楽劇。3幕11景。坪内逍遥作。1904年11月早稲田大学出版部から公刊。06年2月文芸協会発会式に序曲のみ初演奏。07年11月東京本郷座の文芸協会第2回公演において久保田金僊,久保田米斎夫人により序幕を,14年2月帝国劇場で6世尾上菊五郎らにより中の巻〈竜宮〉を上演。同時に発表した《新楽劇論》の理念を実演作品として示したもので,新舞踊運動の先駆をなすもの。長唄,竹本,常磐津,清元,一中,雅楽,朗詠,謡曲,民謡,洋楽などの諸要素を用いた大がかりな構成。全曲通して上演されたことはない。序曲は長唄《新曲浦島》として独立して演奏される。作曲は13世杵屋六左衛門および5世杵屋勘五郎。
→新舞踊
執筆者:林 京平
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長唄(ながうた)の曲名。坪内逍遙(しょうよう)作詞、5世杵屋(きねや)勘五郎・13世杵屋六左衛門作曲。1906年(明治39)2月初演。長唄にはすでに1828年(文政11)初演の歌舞伎(かぶき)所作事の曲『浦島』があるので、この作品を「新曲」とよぶ。逍遙作詞の原曲は、序(澄の江の浦)、中(海底、海神殿)、詰(網野神社境内、澄の江の浦)と3部に分かれた長大なものであるが、この曲は序幕の序曲、澄の江の浦の情景描写である。調弦は、本調子―六下り―本調子―二上り―三下りと変化に富み、三味線も唄も聞かせどころが多く、聞く音楽を目ざそうとした、明治期の長唄界の意欲的な作品である。
[茂手木潔子]
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出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…振事劇の欠点を除き,長唄などを基調に特質を生かしつつ,在来の邦楽はもちろん,洋楽なども加えて新楽劇を作るべきであるとする。その実践作として《新曲浦島》を同時に公刊した。新舞踊劇運動の端をひらいた先駆的著述。…
…早稲田中学の校長として,倫理,道徳の教育に打ちこんだ一時期もある。1904年には《新曲浦島》を発表,新舞踊劇を提唱するが,翌々年,島村抱月を支援して文芸協会を興し,シェークスピア,イプセンなどを紹介して新劇運動の基礎を築いた。抱月と松井須磨子の恋愛問題で文芸協会が解散するにいたったいきさつは戯曲《役の行者》(1915)に投影されている。…
※「新曲浦島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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