有馬温泉(読み)アリマオンセン

デジタル大辞泉 「有馬温泉」の意味・読み・例文・類語

ありま‐おんせん〔‐ヲンセン〕【有馬温泉】

神戸市北区の有馬にある温泉。畿内最古の温泉で、日本書紀にも記載がある。泉質は二酸化炭素泉塩化物泉含鉄泉放射能泉など。

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日本歴史地名大系 「有馬温泉」の解説

有馬温泉
ありまおんせん

[現在地名]北区有馬町

六甲ろつこう山地北側中腹、有馬川上流の渓谷に位置する古代からの温泉。近世には湯治用に使われたもと湯のほかに、間欠泉のうわなり湯、眼病に効いたという目洗めあらい湯が付近に湧出していた(「摂津名所図会」など)。現在は含鉄強食塩泉・単純炭酸泉・含炭酸食塩放射能泉などが湧出し、なかでも含鉄強食塩泉は湧出後鉄分が酸化して湯が赤くなるため赤湯とよばれ、有馬温泉を代表する湯として親しまれてきた。炭酸泉は明治八年(一八七五)内務省衛生局所属のオランダ人技師ドワルスの検査によって有効な炭酸水と評価され、以後飲用として瓶詰して売出されたこともあり、一時は浴用にも利用された。放射能泉は一九世紀末のラジウムの発見以後注目を浴び、その浴場が大正九年(一九二〇)現有馬駅の向い付近に開設された。この施設はのちに廃されたが、湯は現在でも利用されている。

〔古代〕

有馬温泉は京畿に近いため古くから知られており、「日本書紀」に最も早く登場する温泉である。同書によると舒明天皇は三年九月と一〇年一〇月に、孝徳天皇は大化三年(六四七)一〇月「有間温湯」「有間温湯宮」に行幸した。孝徳天皇の子有間皇子の名は、同天皇の即位前、有間湯治中に生れたことによるという説がある。「釈日本紀」に引く「摂津国風土記」逸文では有馬郡に「塩湯」があり、孝徳天皇が行幸して行宮を造営、塩湯の発見は蘇我馬子の時代と伝えている。孝徳天皇の行宮は善福ぜんぷく寺前面の山麓にあったといわれ、中世には「御所墻内」とよんでいた(「臥雲日件録」享徳元年四月二四日条)。「万葉集」巻三には天平七年(七三五)大伴家の石川命婦(坂上郎女の母)が病気療養のため有間温泉に行っていたことがみえ、温泉の薬効はかなり早くから注目されていた。温泉には湯の神を祀る湯泉とうぜん神社が鎮座し、明治一六年東方上手の現社地へ移るまで、神社は薬師如来を本尊とする温泉寺と同境内にあった。湯泉神社の女躰によたい権現は薬師如来の垂迹で、行基の願いにより温泉守護神として有馬に鎮座することになったと伝えている。

平安時代の有馬は近場の湯治場として貴顕の人気を集めるようになる。万寿元年(一〇二四)には藤原道長(「小右記」同年一〇月二五日条)、長久三年(一〇四二)には藤原頼通(「百錬抄」同年閏九月二三日条)が下向している。しかし山間渓谷に位置するため被災することもあり、温泉はその都度復興された。永長二年(一〇九七)八月五日、近畿地方を台風が襲い京都をはじめ近郊に大被害をもたらした(中右記)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有馬温泉」の意味・わかりやすい解説

有馬温泉
ありまおんせん

兵庫県神戸市北区にある温泉。泉質は単純温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、放射能泉。古くからの温泉地として知られ、『日本書紀』には舒明(じょめい)天皇来訪の記載がある。僧行基(ぎょうき)はここに温泉寺を開いたという。また僧仁西(にんさい)が温泉を復興し、12の僧坊を建立。今日でも温泉に「中の坊」「御所の坊」などの名が付されている。豊臣(とよとみ)秀吉はたびたび湯治に訪れており、荒れていた温泉復興に力を尽くした。大阪、神戸に近く、閑静な保養地として知られ旅館街の近代化が進んでいる。温泉神社では正月に行基と仁西の木像に湯を注ぐ入初式があり秀吉をしのぶ茶会も催される。

[藤岡ひろ子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有馬温泉」の意味・わかりやすい解説

有馬温泉
ありまおんせん

兵庫県神戸市北区にある温泉。六甲山地北斜面,標高約 363mに位置。古くから知られ,『日本書紀』によれば飛鳥時代に舒明天皇の行幸以来,幾度かの法皇入湯の歴史がある。建久2 (1191) 年,仁西上人が和歌山県の熊野権現の神託により温泉を修築,行基の寺を再興し,12の宿坊を開いて以来,有馬の旅館名には「坊」のつくものが多い。豊臣秀吉もたびたび入湯したといわれる。単純炭酸泉,放射能泉で泉温は 97℃。貧血症に特効がある。名所旧跡も多く,滝と桜,紅葉の名所でもある。

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事典・日本の観光資源 「有馬温泉」の解説

有馬温泉

(兵庫県神戸市北区)
日本三古湯」指定の観光名所。

有馬温泉

(兵庫県神戸市北区)
日本三名泉」指定の観光名所。

有馬温泉

(兵庫県神戸市北区)
日本三薬湯」指定の観光名所。

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