戦火のかなた(読み)センカノカナタ(その他表記)Paisa

デジタル大辞泉 「戦火のかなた」の意味・読み・例文・類語

せんかのかなた〔センクワのかなた〕【戦火のかなた】

《〈イタリアPaisà》イタリアの映画。1946年作。監督ロッセリーニ。1943年の連合軍シチリア上陸に始まるイタリア開放の戦いを、ネオレアリズモ手法で描く。「無防備都市」「ドイツ零年」とあわせて、戦争3部作と呼ばれる作品群の第2作。第22回米国アカデミー賞脚色賞受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「戦火のかなた」の意味・わかりやすい解説

戦火のかなた (せんかのかなた)
Paisa

ネオレアリズモ〉の傑作として知られるイタリア映画。《無防備都市》(1945)に続くロベルト・ロッセリーニ監督の1946年の作品で,これに次ぐ《ドイツ零年》(1948)を加えてロッセリーニの〈戦争三部作〉とされる。日本に紹介された版は,アメリカ占領軍(GHQ)の検閲でカットされたためオリジナル版とは異なるものではあったが,《無防備都市》よりも前に公開されたため,これが初めて日本に紹介された〈ネオレアリズモ〉映画になった。1943年の連合軍上陸から,45年のナチス撤退にいたるイタリア解放の間に起きた六つエピソードを,シチリア,ナポリ,ローマ,フィレンツェ,ポー川流域のロケーションで〈オムニバス映画〉形式に構成され,抵抗のあげく捕らえられたパルチザンの若者たちが,ドイツの砲艦から足に重しをつけられてポー川の濁流に落とされる第6話を最後に,〈この事件は1944年のクリスマスに起こり,その4ヵ月後に戦争は終わった〉というナレーションで終わるが,ロッセリーニのレジスタンス映画作家としてのファシズムに対する憎しみが強烈な印象をあたえた。〈重要なことは映像ではなく思想である〉とロッセリーニは語っているが,祖国を戦場化された人々の怒りと悲しみをニュース映画や記録映画を思わせる非情で即物的なカメラの目でとらえ,〈ネオレアリズモ〉は技術や形式よりも思想と世界観の問題であることを示した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「戦火のかなた」の意味・わかりやすい解説

戦火のかなた
せんかのかなた
Paisà

イタリア映画。エクセルサ 1946年作品。監督ロベルト・ロッセリーニ,脚本ロッセリーニ,F.フェリーニ,S.アミディ,M.パリエーロ。第2次世界大戦後,世界中の人々に新鮮な驚きと感動を与えたイタリアのネオレアリズモ映画を代表する作品。 43年の連合軍のシチリア上陸から北進の経過に合せ,シチリア,ナポリ,ローマ,フィレンツェ,修道院,ポー川という6つの場所でのエピソードを描いた。連合軍とイタリア民衆との触れ合い,レジスタンスの悲劇的な戦いが非職業的俳優によって記録映画的に再現された。記録映画のスタイルによる民衆の叙事詩映画として,『戦艦ポチョムキン』と並ぶ映画史上の画期的作品である。

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百科事典マイペディア 「戦火のかなた」の意味・わかりやすい解説

戦火のかなた【せんかのかなた】

イタリア映画。1946年作。監督ロッセリーニ。1943年連合軍のシチリア上陸から本土北上の六つの挿話を記録的に描き,戦争のきびしさと抵抗の激しさを鋭く表現した。ネオレアリズモの代表作。

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世界大百科事典(旧版)内の戦火のかなたの言及

【オムニバス映画】より

…燕尾服を巡る六つの挿話からなるJ.デュビビエ監督の《運命の饗宴》(1942)は,〈オムニバス・エピソード映画〉と呼ばれた。〈エピソード・ストーリー映画〉と呼ばれたイタリア映画《戦火のかなた》(1942)は六つの挿話で構成され,形式よりも内容が高く評価された作品であるが,その成功に促されてイギリスでサマセット・モームの四つの短編小説をもとにした《四重奏》(1948)が製作され,それをモデルにしてアメリカでO.ヘンリーの五つの短編小説をもとにした《人生模様》(1953)が製作された。このほか,日本(《四つの恋の物語》1947,《にごりえ》1953)も含め各国で作られたが,もともとこの形式の映画は,スター中心のハリウッドよりもフランスやイタリアの作品の世評が高く,英語圏の市場ではテレビの30分ドラマの登場とともに1950年代半ばには魅力の薄れた形式となり,60年代になって《西部開拓史》(1962),《黄色いロールス・ロイス》(1964)などが製作されたにすぎない。…

※「戦火のかなた」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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