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月氏 げっしYue-zhi; Yüeh-chih

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

月氏
げっし
Yue-zhi; Yüeh-chih

中央アジアで活躍した古代民族。人種的帰属は不明で,チベット人,トルコ人などさまざまの説がある。中国の春秋時代 (前8~5世紀) 頃からモンゴル高原の西半を支配していたらしく,中国の史料には「禺氏 (ぐうし) 」「和氏 (かし) 」などという名で記されている。秦末,漢初の頃から次第に勢力を増してきた匈奴冒頓単于 (ぼくとつぜんう) に破られ (前 176頃) ,主力は西方に移動し (大月氏と呼ばれる) ,一部は南山から黄河上流域にとどまって (小月氏) ,大月氏はバクトリアおよびアフガニスタンの地 (バクトリア王国跡) に国家をつくった。バクトリア侵入の確実な年代は不明であるが,前 139~129年の間と考えられる。1世紀後半,その支配下にあった貴霜翕侯 (クシャンキュウコウ) クジューラ・カドフィセースに滅ぼされた。

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デジタル大辞泉の解説

げっし【月氏】

中国の戦国時代から代にかけて、中央アジアで活躍した遊牧民族。民族系統は不詳。前3世紀ごろモンゴル高原の西半から西域甘粛西部にまで勢力をのばしたが、前2世紀ごろ匈奴(きょうど)に追われ、主力はイリ地方へ、さらに烏孫に圧迫されてアム川北方へ移動し、大夏を征服して大月氏国を建てた。黄河上流域に残ったものは小月氏という。→大月氏

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百科事典マイペディアの解説

月氏【げっし】

中国の秦〜漢代に中央アジアで活躍したイラン系遊牧民族。戦国時代にモンゴル高原の西半を支配する大勢力であったが,前176年ころ匈奴(きょうど)の冒頓単于(ぼくとつぜんう)に追われ,その主力,大月氏は天山山脈の北方に移動,黄河の西に残存したものは小月氏といわれた。
→関連項目康居

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世界大百科事典 第2版の解説

げっし【月氏 Yuè zhī】

中国古代の春秋戦国時代ころから現在の甘粛省地域に勢力を拡張していたイラン系遊牧民族。シルクロード交流の先駆的役割を担っていた。ところがモンゴル高原において匈奴が勢力を拡大し,月氏と西域貿易の利を争うようになり,匈奴の冒頓単于(ぼくとつぜんう)は月氏に壊滅的打撃を与えた(前176ころ)。月氏の主勢力は西方に逃れ,パミール高原を越えてアム・ダリヤ流域に移動し,アフガニスタン北部のバクトリア王国(大夏)を征服した。

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大辞林 第三版の解説

げっし【月氏】

秦・漢代に中央アジアで活躍した民族。トルコ系・イラン系・チベット系などの諸説がある。初めモンゴル高原西半を支配していたが、紀元前二世紀頃匈奴に圧迫され、その主力(大月氏)はイリ地方からさらにアフガニスタン北部に移動、バクトリアをも支配した。甘粛地方に残存したものを小月氏という。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

月氏
げっし

古代中央アジアに活躍した民族名。中国の春秋時代の末から戦国時代の末にかけてモンゴル高原の西半を支配し、東方の東胡(とうこ)民族と内モンゴル方面で境を接していた。秦(しん)末、月氏の人質となっていた匈奴(きょうど)の冒頓単于(ぼくとつぜんう)は月氏から逃れて帰り、匈奴民族を率いて月氏を討ち、これを西方に圧迫し、さらに漢の文帝の4年(前176)ごろ月氏を大征伐してその支配下にあった楼蘭(ろうらん)、烏孫(うそん)、呼掲(こけい)など、タリム盆地、天山山脈以北およびその周辺の諸国・諸民族を征服した。月氏の主力(大月氏)が天山山脈の北方イリ方面に移動したのは、おそらくこのときのことであろう。このとき、月氏の一部は甘粛(かんしゅく)、青海両省の中間山脈地帯から黄河の上流域に残存して小月氏とよばれ、羌(きょう)民族と混住同化した。その後月氏の主力(大月氏)はふたたび匈奴に攻撃され、今日のアフガニスタンの北部に移動してバクトリア王国を倒したと考えられる。ストラボンにバクトリア王国を滅ぼした民族として伝えられているアシイ(AsiiまたはAsiani)、パシアニPasiani、トカリTochari、サカラウリSakarauliまたはSacaraucaeのうち、アシイあるいはトカリが月氏であろうともいわれているが、明らかでない。紀元前129年ごろ、張騫(ちょうけん)はバクトリアに赴いて月氏に接触しているので、月氏のバクトリア移動はそれ以前のことである。その後唐代に至るまで、いにしえのバクトリアの地域およびそこを根拠とした民族は中国人から月氏とよばれた。紀元前後、月氏はクシャン(貴霜)民族にかわられた。[榎 一雄]

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