1930年代に中国で蔣介石が開始した生活様式と社会倫理の改進運動。1934年2月の江西省南昌における蔣介石の〈新生活運動之要義〉という演説に始まり,江西省から急速に全国に拡大した。その内容は,中国人の社会生活に欠けている礼義・廉恥の復興を中心題目とし,日常の生活規律の遵守,清潔の保持など具体的な生活標語を含んでいた。この運動が提唱されたのは,工業化・近代化の相対的遅れにより,半植民地的な市場・経済体制を強いられ,諸個人や諸勢力が私的利害のみを追求して,人々の社会関係が,むき出しの力関係・階級関係として現れざるをえないという背景の事情があった。こうした状況に対して蔣介石は,勦共(そうきよう)作戦ならびに軍事的かつ強権的な国内統合と深く関係して新生活運動をすすめ,十分な経済変革政策なしに,半植民地的経済構造と軍閥支配体制を維持したままで社会の矛盾を弥縫(びほう)せんとしたのである。なお,日本でも1953年以降,経済同友会の呼びかけで,政・財界,公務員の綱紀粛正,虚礼廃止を訴える同名の運動が展開された。
執筆者:川井 悟
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中国で蒋介石(しょうかいせき/チヤンチエシー)によって1934年に提唱された国家総動員のための精神運動。世界的なファシズムの風潮と、国共内戦の第五次江西ソビエト包囲攻撃の最中のもので、きわめて政治的な色彩を帯びていた。古典的な礼、義、廉、恥を理念とし、生活を整斉、清潔、簡単、素朴、迅速、確実にすべしというもの。識字運動の面でいくつかの成果を収めたほかは、一時的な呼びかけに終わった。
[加藤祐三]
『大塚令三編著『支那の新生活運動』(1942・敏傍書房)』
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