林羅山著。近世初期における神社研究書。3巻。成立年代不詳であるが,この抄本である《神社考詳節》が1645年(正保2)に開板されていることと,羅山の年譜より彼が1638年(寛永15)ころに多数の神書をみていることが知られることから,およそその間の撰とみられる。上巻は伊勢神宮以下のいわゆる二十二社について記し,中巻は諸社のうち有名神社について《日本書紀》神代巻,人皇紀にみられる順序に記したあと,さらに山岳中心の神社,京付近の年中行事に関連する神社について記す。下巻は神社に限らず霊異方術のことを記している。序の末尾に〈こひねがはくば,世人の我神を崇びて,彼の仏を排せんことを。然れば国家上古の淳直に復し,民俗内外の清浄を致さん〉と記していることからも知られるように,本地垂迹説をもととした神仏習合思想を排斥し,神儒一致の思想で神社の本姿を知らせようとした啓蒙書。各神社について,《日本書紀》《先代旧事本紀》《延喜式》その他多くの神道書にあたって考証し,ことにその祭神考証に中心をおき,またそれらを通じて日本本来の姿をみようとしているところに特色がある。以後の神道者や国学者の神社研究に大きな影響を与えた。《日本思想闘諍史料》,《大日本風教叢書》,改造文庫に所収。
執筆者:鎌田 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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