曲輪(読み)くるわ

改訂新版 世界大百科事典 「曲輪」の意味・わかりやすい解説

曲輪 (くるわ)

城を構成する区画で,陣地や屋敷地のために作り出された平場のこと。歴史的名辞や固有名詞としては曲輪の字を用いるが,最近の城郭研究では郭(くるわ)/(かく)の字を用いることが多い。山城では背後を削り取り,その土を前面に盛って造成する。単なる屋敷地や畑の段と異なって防御された平場とするために,壁面を急傾斜の切岸状にするほか,縁辺に土塁を盛り上げたり,外周や尾根続きに空堀を掘って外部から遮断する。近世城郭では天守を備えた中心の郭を本丸,その外側に隣接して城主の館邸の設けられた郭を二の丸,さらに外側の家臣屋敷などの並ぶ郭を三の丸と呼ぶのが普通で,その他の諸郭に西の丸などの方角,あるいは人名を冠した呼称が用いられる。中世城郭では本丸に相当する主郭を本城・実城(みじよう)・根城(ねじろ)・一の城などと呼び,副次的な郭を外城・二の城,あるいは誰某屋敷などと呼んだ。また主郭に対する位置から腰郭・袖郭・出郭,形態から帯郭・千畳敷,機能から捨郭・隠郭・水の手郭・武者溜(だまり)・横矢などの呼称がある。

 郭が基本的に一つからなる城の形を単郭,複数であれば複郭というが,複郭の場合の郭配置については連郭・梯郭・囲郭・渦郭などの用語がある。これらは主として近世城郭において確立した形態と用語であり,中世の山城はこうした用語では表現しにくい場合が多い。しかし中には,内外の関係が明瞭で最高所の主郭から一方向に諸郭が重なる場合を,梯郭式と呼ぶことがある。地形の制約を克服して帯郭や腰郭を巧みに配置し,全体を主郭の周囲囲い付けにした城郭は囲郭式となる。まれには諸郭が縦横に並んで街のような景観を呈するものがあり,これを列郭式と呼ぶことがある。近世城郭は山城を含めてほとんどが囲郭式の特徴を備えており,これに連郭式・梯郭式・渦郭式などの特徴が加わる。郭の外縁は中世の山城では地形に応じて湾曲するが,石垣・石塁を用いる近世城郭では直線と直角の屈折からなり,横矢(側射)の備えを随所に設けることが可能になった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「曲輪」の意味・わかりやすい解説

曲輪
くるわ

一定の地域を限って、その周囲と区別するために設けた囲い、つまり城や砦(とりで)の周りに築いた土塁や石垣などをいう。また囲まれたその一区画の地域をいう場合もある。歴史的な名称や固有名詞のときは曲輪の字を用いるが、最近の城郭研究では郭の字を用いることが多い。

[編集部]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「曲輪」の解説

曲輪
くるわ

郭とも。堀切や切岸(きりぎし)などの防御施設に守られた城館の削平地。建物が建ち,生活や政治,防戦が行われた空間。九州以東の中世・近世城郭は曲輪を主体として発達し,防御の争点となる城壁と曲輪は一体のものであった。朝鮮半島の山城や,この影響を強くうけた沖縄のグスクは,城壁上のみが防御の要地となり,大きく異なる。中世城郭では実城(みじょう)とか人名を冠してよばれ,近世城郭では主要な曲輪が本丸・二の丸・三の丸などとよばれた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曲輪」の意味・わかりやすい解説

曲輪
くるわ

城や砦の周囲にめぐらして築いた土石の囲い。江戸時代になって「郭」の字もあてるようになった。構造の形態や位置などによって,二ノ曲輪,三ノ曲輪,内曲輪,外曲輪,横曲輪,引張曲輪,帯曲輪などの名称がある。また,「廓 (郭) 」と書いて,遊里,遊郭をもさすようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の曲輪の言及

【城】より

…8世紀の陸奥の多賀城,それをとりまく桃生(ものう)城,伊治城,玉造柵などや,出羽の秋田城は丘陵に立地する平山城であり,9世紀の胆沢(いさわ)城,志波城は北に川をみる台地上での平城,徳丹(とくたん)城,城輪柵遺跡はまったくの平城で,払田(ほつた)柵遺跡では中央政庁を小丘に築き平地にをめぐらしている(図)。国府都城【坪井 清足】
【中世】
 戦国時代の城を例に城の基本的な構造を述べると,将兵の宿営する建物や倉庫を建てる場所,あるいは戦闘の足場や陣地を確保するために削平された平場が曲輪(くるわ)(郭)で,これを防御する施設としてや土塁のような普請(土木)物,柵,塀,(矢倉),木戸のような作事(建築)物が付属する。山城(やまじろ)では,自然の斜面やこれを補強した切岸が防御施設の代りになるので,堀(空堀,壕)や土塁の伴わない場合があるが,平城では地続きを遮断するための堀(水堀,濠)は不可欠の要素である。…

【遊郭(遊廓)】より

…公娼制をとらない場合や公娼制度下の私娼の場合にも1ヵ所に集まっていることがあり,それらを遊郭と称することがなかったとはいえないが,政治権力によらない集住地区は厳密には遊郭ではない。遊郭のことを郭(くるわ)(曲輪とも書く)と呼ぶのは,四辺を塀などで囲んでいたことによる。また遊里とも称したが,この方は私娼街を含めて遊興街一般の意味にも用いた。…

※「曲輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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