文芸時代(読み)ブンゲイジダイ

デジタル大辞泉 「文芸時代」の意味・読み・例文・類語

ぶんげいじだい【文芸時代】

文芸同人雑誌。大正13年(1924)10月創刊、昭和2年(1927)5月廃刊。川端康成横光利一片岡鉄兵新進作家によって創刊、その同人は新感覚派と呼ばれた。

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精選版 日本国語大辞典 「文芸時代」の意味・読み・例文・類語

ぶんげいじだい【文芸時代】

  1. 文芸雑誌。大正一三年(一九二四)一〇月創刊。昭和二年(一九二七)五月まで全三二冊。創刊時の同人は横光利一、川端康成、片岡鉄兵、今東光中河与一ら一四人。既成文壇・既成リアリズムに対抗する新世代の作家たちの集団「新感覚派」の機関誌的性格を持つものと目された。横光利一の「ナポレオン田虫」、川端康成の「伊豆踊子」等が掲載された。

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百科事典マイペディア 「文芸時代」の意味・わかりやすい解説

文芸時代【ぶんげいじだい】

文芸同人雑誌。1924年10月―1927年5月。金星堂発行。創刊時の同人は,川端康成横光利一片岡鉄兵,伊藤貴麿ら14名。のち岸田国士らも加わる。横光の短編《頭ならびに腹》が反響を呼ぶ。川端は《新進作家の新傾向解説》,横光は《感覚活動》で,千葉亀雄が彼らに対して与えた呼称である〈新感覚派〉の理論的立場を構築する志向を示し,この派の機関誌的な色彩をおびた。短命だったが,プロレタリア文学の《文芸戦線》とともに,昭和初期の芸術派文学の拠点として注目される。
→関連項目稲垣足穂十一谷義三郎中河与一

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文芸時代」の意味・わかりやすい解説

文芸時代
ぶんげいじだい

文芸同人雑誌。1924年(大正13)10月から27年(昭和2)5月まで全32冊。金星堂発行。川端康成(かわばたやすなり)、横光利一(よこみつりいち)、片岡鉄兵(てっぺい)、中河与一(よいち)、今東光(こんとうこう)、佐佐木茂索(もさく)、十一谷義三郎(じゅういちやぎさぶろう)ら、当時『文芸春秋』に集まっていた新進作家を中心にして「新しき生活と文芸」を探求すべく創刊された。創刊号の横光の短編『頭ならびに腹』が大胆な擬人法を駆使した文体で注目を集め、千葉亀雄が「新感覚派の誕生」として取り上げたのをきっかけに同誌は「新感覚派」の牙城(がじょう)として文壇に新風を巻き起こした。川端の『伊豆の踊子』(1926)や横光の『ナポレオンと田虫』(1926)など意欲作が発表されたほか、「特集映画号」(1926)といった企画も注目に値する。日本近代文学館刊の復刻版(1967)がある。

[金井景子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文芸時代」の意味・わかりやすい解説

文芸時代
ぶんげいじだい

文芸雑誌。 1924年 10月~27年5月。 32冊。川端康成,横光利一,片岡鉄兵,中河与一,今東光ら,菊池寛の『文藝春秋』系の新人作家の集った同人雑誌で,既成のリアリズムを否定する斬新な手法と感覚的な型破りの文体とによって,いわゆる新感覚派の拠点と目された。プロレタリア文学運動を主導した『文芸戦線』とともに,昭和文学史の開幕を告げる歴史的な記念碑である。川端の『伊豆の踊子』,横光の『頭ならびに腹』,中河の『刺繍せられたる野菜』などが主要掲載作。

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世界大百科事典(旧版)内の文芸時代の言及

【片岡鉄兵】より

…小学校の代用教員,新聞記者生活などのかたわら創作に励み,1921年文壇的処女作〈舌〉を《人間》に発表し,以後作家生活に入る。24年,横光利一,川端康成らと同人誌《文芸時代》を創刊,既成文壇打倒を目ざし,新感覚派の論客として花々しい活躍をはじめた。この時代の代表的小説集に《綱の上の少女》(1927)がある。…

【川端康成】より

…第6次《新思潮》に発表した《招魂祭一景》(1921)の新鮮な感覚を菊池寛らに認められて文壇に出た。横光利一らと新感覚派の機関誌《文芸時代》に拠り,新感覚派が昭和初期に腐食してしまったあとも新感覚派的手法を生かし続けた。《浅草紅団(くれないだん)》(1929‐30),《禽獣》をへて到達した極点に《雪国》(1935‐47)があり,近代抒情文学の代表作品となった。…

【新感覚派】より

…文学流派。1924年(大正13)10月に同人雑誌《文芸時代》(1927年5月終刊)が創刊され,そこに結集した横光利一,川端康成,中河与一,今東光,片岡鉄兵らがこの名で呼ばれ,表現技法の革新を行った。命名者は千葉亀雄で《世紀》24年11月号誌上の文芸時評で〈新感覚派の誕生〉をうたったことによりこの名が文壇に定着した。…

【横光利一】より

…この前後の作では〈悲しみの代価〉〈御身〉などが注目される。24年,川端康成,片岡鉄兵らと《文芸時代》を創刊。既成のリアリズムに対して新しい表現を目指し,新感覚派の文学運動を展開。…

※「文芸時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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