発行価額または売出価額の総額が5億円以上の有価証券の募集または売出しに関しては有価証券届出書による届出がなされなければならず,同届出書は公衆の縦覧に供されるが,目論見書は投資者に対し当該有価証券の発行者の事業内容等を直接開示する文書である(証券取引法2条10項)。有価証券の募集または売出しに関して,発行者は目論見書作成義務を負い(13条1項),また当該有価証券を取得させまたは売り付けるには目論見書が交付されなければならない(15条2項)。投資者は,目論見書によって当該有価証券の投資価値を合理的に判断できることになる。目論見書の交付義務は,当該有価証券を取得させまたは売り付けるときに発生するが,有価証券届出書の提出後その届出の効力発生までの間に行われる投資勧誘には目論見書の交付義務がない。しかし,投資勧誘でも目論見書の記載内容と異なる表示が禁止されるので(13条5項),実際上は仮目論見書が使用される。仮目論見書は,正規の目論見書と実質的に同内容を記載するものと,要約目論見書として記載事項を省略ないし要約したものがある。要約目論見書を使用した場合は,当該有価証券を取得させるときまでに補充的な訂正目論見書を交付しなければならない。なお,株主割当てによる増資も証券取引法上の募集となり,増資額が5億円以上の場合は有価証券届出書の提出および目論見書の交付が必要とされている。
目論見書の記載事項は,大蔵省令で定められるが,有価証券届出書に第1部として記載されるものが中心となる。ただし,参照方式(5条3項)や発行登録(23条の3)の場合の目論見書においては企業内容の開示(ディスクロージャー)は大幅に簡略化されている(13条2項)。目論見書の不交付,目論見書に記載すべき内容と異なる記載または表示に対しては罰則規定があり,厳しい民事責任が課せられる。商法上も,目論見書の虚偽記載等には,民事責任(商法266条の3-2項)が課され,罰則規定(490条)がある。
執筆者:森田 章
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