広義には世界各地の中生代~新生代の造山運動を呼び,地中海~カフカス~ヒマラヤ~ミャンマーにわたるユーラシアのアルプス造山帯と,環太平洋地帯のアルプス造山帯の二つがある。東アジア(燕山変動)や北アメリカ西部(ネバダ変動,ララミー変動)では,中生代の変動と新生代の変動(島弧の形成)が別の地域におこり,両者は明瞭に区別されるので,〈中生代アルプス造山運動〉(燕山変動,ララミー変動など)と〈新生代アルプス造山運動〉(狭義のアルプス造山運動)を区別するようになってきた。
アルプス地域は,地理上からも地質構造からも西アルプス,東アルプス,南アルプスの三つに分けられる。これらの地域のアルプス造山運動は次の3期に分けられる。(1)白亜紀中期 東アルプスでは三畳紀から白亜紀初期まで石灰岩に富む遠岸性堆積があり,その後白亜紀中期に粗粒陸源堆積物が現れ,主な褶曲構造が形成された。西アルプスとの境界付近の深部で高圧変成作用がすすみ,エクロジャイト,ランセン石片岩が形成された(6000万~1億年前)。これを第1期アルプス変成と呼ぶ。(2)古第三紀中ごろ 西アルプスのペンニン帯Penninic zoneでは深海成のフリッシュ層の堆積が始新世中期までに終わり,主な褶曲と押しかぶせ構造の形成も漸新世初期以前に終わった。深部では低圧型の第2期アルプス変成がすすみ,緑色片岩相,角セン岩相の変成岩が形成された(3800万年前)のち,アルプス花コウ岩類が貫入した(2900万~3300万年前)。(3)新第三紀中新世ごろ 西アルプスのヘルベット帯Helvetic zoneの大きな押しかぶせ構造の形成がこの時期の変動の主体である(第3期アルプス変成)。漸新世末~中新世前半に褶曲・衝上断層が形成され,塑性変形によって基盤岩石は約50%側方短縮した。中新世後期には北に低角度で傾く重力滑動型の衝上断層がおこった。
日本でも日高造山運動(北海道)は新生代アルプス造山運動に相当する。また三波川(さんばがわ)変成帯と領家変成帯の形成を中生代アルプス造山運動に含める見解が有力となっている。
執筆者:佐藤 信次
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