(読み)さらし

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

晒(邦楽・舞踊)
さらし

邦楽・舞踊の曲名または一形態。川水で布をさらす姿を描いたもの。
(1)地歌(じうた)の曲名。深草検校(けんぎょう)が元禄(げんろく)(1688~1704)ごろ作曲。京都・宇治川で里人が布をさらす情景を、川近くの名所を詠み込みながら描き、手事(てごと)の技巧を聞かせるもの。のち箏曲(そうきょく)に移され、生田(いくた)、山田の両流で演奏、さらに今井慶松(けいしょう)が技巧的な曲に編曲した。なお、手事の一部は「さらしの手」として、長唄(ながうた)『越後獅子(えちごじし)』をはじめ、各種舞踊曲に使われている。
(2)舞踊の一形態。前記の手事の影響を受けた合方(あいかた)を使って、布をさらす情景や、布で波を暗示する振(ふり)を演じるもの。元禄期から行われたようだが、現存曲では長唄『晒三番(さらしさんば)』(1755)が最古のもので、ほかに長唄『越後獅子』『近江(おうみ)のお兼(かね)(晒女(さらしめ))』、『二人(ににん)晒』『多摩川』、常磐津(ときわず)『五色(ごしき)晒』などが知られる。
(3)歌舞伎囃子(かぶきばやし)および下座(げざ)音楽の名称の一つ。前記の舞踊の布晒しの場面に打ちはやす囃子で、太鼓、大太鼓、能管の合奏による。下座音楽では、これを応用して『車引(くるまびき)』『暫(しばらく)』『妹背山御殿(いもせやまごてん)』『金閣寺』など、荒事(あらごと)や様式的な時代物の立回り、幕切れに使う。
(4)民俗芸能。布晒しのさまを演ずるもので、新潟県黒姫村の綾子舞(あやこまい)の狂言や、沖縄の八重山(やえやま)舞踊などにあり、また各地の民謡や盆踊り唄などにも扱われている。[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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