池波正太郎(読み)イケナミショウタロウ

デジタル大辞泉 「池波正太郎」の意味・読み・例文・類語

いけなみ‐しょうたろう〔‐シヤウタラウ〕【池波正太郎】

[1923~1990]小説家劇作家。東京の生まれ。新国劇戯曲を執筆した後、長谷川伸師事。庶民的な作風と会話文テクニックを生かした時代物人気を集める。「錯乱」で直木賞受賞。他に「鬼平犯科帳」「剣客商売」「真田太平記」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「池波正太郎」の意味・わかりやすい解説

池波正太郎
いけなみしょうたろう
(1923―1990)

小説家、戯曲家。東京・浅草生まれ。下谷(したや)区(現、台東(たいとう)区北部)西町小学校卒業後、株屋に勤め、第二次世界大戦後、都庁に勤務するかたわら新国劇のために、『鈍牛』『檻(おり)の中』『渡辺崋山(かざん)』『剣豪画家』などの戯曲を執筆。のち、長谷川伸(しん)に師事。1960年(昭和35)『錯乱』で直木賞を受賞。1977年には、『鬼平(おにへい)犯科帳』(1967~1989)、『剣客商売』(1972~1989)、『仕掛人・藤枝梅安』(1972~1986)などの連作を中心とした作家活動に対して吉川英治文学賞が贈られた。『真田騒動――恩田木工(おんだもく)』(1956)、『錯乱』(1960)、『真田(さなだ)太平記』(1974~1983)など、真田一族への関心を示す作品もあるが、浅草に生まれ育った庶民感覚と戯曲で鍛えた会話の妙味を生かした世話物の短編集『おせん』(1978)に真骨頂がある。1988年、菊池寛賞を受賞。没後、『完本 池波正太郎大成』(全30巻・別巻1)が刊行された。

磯貝勝太郎

『『池波正太郎作品集』全10巻(1976・朝日新聞社)』『『池波正太郎短編小説全集』全10巻・別巻1(1978・立風書房)』『『真田太平記』1~16(1974~1983・朝日新聞社)』『『池波正太郎短篇コレクション』1~16(1991~1992・立風書房)』『『剣客商売全集』全8巻・別巻1(1992・新潮社)』『『完本 池波正太郎大成』全30巻・別巻1(1998~2001・講談社)』『『真田騒動――恩田木工』(新潮文庫)』『『おせん』(新潮文庫)』『『錯乱』(春陽文庫)』『『鬼平犯科帳』1~24・新装版(文春文庫)』『『仕掛人・藤枝梅安』1~7・新装版(講談社文庫)』『常盤新平著『池波正太郎を読む』(1994・潮出版社)』『『別冊歴史読本 池波正太郎読本』(1997・新人物往来社)』『清原康正編・解説『人間図書館 池波正太郎』(1998・日本図書センター)』『太陽編集部編『池波正太郎の世界』(1998・平凡社)』『熊切圭介・写真『写真集 池波正太郎のリズム』(2000・展望社)』『里中哲彦著『鬼平犯科帳の真髄』(文春文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「池波正太郎」の意味・わかりやすい解説

池波正太郎
いけなみしょうたろう

[生]1923.1.25. 東京
[没]1990.5.3. 東京
小説家,劇作家。7代続きの江戸っ子として生まれ,幼い頃から芝居好きの母親に連れられて芝居見物に通った。小学校卒業後すぐに株式仲買店に奉公。第2次世界大戦中は召集されて横須賀海兵団に入り,戦後は東京都の職員となる。そのかたわら劇作を始め,1946年『雪晴れ』で読売新聞の演劇文化賞に入選。その後,長谷川伸に師事して『名寄岩』 (1955) など新国劇の脚本を書くとともに,『恩田木工』 (1956) をはじめとする小説も発表,1960年には『錯乱』で直木賞を受賞。以後,『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人藤枝梅安』の人気シリーズを相次いで発表,社会の清濁をあわせのむ独自の時代劇ヒーローを生み出した。さらに『真田太平記』 (1974~83) など武家社会を舞台にしたものばかりでなく,市井の表と裏でつつましく生きる人々にもあたたかい目を注ぎ,劇作で鍛えた絶妙なせりふ回しで人生を語らせた。時代小説のほかにも,食通,映画通としても名をはせ,食べ物や映画,旅行,音楽などのエッセーにも健筆をふるった。そのうえ絵もくろうとはだしで,みずから挿絵も描いた。一連の作家活動により吉川英治文学賞 (1977) ,紫綬褒章 (1986) ,菊池寛賞 (1988) を受けた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「池波正太郎」の解説

池波正太郎 いけなみ-しょうたろう

1923-1990 昭和後期-平成時代の小説家,劇作家。
大正12年1月25日生まれ。長谷川伸に師事。新国劇の座付作者をつとめ,小説も手がける。昭和35年「錯乱」で直木賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人藤枝梅安」などの人気シリーズを生み出し,52年吉川英治文学賞。食に関する随筆や映画評論でも知られた。平成2年5月3日死去。67歳。東京出身。

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