施餓鬼(読み)セガキ

デジタル大辞泉 「施餓鬼」の意味・読み・例文・類語

せ‐がき【施餓鬼】

盂蘭盆うらぼんに寺などで、餓鬼道に落ちて飢餓に苦しむ無縁仏生類しょうるいのために催す読経供養。施餓鬼 秋》「蜩や山の―の日盛に/白秋
[類語]回向供養花供養

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精選版 日本国語大辞典 「施餓鬼」の意味・読み・例文・類語

せ‐がき【施餓鬼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「せがきえ(施餓鬼会)」の略 ) 仏語。餓鬼道におちて飢餓に苦しむ亡者(餓鬼)に飲食物を施す意で、無縁の亡者のために催す読経や供養。真宗以外で広く行なわれる。本来、時節を限らない。七月一日より一五日にわたって行なわれるものは盂蘭盆の施餓鬼。施餓鬼祭。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「仍て上人其れより施餓鬼(セガキ)法をぞ毎夕修し給ひける」(出典:栂尾明恵上人伝記(1232‐50頃)上)
    2. 「けふはふしみの御寺にてせかきあり」(出典:御湯殿上日記‐文明一四年(1482)一一月二七日)
  3. ( に供える散飯(さば)に鯖(さば)をかけていったものか ) 鯖のこと。
    1. [初出の実例]「せがきとは鯖の事」(出典:浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「施餓鬼」の意味・わかりやすい解説

施餓鬼 (せがき)

飢渇に苦しむ餓鬼のために,飲食を施す法会を施餓鬼会,略して施餓鬼という。施食(せじき)会とも冥陽(めいよう)会ともいう。中国では唐代に施餓鬼会に関する経典が訳出され,これらの経軌に基づいて法会が行われた。日本へは入唐僧によって経典と実修法がもたらされ,はじめは密教系の僧によって行われた。その後禅宗寺院でも実施され,鎌倉時代末期から諸宗間で行われた。現在でも真宗以外の各宗で広く修される。この法会は本来随時に修されたが,いつの時代からか,とくに盆に行うようになり,この施餓鬼の法会を指して盂蘭盆(うらぼん)会というようにさえなった。それほど盆施餓鬼は盂蘭盆中の代表的な行事となったのである。民間に盂蘭盆の行事が普及し,家の先祖とは別に,新亡の精霊(しようりよう)や餓鬼仏すなわち無縁の精霊たちにも飲食を施さなければ,家や村の者にとって安心できないという思いが高まってからであろう。

 盆はもともと家の祖霊よりも,まつってくれる子孫をもたない餓鬼仏をまつるのが中心であったとの考えがある。中国では,盆に来る霊はまさに餓鬼であった。家の祖霊は各戸でまつり,家とは特定の関係にない無縁の餓鬼すなわち三界万霊は,新亡の精霊とともに村の寺院で共同祭祀として施餓鬼会を実施したのが本来であったと思われる。現在のように,家の祖先をも盆の施餓鬼会で供養するのは後世の形で,おそらく中世末期以降のことであろう。盆施餓鬼は盆行事の一環としてあるため,いわば定期的に行われる法会であるが,そのほか,とくに戦争,天災地変などで不慮の死者が出たときに随時に修された。溺死者やお産で死んだ女性,また魚類の供養などは,舟中や川辺で施餓鬼会が行われた。これを川施餓鬼という。施餓鬼会の作法は経軌によるが,宗派による相違が多少みられる。
盂蘭盆会
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「施餓鬼」の意味・わかりやすい解説

施餓鬼
せがき

悪道に堕(お)ちて飢えに苦しむ餓鬼に飲食物を施すこと。施餓鬼会(え)の略。水陸会(すいりくえ)ともいう。餓鬼はサンスクリット語プレータpretaの訳で、「死者」または「死者霊」を原義とし、のちには子孫が絶えて供養(くよう)がなされず、つねに飢餓に苦しむ亡霊の意味がある。仏教では吝貪(りんどん)で布施せぬ者が死後、餓鬼に生まれ、飢渇に苦しむとされ、彼らの住む餓鬼世界(餓鬼道)は六道輪廻(りんね)の一となった。中国では、飢餓に悩む鬼神や餓鬼に飲食を施す餓鬼供養の法会が発展し、また、『盂蘭盆経(うらぼんぎょう)』の目連(もくれん)救母伝説と合して、悪道に堕ちて苦しむ先祖供養のための法会ともされた。とくに唐代には多くの経軌(きょうき)が編纂(へんさん)され、日本にも空海らにより将来された。施餓鬼会は最初真言(しんごん)宗で、鎌倉期以降は浄土真宗を除く各派で行われるようになり、今日に至っている。各派で儀式の内容はいくぶん異なるが、いずれも新亡精霊の冥福(めいふく)と無縁仏(むえんぶつ)への追善供養の意味が重なっている。盂蘭盆会に付随して行われることが多いが、本来は随時に行いうるものである。水死者やお産で亡くなった人のための川施餓鬼、水施餓鬼もある。

[奈良康明]

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百科事典マイペディア 「施餓鬼」の意味・わかりやすい解説

施餓鬼【せがき】

施食会(せじきえ)とも。仏教で行う法会の一つ。餓鬼道におち飢餓に苦しむ者を救うため,水や食物を施す修法。阿難が焔口餓鬼に告げられて行ったのが始まりと伝える。中国では清浄な地に水や食物を投げて悪鬼を払う(水陸会)。日本では盂蘭盆会(うらぼんえ)の精霊供養と同時に行う例が多いが,中世・近世には飢饉や戦乱,大火などの難民を集めて,幕府や大寺院がよく行った。
→関連項目餓鬼

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「施餓鬼」の意味・わかりやすい解説

施餓鬼
せがき

仏教の儀式の一つで,餓鬼に施すために行われる法会。浄土真宗を除いて,ほとんど各宗で行われている。盂蘭盆会に祖先の霊を供養するために行われる場合が多い。禅宗では特に施餓鬼を重視し,生飯 (さば) の儀式を毎食前に行なっている。

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葬儀辞典 「施餓鬼」の解説

施餓鬼

盂蘭盆にお寺などで、飢餓に苦しみ・災いをもたらす鬼や無縁の亡者に、読経・供物を施す法会。

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世界大百科事典(旧版)内の施餓鬼の言及

【盂蘭盆会】より

…のち朝廷の恒例仏事となり,諸大寺でも行われ,しだいに民間の各寺院へ普及した。平安時代になると,空海など渡唐僧によって施餓鬼(せがき)の法が伝えられ,鎌倉時代にはこれが諸宗派に取り入れられ,室町時代には施餓鬼会が盛んに行われた。本来,盂蘭盆会と施餓鬼会は別種の法会であるが,餓鬼無縁仏とが同じ意味で理解されるようになり,盆中または盆の前後に施餓鬼会が行われるようになった。…

※「施餓鬼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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