( 1 )七〇一年の大宝令の制定とともに正式に設置された。当初は、儒教と算術の教授が行なわれたが、天平期には律令と紀伝を教授する学科も開設され、いわゆる「四道」(明経・紀伝・明法・算)が確立する。
( 2 )一〇世紀半ばには、大学寮出身者は、紀伝・明経などの専門家となる以外、公卿にまで出世する官人はまれになる。これは、藤原氏による摂関体制の確立と、教官の世襲や試験制度の形骸化などから起きた大学寮の衰退による。
令(りょう)制官司の一つ。式部省(しきぶしょう)の被管(ひかん)。中央における官吏養成機関。起源は天智(てんじ)朝にさかのぼるが、制度・機構の整備は大宝(たいほう)令制定のとき。事務官は頭(かみ)、助(すけ)、允(じょう)、属(さかん)の四等(しとう)官とそれ以下の下級官吏(使部(しぶ))。教官は本科(明経道(みょうぎょうどう))に博士(はかせ)、助博士(養老(ようろう)令で助教)各1人、書道、算道に博士各2人、それぞれ学生(がくしょう)(400人)、書生(若干名)、算生(30人)を教育した。音(おん)博士は前述の諸生に漢音を教授したが、専門の音生(おんせい)はいなかった。奈良中期に本科から明法道(みょうぼうどう)、文章道(もんじょうどう)(紀伝道)の二道が分離独立し、平安以降、明経道、算道とあわせて四道(しどう)とよばれた。学生は5位以上の子孫、東西史部(やまとかわちのふひとべ)の子、ときに8位以上の子から採用したが、いずれも13~16歳で聡令(そうれい)な者に限られた。9年以内に卒業し国家試験に合格すると、コースと成績に応じて位階が授けられ、官途につくことができたが、その位階は概して蔭位(おんい)より低かったから、貴族の子弟で大学に学ぶ者はまれであった。しかし、6位以下の官人の子弟で大学に学び官僚、文人、学者として名をなした者は多い。
[黛 弘道]
日本古代の令制官司の一つ。天智朝にその起源があり,大宝令によって確立した。大学とは律令制の最高の学校であり,また官人の養成機関であった。式部省の管轄下にあり,その事務官人は頭,助,大允,少允,大属,少属各1人,本科の明経の教官は博士1人,助博士(助教)2人で,学生400人,教養課程の教官は音博士,書博士,算博士は各2人,算生30人,その他雑用係の使部20人,直丁2人がいた。頭の職掌は学生を教育し,釈奠(せきてん)すなわち孔子をまつることである。大学生は五位以上の子孫および東西史部(やまとかわちのふひとべ)の子,位子(八位以上の官人の子)の志願する者で,13~16歳の者が入学した。教科書は儒学の経書で,旬試・年終試をへて9年以内に最終試験の寮試に及第し卒業の後に,式部省の秀才,明経,進士,明法の試験に合格した者が官人に任命される。平安期には紀伝道(文章道(もんじようどう)),明経道(みようぎようどう),明法道(みようぼうどう),算道(さんどう),書道,音道に分かれ大学の全盛期をむかえた。文章道の文章院は後に菅原,大江両氏の教育機関となり,また有力氏族は大学別曹として和気氏は弘文院,藤原氏は勧学院,橘氏は学館院,源氏は奨学院をおき,子弟の教育に努力した。
→考試 →国学
執筆者:山田 英雄
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律令制による中央官吏養成のための高等教育機関。式部省の管轄で,明経・進士・明法の3本科と算道・書道の2付随学科があった。教官の博士・助教のほかに,頭・助・允・属の4等官事務職員がいた。明経科学生400人,算生30人,書生若干名を教育した。大学寮への入学は5位以上の貴人の子弟,漢字を伝えたとされる渡来帰化人からなる史部の子孫,6位以下8位以上の官人の子孫で請願し許可された者で,いずれも13歳以上16歳以下の「聡令」なものが入学を認められた。就業年限は一定しないが,在学9年を越えてはならないこと,歳試(年終試)に3度落第しないこと,無断欠席を年100日以上しないことなどが定められ,違反者は退学となった。授業料は無償,のちに成績優秀者には給費も行われた。所定の学業を了え応挙試(卒業試験)に及第すると,式部省が施行する国家試験を受けて在官することができた。しかし実際には,一部の中下級官吏を養成するにとどまったとされる。
著者: 谷本宗生
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[沿革]
博士をはじめとする学位制度の起源は中世ヨーロッパの大学にある。しかし,たとえば日本の博士学位の起源は,少なくともその名称からいえば,唐の制度にならった古代大学寮の博士(はかせ)制度にある。つまり学位制度は,ヨーロッパ系と,中国系とに二分される。…
…大学寮の公認寄宿施設。平安時代前期,有力貴族は子弟の教育を奨励するために,次々に大学寮に学ぶ学生の寄宿施設を設けたが,やがてそれが大学別曹となった。…
※「大学寮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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