中国古代の宴席での遊戯。一つの壺に主客が交互に矢を投げ入れ,入った矢の数の多少で勝負を決する。その道具も投壺という。《礼記(らいき)》投壺篇には,その公式のやり方が記されている。それによると,投げ手から壺までの距離は矢2本半,矢の長さは室内,堂上,庭などの場所によって異なる。壺の中には小豆を入れて,矢が跳び出さないようにした。競技は1回に交互に4本の矢を投げ,それを3回繰り返し,負けた者は罰酒を飲む。《左氏伝》昭公12年には,晋侯が斉侯をもてなしたときに,投壺を行って,諸侯の頭となることを争った話が見える。《礼記》に見える投壺の遊戯は,いわば君子のみやびやかな遊戯であったわけだが,後代になると曲芸的要素が加わり,かなり変形しながら六朝時代以降,士大夫の間で広範に行われた。《投壺新格》(司馬光)というゲームの規約を網羅した書物があらわれたことにも,その隆盛ぶりがうかがわれる。そして明末にいたって投壺の曲芸ぶりは頂点に達し,以後実際の遊びとしては衰えた。ところで,日本でも古く奈良朝の貴族が遊んだと思われる投壺の道具が正倉院に残っている。しかしその後は投壺に関する記録は残っていない。理由は定かではないが,江戸時代,18世紀後半になって京都を中心に民間で流行したようである。いま《投壺指南》《投壺矢勢図解》などの書物が残っている。
執筆者:稲畑 耕一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…甕(かめ)【佐原 眞】 日本では土器,陶磁器が主であったが,金属・ガラス・木製の壺も伝えられている。正倉院宝物中には狩猟文をあらわした広口無頸の銀壺,細頸に円筒形の耳をもつ鋳銅鍍金の投壺(とうこ)がある。ガラスでは文禰麻呂(ふみのねまろ)の墓(奈良県宇陀郡榛原町)から緑色の瑠璃壺(骨壺)が出土しており,ほかに舎利容器にもガラス製小壺が用いられている。…
※「投壺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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