是界（読み）ゼガイ

デジタル大辞泉

ぜがい【是界／善界／是我意】

謡曲。五番目物。竹田法印宗盛作。愛宕あたご山の天狗てんぐ太郎坊とともに比叡山に来た唐の天狗の首領是界坊が、僧の祈りで現れた諸神に追い払われる。

出典　小学館

改訂新版　世界大百科事典

是界 (ぜがい)

能の曲名。観世流は《善界》，金剛流は《是我意》と書く。五番目物。竹田法印定盛作。シテは是界坊。唐土の天狗是界坊は，今も盛んな日本の仏教を妨害しようと志し，山伏姿（前ジテ）で日本へやって来る。まず京都の愛宕（あたご）山の天狗太郎坊（ツレ）を訪れ，その勧めで最初の目標を比叡山に定める。天狗たちは，仏法の威力を思うと不安にもなるが，ともかく初志を貫こうと決意し（〈クセ〉），比叡山に向かって立ち去る。比叡山の僧（ワキ）が勅命によって車で宮中に向かう行く手に，正体をあらわした天狗（後ジテ）が姿を見せ，雲中から僧を威嚇する（〈ノリ地・立回リ〉）。しかし僧の法力には破れ，不動明王や天部諸尊をはじめ，仏法を守る日本の神々の吹き起こした神風に追われて退散する（〈舞働キ・ノリ地〉）。超人的な天狗も仏法の力には屈するというのが主題だが，前場ですでに敗北を予想して弱気になるところが変わっている。
執筆者：横道 万里雄

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

日本大百科全書(ニッポニカ)

是界
ぜがい

能の曲目。五番目物。五流現行曲。観世(かんぜ)流は「善界」と表記。竹田法印定盛(さだもり)作。典拠は『今昔物語』。唐の天狗(てんぐ)の首領である是界坊は、中国の宗教界を魔道に従え、日本の仏教界に挑戦するため、山伏の姿（前シテ）で飛来してくる。協力者の山城(やましろ)国愛宕(あたご)山の太郎坊（ツレ）と談合し、まず比叡(ひえい)山に標的を定める。天狗の姿（後シテ）で都に荒れ狂う是界坊を取り鎮めるため、天皇の命令で比叡山の僧正（ワキ）が召されるが、その牛車(ぎっしゃ)に是界坊が襲撃をかける。車をつかんで空に引き上げようとする凄絶(せいぜつ)な演技のあと、僧正の祈りで現れた仏教の守護神についに屈伏し、今より後はくるまじと是界坊は虚空に消える。天狗物のなかでもとくに豪快な能。重い演出になると、喜多(きた)流では曲名も『白是界(しろぜがい)』と変わる。

［増田正造］

[参照項目] | 能

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典

是界
ぜかい

歌舞伎・浄瑠璃の外題。

初演

寛文3.4(江戸・古へ都伝内座)

出典　日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」