巻を日本に送る。中国、開宝寺に没。著に「参天台五台山記」がある。寛弘八~永保元年(一〇一一‐八一

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「成尋」の意味・わかりやすい解説

成尋
じょうじん
(1011―1081)

平安末期の天台宗の僧。京都の人。父は藤原貞叙(ふじわらのさだのぶ)、母は源俊賢女(みなもとのとしかたのむすめ)で『成尋阿闍梨母集』の作者。母方の縁者文慶(もんけい)(966―1046)に就いて京都岩倉大雲寺に入る。顕密二教を学び、43歳で延暦寺(えんりゃくじ)総持院阿闍梨(あじゃり)となる。1072年(延久4)3月、62歳で入宋(にっそう)し、杭州(こうしゅう)・天台山(浙江(せっこう)省)、蘇州(そしゅう)・南京(ナンキン)(江蘇省)、東京(トンキン)(河南省)、五台山(山西省)を巡拝した。宋地で収集した仏典を、1073年6月、同行した頼縁(らいえん)らに託して日本へ送ったが、自らは宋の神宗(しんそう)(在位1067~1085)の強い慰留で帰国を断念し、同地で寂した。天台山国清寺(こくせいじ)に葬られ、神宗より善慧大師(ぜんねだいし)の号を賜った。成尋が入宋の途についてから頼縁らが帰国するまでを克明につづった『参天台五台山記(さんてんだいごだいさんき)』は、渡海した僧の行動、宋地の当時のようすを語る貴重な資料である。

[中尾良信 2017年8月21日]

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朝日日本歴史人物事典 「成尋」の解説

成尋

没年:元豊4.10.6(1081.11.9)
生年:寛弘8(1011)
平安中期の入宋僧。日宋文化交流に大きな役割を果たし,滞宋中の始終を記した『参天台五台山記』の著で有名。藤原貞叙の子。母は源俊賢の娘ともされ『成尋阿闍梨母集』で広く知られている。7歳にして京都岩倉大雲寺の文慶の室に入った。文慶は当寺最初の検校で三条天皇の護持僧三井寺長吏に任じられた名僧であったが,成尋は彼のあとを継ぎ長久2(1041)年,31歳で大雲寺の別当になり,以後,31年間在職した。この間,彼は胎蔵,金剛,蘇悉地の大法や護摩秘法などの密教の秘法を文慶,悟円,行円の各師に学び,一方,法華経の精義にも通じ宮中の法華八講に出仕し,延暦寺の阿闍梨に任じられ,藤原頼通の護持僧を20年間にわたって勤めるなど,その活躍は順風満帆を思わせた。しかし早くから入宋して五百羅漢常住の地天台山と文殊化現の山五台山を巡礼する志が強く,康平3(1060)年,三井の新羅明神(大津市園城寺の鎮守神)に渡海の祈請をし,延久2(1070)年,入宋の許可を請う奏状を朝廷に奉り,延久4(1072)年3月,肥前国松浦郡壁島(佐賀県東松浦郡呼子町加部島)より出帆した。この前後の事情については前記『母集』に詳しい。渡宋後は両山を巡礼し,皇帝神宗に謁見を許され,祈雨の秘法を行ずるなどの活躍をして善慧大師の号を賜ったが,ついに帰国することなく,彼の地に71歳の生涯を閉じている。<参考文献>平林文雄『参天台五台山記校本並に研究

(小原仁)

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改訂新版 世界大百科事典 「成尋」の意味・わかりやすい解説

成尋 (じょうじん)
生没年:1011-81(寛弘8-永保1)

平安中期の天台宗の僧侶。藤原貞叙の子(一説に参議藤原佐理の子)。母は《成尋阿闍梨(あじやり)母集》の作者として名高い。7歳のとき,岩倉大雲寺に入り受戒。1054年(天喜2)勅を受けて延暦寺総持院阿闍梨となり,72年(延久4)62歳のとき入宋し,天台,五台の両山を歴遊した。ついで汴京(べんけい)にて神宗に謁し,紫衣を許された。その後太平興国伝法院に住し,同地における訳経事業にも参加した。73年夏,祈雨の修法をなして,宋朝より善慧大師の号を受け,かつ同年には大小乗経律論527巻を便船に託して日本へ送った。翌年,方物を白河天皇に献じ,また宋の皇后より贈られた十六羅漢像等を大雲寺に寄せた。81年(永保1)病により,帰朝の志を抱きながら開宝寺で没したが,勅により国清寺に葬られ,日本善慧国師の銘刻を有する塔が建てられた。著書は《観心論註》《法華経註》《参天台五台山記》等。
執筆者:

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「成尋」の解説

成尋
じょうじん

1011~81.10.6

善慧(ぜんね)大師とも。平安中期の天台宗僧。父は陸奥守藤原実方(さねかた)の子貞叙。母は源俊賢(としかた)の女で歌集「成尋阿闍梨(あじゃり)母集」がある。はじめ岩倉大雲寺の文慶(もんきょう)に師事,ついで悟円(ごえん)・行円・明尊(みょうそん)から台密を受法。1041年(長久2)大雲寺別当。延暦寺阿闍梨となり,藤原頼通(よりみち)の護持僧を勤めた。72年(延久4)渡宋し,天台山・五台山を巡礼。神宗(しんそう)に謁し,祈雨法を修して善慧大師の号を賜った。また経典など六百数十巻を集めて日本に送ったが,みずからは神宗の慰留をうけて残留,汴京(べんけい)開宝寺に没した。著書「参天台五台山記」「観心論註」「法華経註」。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「成尋」の解説

成尋(1) じょうじん

1011-1081 平安時代中期の僧。
寛弘(かんこう)8年生まれ。天台宗。父は藤原実方(さねかた)の子,母は源俊賢の娘で歌集「成尋阿闍梨(あじゃりの)母集」で知られる。大雲寺の文慶に師事し,のち同寺別当となる。延久4年宋(そう)(中国)にわたり,天台山・五台山を巡歴。皇帝神宗から善慧(ぜんね)大師の号をあたえられた。永保元年10月6日宋で死去。71歳。著作に「参天台五台山記」など。

成尋(2) じょうじん

?-? 平安後期-鎌倉時代の武士,僧。
中条(なかじょう)家長の父。武蔵(むさし)七党のひとつ横山党の出身。治承(じしょう)4年(1180)石橋山の戦いで源頼朝にしたがい,御家人となる。幕府南門の建立,後白河法皇一周忌千僧供養などの奉行をつとめた。俗姓は小野。号は義勝房。

成尋 せいじん

成尋(じょうじん)(1)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成尋」の意味・わかりやすい解説

成尋
じょうじん

[生]寛弘7(1010)
[没]元豊4(1081)
平安時代の天台宗の僧。7歳のときに出家し,洛北岩倉の大雲寺の文慶に師事した。延久4 (1072) 年に宋に渡り,太平興国伝法院に住した。神宗の勅により降雨の法を行なったところ霊験があったので善慧大師の号を許された。便船に託して経典 527巻を日本に贈った。日本に帰ることができず,開宝寺で死去。著書に『法華経註』『観心論註』『参天台五台山記』などがある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「成尋」の解説

成尋
じょうじん

1011〜81
平安中期の天台宗の僧
三蹟の一人。藤原佐理 (さり) の子。1072年弟子頼縁 (らいえん) とともに入宋 (につそう) 。天台・五台山を巡歴し,得た経典を頼縁に託して帰国させた。宋の神宗に重用され,明州に没した。善慧 (ぜんえ) 大師。著書に『参天台五台山記』8巻。

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世界大百科事典(旧版)内の成尋の言及

【参天台五台山記】より

…天台宗の僧成尋(じようじん)の入宋日記。8巻。…

【巡礼】より

…この山は,5世紀の北魏のころから《華厳経》にみえる文殊菩薩の住地たる清涼山にあたると信ぜられ,唐代になると,仏教界第一の霊地として中国ばかりでなく東アジアの全仏教界にその名を知られた。日本の僧侶も,唐代には玄昉(げんぼう)や円仁,宋代には奝然(ちようねん)や成尋などが,いずれも五台山巡礼を行っている。なかでも,〈巡礼〉ということばを書名に含んでいる円仁の《入唐求法巡礼行記(につとうぐほうじゆんれいこうき)》は,五台山仏教全盛期における大華厳寺以下の諸院を巡礼した次第をていねいに記録している。…

※「成尋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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