普及版 字通 「晒」の読み・字形・画数・意味


23画

(異体字)晒
人名用漢字 10画

[字音] サイ・シ
[字訓] さらす

[説文解字]

[字形] 形声
声符は麗(れい)。麗に灑(さい)・(し)・(し)の声がある。〔説文〕七上に「暴(さら)すなり」とあり、暴は獣屍がさらされて、白い骨組みを残している形。強烈な陽光にさらされることをという。書の虫干し書という。字はまた晒に作る。灑を洒に作るのと同じである。

[訓義]
1. さらす、日にあてる、日にかわかす。
2. てる、てりつける。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 左羅須(さらす)、、保須(ほす) 〔名義抄 サラス・ホス・カハク・タナビク

[熟語]

[下接語]
・盛・晴・日・白・曝

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改訂新版 世界大百科事典 「晒」の意味・わかりやすい解説

晒 (さらし)

邦楽の曲名。狭義には,地歌・箏曲の特定の曲,および鳴物(なりもの)の曲名。広義には原曲である地歌三味線曲の布ざらしを描写した器楽的な旋律を取り入れた邦楽曲,または布ざらしの振りを伴う舞踊曲のすべての俗称または総称。(1)地歌・箏曲 貞享(1684-88)以前に北沢勾当が,宇治川の布ざらしを歌った小編の小歌をつないで,間奏を入れた長歌を原曲とし,これを《古(こ)さらし》という。これに対して,深草検校が,その間奏部の器楽性を発展させたものを《新さらし》といったが,のちには,単に《さらし》といえば,この深草の手事物あるいはそれを箏曲化したものをいうようになった。これに対して,三味線の変奏度を増したものも,さまざまに作られ,京都では《早ざらし》といい,江戸の山田流でも三味線秘曲の《新ざらし》が伝えられ,さらにこれにやはり変奏度の強い箏の手を付けることも行われた。現在では,三味線,箏とも即興的な変奏を加えたものが,中能島欣一などによって集成的に編曲されている。《さらし》の旋律を取り入れた地歌,箏曲には,《玉川》《春日詣(かすがもうで)》《六玉川(むたまがわ)》(原曲富本)などがあり,ほかに,現代曲としては,中能島欣一《さらし幻想曲》,宮城道雄《さらし風手事》をはじめ,さまざまな類曲がある。(2)その他の邦楽曲,舞踊曲 《さらし》を取り入れたものには,長唄《晒三番(さんば)》《越後獅子》《晒女》(初演常磐津掛合),《二人晒(みようとざらし)》《多摩川》,常磐津《三人生酔》《五色晒》,富本および清元《六玉川》などがあり,これらの曲の描写的な間奏部および布ざらしの伴奏部を《さらしの合方》という。(3)鳴物では,荒事(あらごと)に用いられる太鼓,大太鼓,能管による囃子をいう。幕切れ近くの立回りや幕切れに用いられることが多いが,ほかに上記の舞踊曲の《さらしの合方》につく《大小入りさらし》や,それから転じた《三弦入りさらし》もある。
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晒 (さらし)

江戸時代の刑罰。受刑者を路傍に引き据え,みせしめ(見懲(みごらし))として衆目に晒し恥辱の制裁を与えたもの。幕府の法では柱に縛してむしろに座せしめる通常の晒と,土中に埋めた箱に着座させ首だけを地上に出す穴晒(あなさらし)とがあった。前者は穴晒に対して陸晒(おかさらし)と呼び,女犯(によぼん)の所化(しよけ)僧,心中(相対死(あいたいじに))未遂の男女両人に科したことでよく知られる。女犯の僧は寺法による処分に,心中の男女は非人手下(てか)の刑に先だって晒されるのであるが,他の罪種にも(はりつけ)などの刑に付加して用いられた。期間は3日で,毎夕七つ時(午後4時ごろ)になれば牢屋へ帰す。一方,穴晒は主殺しにのみ適用された鋸挽(のこぎりびき)刑の一部であり,2日晒したのち磔に処した。鋸と竹鋸が左右に置かれ,本来往来の者に首を挽かせた形式をとどめている。陸晒,穴晒とも江戸では日本橋南詰東側,高札場の向いに設けられた晒場で執行した。同様の刑は諸藩法にも定められ,さらには村法上の制裁や私刑としても存在した。
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晒 (さらし)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「晒」の意味・わかりやすい解説

晒(邦楽・舞踊)
さらし

邦楽・舞踊の曲名または一形態。川水で布をさらす姿を描いたもの。

(1)地歌(じうた)の曲名。深草検校(けんぎょう)が元禄(げんろく)(1688~1704)ごろ作曲。京都・宇治川で里人が布をさらす情景を、川近くの名所を詠み込みながら描き、手事(てごと)の技巧を聞かせるもの。のち箏曲(そうきょく)に移され、生田(いくた)、山田の両流で演奏、さらに今井慶松(けいしょう)が技巧的な曲に編曲した。なお、手事の一部は「さらしの手」として、長唄(ながうた)『越後獅子(えちごじし)』をはじめ、各種舞踊曲に使われている。

(2)舞踊の一形態。前記の手事の影響を受けた合方(あいかた)を使って、布をさらす情景や、布で波を暗示する振(ふり)を演じるもの。元禄期から行われたようだが、現存曲では長唄『晒三番(さらしさんば)』(1755)が最古のもので、ほかに長唄『越後獅子』『近江(おうみ)のお兼(かね)(晒女(さらしめ))』、『二人(ににん)晒』『多摩川』、常磐津(ときわず)『五色(ごしき)晒』などが知られる。

(3)歌舞伎囃子(かぶきばやし)および下座(げざ)音楽の名称の一つ。前記の舞踊の布晒しの場面に打ちはやす囃子で、太鼓、大太鼓、能管の合奏による。下座音楽では、これを応用して『車引(くるまびき)』『暫(しばらく)』『妹背山御殿(いもせやまごてん)』『金閣寺』など、荒事(あらごと)や様式的な時代物の立回り、幕切れに使う。

(4)民俗芸能。布晒しのさまを演ずるもので、新潟県黒姫村の綾子舞(あやこまい)の狂言や、沖縄の八重山(やえやま)舞踊などにあり、また各地の民謡や盆踊り唄などにも扱われている。

[松井俊諭]


晒(漂白)
さらし

織物に付着している不純物を取り去り、天然のままでは純白ではないので、漂白剤を使って純白にすること、あるいは漂白した綿織物、麻織物などをさす。従来からあった方法は和晒、天日(てんじつ)晒などといい、織物を灰汁(あく)と石灰でたき、石臼(いしうす)で搗(つ)いてよく浸透させたのち、河原などに広げて日光で漂白した。『和漢三才図会(ずえ)』には、晒布の産地として、和州奈良、羽州最上(もがみ)、山州木津、江州(ごうしゅう)高宮、能州阿部屋(あべや)と宇出津、賀州高岡と石動(いするぎ)、越前(えちぜん)府中、防州、芸州、豊州(ほうしゅう)をあげており、越後(えちご)の小千谷縮(おぢやちぢみ)は雪中に広げて晒すため、雪晒としてよく知られた。これらの方法は明治以後になると衰退し、石灰、ソーダ、カルキ、硫酸を使用するカルキ晒となった。近代的漂白法としては、第二次世界大戦前までは、カ性ソーダ、ソーダ灰による精練をし、カルキ晒をしていたが、戦後には、連続式漂白法が取り入れられ、漂白剤に過酸化水素、次亜塩素酸などを用いる漂白法に変わった。

[角山幸洋]


晒(刑罰)
さらし

江戸時代の刑罰の一種。幕府の制では、原則として、江戸日本橋の南詰の広場において、衆人の環視に晒すことで、御定書(おさだめがき)ではその期間を3日間と定めている。これに穴晒(あなさらし)と陸晒(おかさらし)とがある。穴晒は鋸挽(のこぎりびき)の刑の際に、囚人の身体を箱に入れ穴に埋めて、首だけ晒すこと。陸晒は地上に蓆(むしろ)を敷いて囚人をその上に座らせるのである。陸晒の刑には、付加刑として晒す場合と、本刑として晒す場合とがある。付加刑としての晒で注目すべき点は、幕府法上相対死(あいたいじに)とよばれた心中で、男女とも死に損なったとき、三日晒のうえ、非人手下(ひにんてか)(非人頭(がしら)に渡して非人にすること)にしたことである。本刑としての晒は女犯(にょぼん)の所化(しょけ)僧にだけ科せられる。所化僧は晒のうえ、本寺、触頭(ふれがしら)へ渡して、寺法によって処分させる。所化僧は寺持ちの僧に対することばである(寺持ちの僧の女犯の刑は遠島)。

[石井良助]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「晒」の意味・わかりやすい解説


さらし

箏・三味線音楽の曲名。布を川水にさらして漂白する布ざらしの情景描写を主題とした楽曲をいうが,同名のものに数曲あって,現在では次のように区別される。 (1) 地歌『さらし』 貞享2 (1685) 年刊『大ぬさ』収録。『江戸浅利検校佐山検校京浅妻勾当当風引出し手新曲』の一つ。 (2) 地歌『古さらし』 元禄 16 (1703) 年刊『松の葉』収録。北沢勾当作詞作曲。長歌物。 (3) 地歌『新さらし』 深草検校作曲。手事物。 (2) の改曲か。現行では,単に『さらし』ともいう。「おくり地」などを合奏させる。 (4) 箏曲『早ざらし』 (3) に替手式の旋律を合奏させたもの。京都で行われる。 (5) 山田流箏曲『さらし』 小名木検校作曲。 (3) を片雲井調子の箏の曲に移曲したもの。「地」も合される。 (6) 山田流箏曲『新ざらし』 (5) に三味線を合奏させ,箏,三味線ともにその即興的な洒落弾きの発展したもの。三味線は1世中能島松声,箏は3世山勢検校の編曲を今井慶松が再編曲,以上を集大成して中能島欣一が編曲したものが現行。 (7) 舞踊曲で,器楽的部分に「さらしの合方」がある楽曲の総称。さらしの合方は (3) の合の手の部分を移したもの。「布ざらし」の振り (舞踊の型) に用いる。長唄『越後獅子』などにある。歌舞伎陰囃子の合方としても応用される。

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百科事典マイペディア 「晒」の意味・わかりやすい解説

晒(刑罰)【さらし】

江戸時代に行われた刑罰の一種。付加刑であって,心中未遂の男女双方,女犯の所化僧(しょけそう),逆罪の犯人などに科せられた。犯人を大道にすわらせて手を後ろの柱に縛り付けたり,穴晒(首に枷(かせ)をはめ,首だけ出して箱に入れ,土中に埋める)にしたりした。犯人にはずかしめを与えるとともに,みせしめともした。西洋・東洋を通じて類似の刑罰があった。

晒(衣料)【さらし】

晒木綿のこと。あらく平織にした小幅(約32cm)の木綿を漂白したもの。古くから愛知県知多半島の知多晒が有名で,天日と晒粉で漂白する。丈夫で通気性,吸湿性に富むので,手ぬぐい,腹巻,ゆかた,産着,肌着類などにする。
→関連項目奈良晒

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「晒」の解説


さらし

江戸時代に行われた見懲(みご)らしのための刑罰の一種。江戸日本橋などの場所で衆人に晒し,傍に罪状を記した捨札(すてふだ)を立てた。付加刑としての性格が強く,晒の後に磔(はりつけ)(主殺・親殺などの場合)や非人手下(てか)(心中の場合)の刑に処せられた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【晒木綿】より

…小幅の生木綿地を漂白したもの。単にさらしとも呼ぶ。愛知県知多半島亀崎地方産出の知多木綿を,独特のさらし方を行って漂白した知多ざらしが有名。ほかに近江ざらし,野洲(やす)ざらしなども少量の生産がある。普通,やや太番手の綿糸を使い,あらく織った平織物で仕上幅32cm,長さ9.2~9.5mを1反とする。さらし上がりは柔らかく吸水性に富み,手拭(てぬぐい)地,和装肌着,産着,腹巻など広く使われる。麻織物のさらしでは苧麻の皮を陰干しにした青苧(あおそ)を原料とし,天日で漂白した奈良ざらし,野洲ざらしが起源も古く,奈良ざらしは現在なお少量ながら生産されている。…

※「晒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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