雅楽,管絃,舞楽の曲名。唐楽にふくまれ壱越(いちこつ)調。6人(あるいは4人)舞の文ノ舞(平舞)。唐楽の四箇(しか)の大曲(《皇麞(おうじよう)》《春鶯囀》《蘇合香(そごうこう)》《万秋楽》)の一つ。別名を《天長宝寿楽》《天長楽》《長寿楽》《宝寿楽》などという。番舞(つがいまい)は《退走禿(たいそうとく)》。古くは女性10人が舞ったとされるが,近代は男性が舞う。左方襲(常)装束の袍(ほう)の両肩をぬぎ,下に着ている半臂(はんぴ)を見せ,この曲用の別甲(べつかぶと)をかぶる。唐の太宗,あるいは高宗のとき,立太子礼の祭典中に鶯が飛んできて美しくさえずり,これを祝福した。王は喜び,さっそく楽人にこの曲を作らせたという。めでたい曲として日本でも立太子礼に奏されてきた。最近では1953年(昭和28)の立太子礼に演奏されている。演奏次第は,壱越調調子・音取(ねとり)-遊声(ゆうせい)(無拍節,舞人登場,出手(ずるて))-序(無拍節,当曲舞のうち一の舞)-颯踏(さつとう)(早八拍子,二の舞)-入破(じゆは)(早六拍子,三の舞)-鳥声(てつしよう)(無拍節,入手(いるて)の前半)-急声(きつしよう)(早六拍子,入手の後半)-調子・入調(にゆうぢよう)(退場)。非常に楽章数の多い曲で,全曲を通して演奏すると約2時間かかる。なお,遊声,颯踏,入破の楽章は吹流しという独特の終止方法(三管が最後の音を延ばしたまま終わる)が用いられる。管絃曲としては,颯踏と入破が奏され,渡物として双調にやはり颯踏と入破がある。
執筆者:加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
雅楽の曲名。「天長宝寿楽」「和風(かふう)長寿楽」ともいう。雅楽の唐楽曲で、『皇麞(おうじょう)』『万秋楽(まんじゅうらく)』『蘇合香(そこう)』とともに「四箇大曲(しかのたいきょく)」として重んじられている。4人あるいは6人の舞を伴う舞楽で、壱越調(いちこつちょう)。唐の太宗、または音曲に通じた高宗の作という。遊声(ゆうせい)、序、颯踏(さっとう)、入破(じゅは)、鳥声(てっしょう)、急声(きっしょう)の6章からなる大曲で、颯踏にはこの曲にのみ固有の「肩指手(かたさして)」という、両手を肩につける舞手がある。番舞(つがいまい)は『退走禿(たいそうとく)』。
奈良・興福寺の僧円憲得業は雅楽の名手であったが、春の朝、浄明院という僧房でこの曲を吹くと、ウグイスが寄ってきて笛と同じ音でさえずったといい、平安初期の雅楽家尾張浜主(おわりのはまぬし)が113歳の高齢で当曲を美しく舞ったとも伝える。『枕草子(まくらのそうし)』には「調べは風香調(ふうこうちょう)。黄鐘(おうしき)調。蘇合(そごう)の急。鶯(うぐいす)のさへづりという調べも」(201段)とある。
[橋本曜子]
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