五台山(読み)ゴダイサン

デジタル大辞泉 「五台山」の意味・読み・例文・類語

ごだい‐さん【五台山】

中国山西省北東部の山。標高3058メートル。台状の五峰からなる。峨眉がび天台山とともに中国仏教の三大霊場の一。文殊菩薩もんじゅぼさつの住む清涼山とされる。元代以降はチベット仏教の聖地。2009年、世界遺産(文化遺産)に登録された。ウータイシャン
大韓民国北東部、太白テベク山脈中の山。標高1563メートル。仏教の霊場で、月精寺げっしょうじがある。オデサン
多武峰とうのみねの別名。

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精選版 日本国語大辞典 「五台山」の意味・読み・例文・類語

ごだい‐さん【五台山】

  1. [ 一 ] 中国、山西省北東部の五台県にある霊山。五峰がそびえ立ち、頂上はいずれも平らで台状をしているのでこの名がある。大塔寺、清涼寺金閣寺、北山寺などが建てられており、仏教三大霊場の一つ。また、ラマ教の寺院もある。標高三〇四〇メートル。清涼山。紫府山。
    1. [初出の実例]「黄金の山とは五台山なり」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  2. [ 二 ] 高知県高知市東南部にある山。標高一三九メートル。中腹に行基の開山、空海の中興した竹林寺がある。また、その竹林寺の山号。
  3. [ 三 ] 奈良県桜井市にある多武峰(とうのみね)の別称。

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日本歴史地名大系 「五台山」の解説

五台山
ごだいさん

浦戸うらど湾の北東岸にあり、標高一三八・八メートル。大小五つの峰からなる。古くは大島とよばれ、浦戸湾内の島であった。のち浦戸湾の隆起と干拓によって現在のような平地にそびえる独立山となった。五台山の名は建長五年(一二五三)四月二二日の僧憲真田地譲状(蠧簡集)に「五台山住僧賢覚」とみえる。僧行基が全国行脚の途中この島を訪れ、中国の五台山に似ているとして名付けたと伝えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五台山」の意味・わかりやすい解説

五台山(中国)
ごだいさん / ウータイシャン

中国、山西(さんせい/シャンシー)省北東部にある3000メートル前後の五峰(五台)をもつ仏教の聖山。初め神仙道の徒によって開かれ、5世紀後半に北魏(ほくぎ)の孝文帝によって仏光寺、清涼寺などの寺院が開基されたと伝えられる。このころから五台山は文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の住む清涼山と信じられ、長く文殊信仰の中心となった。隋(ずい)・唐時代には法華(ほっけ)、禅、華厳(けごん)、天台、浄土、密教などの高僧が続々と入山し、唐代中期には五台山仏教のピークを迎えた。とりわけ、代宗の世に長安の不空三蔵は、朝廷の援助を背景に南台に金閣寺を建立(767)、五台山を鎮護国家密教の奥の院と位置づけた。こうして文殊菩薩の住地五台山の名は、中国だけでなく朝鮮、日本、中央アジア、チベット、インドにまで伝わり、各地から巡礼者が訪れた。日本からも唐代に玄昉(げんぼう)、霊仙(れいせん)、円仁(えんにん)、宋(そう)代には奝然(ちょうねん)、成尋(じょうじん)らが参詣(さんけい)した。五台山の繁栄は845年の会昌(かいしょう)の廃仏にあっていったん荒廃するが、その後各王朝の保護を受けて復興し、元朝のフビライのときからチベット仏教(ラマ教)が入った。さらに清(しん)朝では太祖ヌルハチが「曼殊(マンジュ)師利皇帝」とよばれるなど早くから文殊信仰との結び付きがあって、五台山は清王朝の手厚い保護を受け、チベット仏教の色彩がきわめて濃厚になった。19世紀後半に五台山を訪れたイギリス人宣教師ギルモアJames Gilmourは、モンゴル人の熱烈なチベット仏教信仰のありさまを伝えている。

[佐藤智水]

『小野勝年・日比野丈夫著『五臺山』(1942・座右宝刊行会)』


五台山(大韓民国)
ごだいさん / オデサン

韓国(大韓民国)、江原道(こうげんどう/カンウォンド)、太白(たいはく/テペク)山脈中にある山。標高1563メートル。南漢江(なんかんこう/ナムハンガン)の発源地であり、奇岩奇石が多く、山勢が秀麗で国立公園に指定された。この山にある月精寺は新羅(しらぎ)時代に慈蔵律師によって創建され、朝鮮仏教三十一本山の一つとして朝鮮仏教の修練道場であるとともに、多くの参拝客、観光客が絶えない。月精寺境内には国宝の八角九層石塔がある。高山植物と薬草が多い。

[森 聖雨]


五台山(高知市)
ごだいさん

高知市浦戸湾奥に位置する孤立丘陵。古くは浦戸湾内の島の一つで大島とよばれた。奈良時代に僧行基(ぎょうき)が中国の五台山に似た山を求めてこの地に竹林寺を開創した際に、五台山と名づけたという。山頂近くには竹林寺、県立牧野植物園、山麓(さんろく)には南北朝時代の僧夢窓疎石(むそうそせき)の開いた吸江寺(ぎゅうこうじ)などがあり、頂上からは高知市街地が一望できる。また、東麓ではイチゴの栽培も盛ん。

[正木久仁]


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改訂新版 世界大百科事典 「五台山」の意味・わかりやすい解説

五台山 (ごだいさん)
Wǔ tái shān

中国山西省にある山脈の主峰五山を指す。《華厳経》の受持にともない,5世紀ころから文殊菩薩の住む清涼山にあたると信ぜられ,普賢菩薩の峨嵋山,観音の補陀落山とともに中国三大仏教聖地の一つとなった。浄土教の曇鸞(どんらん)がここに遊び聖跡に感じて出家した話は有名であるが,大塔院寺等いわゆる台中百ヶ寺の基礎が置かれたのも,このころである。窺基は弟子を率いて福田を行い,澄観は華厳寺で華厳,法華を講義,《華厳経疏》をあらわし,また高麗の慈蔵,北インドの仏陀波利,日本の玄昉(げんぼう)など外国僧の入山も相次いだ。ことに不空三蔵が金閣寺,玉華寺の営構と密教の興隆に尽力してから五台山の名はアジア各地に知られるようになり,日本の霊仙や円仁をはじめ,宋代にも盛算,奝然(ちようねん),成尋(じようじん)など足跡を残した者が多い。元代にラマ教が入り,清代にも政策上からラマ教を重んじたため,仏教のほか,ラマ教の色彩も濃い。
仏光寺
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五台山 (ごだいさん)
Odae-san

朝鮮,江原道江陵,旌善,平昌の境の太白山脈の主脈にある満月山,長嶺山,麒麟山,亀王山,毘盧山の五山をさす。山中には月精寺が鎮座している。《三国遺事》によると,新羅末期,宝叱徒・孝明の兄弟が一千の徒を領してこの山に入り,結社を結び国家安泰,百穀豊穣を祈る宗儀を行い,のち孝明は新羅の王位についたという。これは五台山が元来その山中で修行して霊力を獲得するための聖山であったことを示している。主峰の毘盧山(1563m)は朝鮮民族の固有信仰〈光明の世界〉を意味する〈プル〉の仏教的表現である。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「五台山」の意味・わかりやすい解説

五台山(中国)【ごだいさん】

中国,山西省北東部にある仏教の名山。5世紀ごろから,文殊菩薩の住地清涼山に見立てられ霊地となった。日本から玄【ぼう】(げんぼう),霊仙,円仁らが訪れ,宋代には,【ちょう】然(ちょうねん),成尋(じょうじん)などが巡礼した。2009年に世界遺産に登録された。峨嵋山(四川省),普陀山(浙江省),九華山(安徽省)とともに中国仏教四大名山と称されている。
→関連項目華厳寺(中国)平型関

五台山(韓国)【ごだいさん】

韓国,江原道江陵市の西方約40kmにある五つの山をさす。主峰毘盧山は標高1563m。金剛山と並ぶ名山で,仏教の霊地。五峰とは満月,麒麟(きりん),長嶺,亀王,毘盧山をいう。峰上の平地に小庵を建て菩薩をまつる。麓に月精寺,山院寺,金剛寺がある。五台山国立公園に指定。
→関連項目江陵太白山脈

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世界遺産詳解 「五台山」の解説

ごだいさん【五台山】

2009年に登録された世界遺産(文化遺産)。中国山西省東北部に位置する。峨嵋山、九華山、普陀山と並ぶ中国四大仏教名山の一つで、5つの主要な峰があり、文殊菩薩の聖地である。ここには、53の寺院群があり、顕通寺、塔院寺、菩薩頂、黛螺頂などがある。これらは、1~20世紀初期までの間に建造されたものである。また、漢族とチベット族が並存してきた、仏教、ラマ教(チベット仏教)の聖地でもある。◇英名はMount Wutai

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旺文社日本史事典 三訂版 「五台山」の解説

五台山
ごだいさん

中国山西省北東部にある仏教の名山
5世紀ごろから,『華厳経』にみえる文殊菩薩 (もんじゆぼさつ) の住地であると信じられ,中国仏教の三大霊山の一つとして栄えた。日本からも玄昉 (げんぼう) ・円仁 (えんにん) ・奝然 (ちようねん) ・成尋 (じようじん) らが巡礼している。

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旺文社世界史事典 三訂版 「五台山」の解説

五台山
ごだいさん
Wǔtái Shān

中国,山西省北東部にある仏教の聖山
初め神仙道の人びとが開き,唐代に文殊信仰の霊地として著名となった。元代以来,チベット仏教がはいり,清朝は異民族懐柔の必要からチベット仏教の拠所ともした。なお朝鮮江原道 (こうげんどう) の五台山も聖山として有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五台山」の意味・わかりやすい解説

五台山
ごだいさん

「ウータイ(五台)山」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の五台山の言及

【観音】より

…宋代以後,禅宗を除いて,仏教は一般に衰退したのに,観音信仰だけはあらゆる階層に浸透流行し,一般民衆の生活と深い関連をもったのである。観音の霊場として最も崇信されたのは,浙江省舟山列島の普陀山で,文殊をまつる山西省の五台山,普賢をまつる四川省の峨嵋山とともに,天下の三大仏教道場とされた。とくに海上商人や漁師の信仰をうけたこの普陀山の開基は,日本の入唐僧の慧萼と伝えられている。…

【巡礼】より

…これに対して仏教の巡礼路は,釈迦の誕生(ルンビニー),成道(ブッダガヤー),説法(ワーラナシー),入滅(クシナガラ)を記念する四大聖地を結びつけたものであるが,そのコースがさきの《マハーバーラタ》に記されている巡礼路の一部と重なっているのは興味深い。中国では古くから天台山や五台山への巡拝が発達し,その伝統は日本にも影響して,とくに修行の場としての霊山を中心に受け継がれていったが,中世以降になると〈観音三十三所巡礼〉と〈四国八十八ヵ所遍路〉が庶民の間に盛んになった。広い地域に散在する寺院や霊場をゆるやかな円運動を描いて巡るところはインドの場合と同じであるが,カミやホトケに見守られつつ行脚する旅であるところに特色がみられる。…

※「五台山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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